西原氏は100円ターゲットながらオーバーシュートして95円もあると予想。江守氏は過去の下げ局面の下げ幅を当てはめて75円と予想
年始に120円だった米ドル/円は5月に入って105円台半ばまで急落! だが、円高一服と考えるのは時期尚早。円高時代のサバイバル投資術を探った

◆1ドル=75円予想で外国株・金・輸入系企業が爆騰気配!

「ポートフォリオの円高シフトを始めています」

 そう話すのは資産2億円の専業投資家www9945氏。日経平均2万円、1ドル=125円が遥か彼方へと遠ざかりつつある今、投資戦略の抜本的見直しが必要になってきているという。

「この数年で投資を始めた人は頭を切り替えたほうがいい。円安・株高で儲けた記憶にとらわれず円高・株安時代に備えた投資方法を身につけておかないと、苦しい時期が続きそうです」

 シティバンクなどで為替ディーラーとして活躍した西原宏一氏もこのように警告する。

「5月に発表された’16年3月期の企業決算は円高の影響でふるいませんでした。しかも、今期(’17年3月期)の想定レートを110円に設定している企業が過半数。さらに円高が進めば業績は下ブレするのは必至。日本株には厳しい展開が続くでしょう」

 焦点となる米ドル/円の値動き、西原氏はどう予測するのか?

「米ドル/円は大部分、米国側の事情で決まります。アベノミクス以降、米国は円安ドル高を許容してきました。ところが安倍内閣は金融政策ばかりに頼り、肝心の成長戦略は一向に具体化しない。しびれを切らした米国は、自国の産業防衛も兼ねて、円安容認からドル高修正路線へと舵を切ってきたのです」

 転換点となったのが上海で今年2月に開催されたG20だ。

「ドル高の修正、つまりドル安誘導への『上海合意』が主要国間で交わされたと言われています。米ドル/円の昨年高値は125円。そこから20%のドル高修正となれば100円ちょうどがターゲット。市場は往々にしてオーバーシュートするため、95円程度までの円高は十分にありえます」(西原氏)

 しかし、米国は昨年12月に利上げを敢行。年内にも再度の利上げが予想されている。米利上げはドル高要因となるのでは?

「今回のを除く過去3回の米利上げ局面を振り返ると、利上げが噂されている頃に米ドルは買われ、実際の利上げ後は天井をつけて下げに転じています」と分析するのは昨年秋頃からいち早く“円高転換”を予想していたエモリキャピタルマネジメントの江守哲氏だ。

「ドル円は私が見る限り、過去6回大きな調整局面がありました。最初は’75年12月の306円から’78年10月の177円までの下げ、直近ではリーマンショック前の’07年6月の124円から’11年10月の75円までの下げです。その6回の大きな下げ局面の平均変動率は40%以上。さらに平均調整期間は43か月になります。これを今回の円高相場に当てはめると『2019年1ドル=75円』のターゲットが見えてくる」

◆レバレッジETFブルで日本株急落を狙え!

 75円!? となれば円高への備えは急務だ。どんな手段が有効か?

「素直に考えるなら米ドル/円の売りと、日経平均の売り。FXでは25倍のレバレッジをかけられるし、日経平均でも先物だけでなくレバレッジ型のETFや投信などを使えばレバをかけた短期トレードができます。信用売りに抵抗があるならば、レバレッジETFベアという商品も。これは日経平均が100円下げたら200円値上がり(レバ3倍なら300円)する商品です」(西原氏)

 円高投資の基本はFXでの円買い。ただ、米ドル/円以外の通貨ペアも選択肢に加えたい。

「せっかくなら米ドル/円だけでなく豪ドル/円にも目を向けたい。豪ドルは5月、サプライズ的に利下げして下落しましたが、連続利下げの見通しが高まっており下落トレンド入りが濃厚。1豪ドル=70円が視野に入ってきました。中国発のリスクオフ局面で急落しやすい点も魅力です」(同)

 リスクオフ懸念が高まっていた2月と4月、対豪ドルで一日に約4円も円高が進む場面があった。短期間で大きな利益をあげやすいのも円高の特徴だ。

「そういう意味ではVIX指数も面白いですよね」と話すのは、www9945氏。米株の値動きをもとにしたVIX指数は「恐怖指数」とも呼ばれ、円高急伸時など市場の混乱が深まると上昇する。

「VIX指数に連動するETFがあるんです。ただこの指数は乱高下しやすいだけに、売買のタイミングを計るのが難しい。私? 手がけたこともありますが、儲けた記憶はありません(笑)。VIX指数は急激な円高で急騰しますが、すぐに元の値に収束する傾向があるので、その点には注意が必要です」(www9945氏)

 ならば、急騰時にショートするのもアリか。では、円高時代の投資戦略は?

「円安では外国人旅行者による『インバウンド』が大テーマとなりましたが、円高なら逆。つまり日本人が海外へ出かける動きが活発になる。そこで注目なのがオープンドア。格安パック旅行の比較サイトを運営しています。昨年末に上場したばかりの会社です」(同)

 さらに、円安とは対照的に、円高は輸入企業にプラスに働く。

「その目線だと蔵王産業。業務用掃除機などを海外から輸入して販売する商社です。単価の高い商品が多いため円高で仕入れコストを抑えられれば利幅が厚くなる。PERは割安なうえ、配当利回りは4%超。円高時代の鉄板戦略は『高配当株をホールドして次なる株高まで耐え忍ぶ』。配当利回りでスクリーニングしながら、円高を追い風にできる会社へ投資していくのがいいのでは」(同)

 もうひとつ注目したいのは金だ。

「金は米ドルと逆相関の関係にありますから、米ドルが下がれば金は上がりやすい。’14〜’15年にかけては金価格が低迷して、金ETFからの資金流出が相次いだのですが、今年5か月で2年間の流出額を上回る金額が金ETFに流れ込んでいる。直近の金価格は1トロイオンス=1270ドルですが、1500ドルを目指した上昇局面にあると見ています」(江守氏)

 のんびり投資派は資産に金を加えておくのが妙案か。ポートフォリオの円高対応を急ぐべし!

◆円高相場で稼ぐための金融商品はコレ!

【FX】

・米ドル/円
円高投資の王道は米ドル/円の売り。最大25倍のレバで資金効率に優れる。ターゲットは1ドル=100円だが、長期で80円割れを狙うもよし

・豪ドル/円
5月にサプライズ利下げを実施して、中期的にも値下がり余地大。新興国通貨の中で特に変動率が高いのも魅力。西原氏は1豪ドル=70円もあると予想

【日本株】

・蔵王産業(東1・9986)
海外から掃除機具・ロボットなどを輸入している販売商社。円高により、仕入れコストが低下し、業績の上振れ期待あり。配当利回り4%超も魅力

・オープンドア(東マ・3926)
格安旅行比較サイト「トラベルコちゃん」の運営会社。円高による海外旅行需要の拡大で利用者増へ。好調なマザーズ銘柄のなかの有望株

・ケイアイスター不動産(東2・3465)
関東地方であ性などにこだわった分譲・注文住宅を販売。円高により、建材コストの低下が進めば採算性が向上する。予想配当利回りは4%弱

・レバレッジ型ETF・投資信託
「日経ダブルインバース」(1357)など日経平均の値動きの「-2倍」に連動するETFが複数上場。俗に“ベア型”とも言われ、SBI証券には「日本株3.7ベア」という「-3.7倍」の値動きの投信もある

【米国株】

・米国株フィリップ・モリス(PM)
「マルボロ」などのタバコを世界で販売する多国籍企業。売り上げのほとんどが米国外のため、ドル安は業績底上げ要因に。無煙タバコ「iQOS」も好調

・プロクター・アンド・ギャンブル(PG)
「P&G」。世界最大規模の消費財メーカー。景気の影響を受けにくく、60年近く連続増配を続ける優良企業。海外比率が約70%なためドル安が追い風に

・コカ・コーラ(KO)
世界200か国以上でコカ・コーラを販売する多国籍企業の極み。バフェットが愛した銘柄としても有名。海外売上比率は70%でドル安恩恵銘柄の代表格

【その他】

・VIX指数連動ETF
VIX指数の別名は「恐怖指数」。リスクオフの動きが加速し、急激な円高(ドル安)が進む際に急騰しやすい。ボラが縮小するほど値下がりする

・金
金価格はドルと逆相関の関係にあり。円高ドル安ならば、値上がりが加速。ETFや先物など投資手法はさまざまだが、ボラの大きいドル建て銘柄がお勧め

取材・文/高城 泰(ミドルマン) 池垣 完(本誌) 図版/ミューズグラフィック