TTPが米国で批准されるのは絶望的な状況になってきた。11月の大統領選から来年1月の新大統領就任までのレームダックセッション(日程消化期間)に、オバマ大統領が可決させれば道は開けるが、その可能性は極めて低いという。写真は米ニューヨーク。

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米政治筋によると、TTP(太平洋連携協定)が米国で批准されるのは絶望的な状況になってきた。11月の大統領選から来年1月の新大統領就任までのレームダックセッション(日程消化会期)に、オバマ大統領が可決させれば道は開けるが、その可能性は極めて低いという。

共和党のマッコウネル上院院内総務やライアン下院議長が慎重姿勢のほか、共和党候補に内定しているトランプ氏のほか、民主党候補争いを競っているヒラリー・クリントンやサンダース氏がTPPに反対。米国世論の大勢も国際貿易連携に反対している。さらに有力議員には、オバマ大統領の歴史的な業績に手を貸したくないという思いも強い。大統領選と併せ上下議員の一部が改選されるが、これに直面している議員も賛成票を入れにくい。

経済界でもTPPに賛成する企業や団体は極めて少なく、促進へのロビー活動もほとんど行われていない。特に製薬業界やIT業界は現行TPPに反対している。

国務長官を務め、当初TPPを推進していたヒラリー氏が大統領に当選した場合、翻意の可能性も残されているが、すぐには困難。夫のビル・クリントン大統領時代の1993年に調印されたNAFTA( 米国、カナダ・メキシコ3カ国による域内貿易自由化取り決め)は、多くの米労働者の職が奪われたと批判されている。NAFTAへの否定的な国民感情が、反TPPの感情にもつながり、労働組合、環境保護団体、消費者団体がTPP反対運動を展開している。

国民の多くは過去20年間以上にわたり、NAFTAでは労働約束が反故にされたと批判、「TPPではもう騙されない」という感情を抱いている。

米国政治に詳しいグレン・フクシマ元米通商代表部日本担当部長は、「TPPの米国批准は厳しい状態だ。11月の大統領選から来年1月の新大統領就任までのレームダック・セッションにオバマ大統領が主導して通すのが最も可能性が高いが、その可能性は少ない。トランプ氏だけでなくヒラリー氏も選挙戦で反対を表明しており、新大統領の就任後の批准はさらに厳しくなる」と語った。

米国の現代政治に詳しい渡辺靖慶応大教授も、トランプ氏が大統領になれば、安全保障など対日政策は激変し、TPP(環太平洋連携協定)は白紙となる可能性が大きいと予想する。民主党ヒラリー・クリントン候補も「反対」に転じており、いずれにせよ、TPPは大幅な後退となるのは必至で、白紙に戻される確率が高いという。

日本でも農業関係者を中心にTPP反対論は根強く、安倍政権も今国会での可決を見送った。交渉の経緯を知る甘利明TPP担当相が政治資金疑惑で“失脚”状態、推進役が不在なのもマイナス要因。最大の経済シェアを有する米国が批准しなければTPPは成立せず、空中分解する。(八牧浩行)