■WEEKLY TOUR REPORT
【米ツアー・トピックス】

 テキサス州ダラス市内のTPCフォー・シーズンズ・リゾートで開催されたAT&Tバイロン・ネルソン選手権(5月19日〜22日/テキサス州)。観戦に訪れた地元ファンの期待は、会場近くで生まれ育ったジョーダン・スピース(22歳/アメリカ)の優勝だったが、残念ながらそれは叶わなかった。

 初日からの3日間は、ショットの調子が悪い状況にあっても、パットが冴えて上位をキープできていたスピース。3日目を終えて、首位のブルックス・ケプカ(26歳/アメリカ)とは2打差の2位と優勝のチャンスは十分にあったが、最終日はショットが不安定なうえ、得意のパットまで決まらなかった。

 最終日、フェアウェーをとらえたのは、たったの5回。グリーンにパーオンできたのも9回と、わずか50%の確率だった。前日まで決まっていたパットも、合計31パットと散々な出来。結果、「74」を叩いて通算10アンダー、18位タイに終わった。

 ラウンド後、スピースは厳しい表情を浮かべてこう語った。

「とにかく、何もかもが"オフ"だった。まったく流れに乗れないひどいラウンド。せっかくホームタウンで勝てるチャンスだったのに......」

 自らも地元での優勝を願っていたスピース。不甲斐ない結果に苛立ちを隠せないのも当然だった。スピースは言う。

「子どもの頃、父とフェンスを乗り越えて見に来たトーナメントだ。ここでゴルフが好きになった」

 さらに、16歳のスピースがアマチュアでPGAツアーに初めて出場したのも、2010年のこの大会だった。それは、ほんの6年前の出来事である。時の流れとは本当に速いものだ。

 ともかく、地元の大会であり、大会のタイトルスポンサーであるAT&Tはスピースの契約先である。周囲の期待はもちろん、自らもこの大会にかける思いはかなり強かった。

「正直言って、もっとプレッシャーがかかると思ったけれど、自分が思ったほどは感じていなかった。最終日が始まって、最初はそれなりに緊張したけど、すぐに優勝争いから脱落して、それでプレッシャーを感じなかったのかもしれない」

 スピースは、ラウンド中の自らの気持ちの変化をそう振り返った。

 この話を聞いて、今年の初めにロリー・マキロイ(27歳/北アイルランド)が言っていた言葉を思い出した。それは、そのとき世界ランキング1位だったスピースに向けてのメッセージというか、忠告のようなものだった。

「ジョーダン(・スピース)にとって、今年一番の敵になるのは、プレッシャーをかける自分自身だ。今年は、昨年とはまるで違う1年になるさ。僕自身がそうであったようにね」

 マキロイ自身、2012年に初めて世界ランキングのトップに立つと、翌2013年シーズンは不振に陥った。PGAツアーでは1勝もできず(ワンアジアツアーでの1勝のみ)、世界ランキングを落とした。

 また、マキロイは最近も同じようなことを口にしている。4大メジャーすべてを制覇する"生涯グランドスラム"の期待(※)が大きく膨らんだ、今年のマスターズでの戦いを振り返ったときだ。
※4大メジャーのうち、マキロイは全米オープン(2011年)、全英オープン(2014年)、全米プロ(2012年、2014年)はすでに制覇。

「(今年のマスターズでは)まったく自分のゴルフができなかったんだ。今振り返ってみると、やっぱり自分への期待が大きすぎて、それがプレッシャーになっていた。周囲から大きな期待がかかっているジョーダンだって、同じさ。ファンやメディアから受ける期待以上に、一番やっかいなのは、自分で自分に期待してしまうこと。それが大きければ大きいほど、プレッシャーになるんだ。もちろん、それはジェイソン(・デイ。28歳/オーストラリア)にも言えること。世界ランキング1位を持続するのは、簡単じゃあないよ」

 マキロイの言葉どおり、今季のスピースは年明けのヒュンダイ・トーナメント・オブ・チャンピオンズで勝利しただけで、その後は勝ち星から遠ざかっている。普通の選手であれば、あまり気にすることでもないが、昨季のスピースの活躍からすれば物足りない。多くのファンの期待を裏切っていることは確かだろう。

 そんな傍ら、奇しくもマキロイが先週の欧州ツアー、ドバイ・デューティ・フリー・アイリッシュオープン(5月19日〜22日/アイルランド)で今季初優勝を飾った。

 マキロイの地元アイルランドで開催された同大会は、自身のファンデーション(財団)がサポートしたことから、マキロイが大会ホストを兼任。3日目を終えて2位と3打差の首位に立つと、最終日も順調にスコアを伸ばした。そして最終18番では、残り235ヤードをカップまで60cmというスーパーショットを披露。見事優勝すると、マキロイはこみ上げる喜びを隠すことはなかった。

「今日ほどプレッシャーを感じた試合はなかった。僕は、優勝してもそんなに感情を表に出さないのだけれども、この勝利は涙が出そうだ」

 さて、肝心のスピースだが、地元で勝利するチャンスは、もう1回残されている。今週のディーン&デルーカ招待(5月26日〜29日/テキサス州)である。この大会が行なわれるのは、テキサス州フォートワースのコロニアルCC。前週のダラスからは、車で約1時間の場所だ。

 先週の最終日には、「フラストレーションしか残らなかった」というスピース。マキロイ同様、プレッシャーに打ち勝ち、地元で歓喜の優勝を果たしたいところだ。

「コロニアルCCは、これまで僕が何度もいい成績を残してきたコース。(先週の)最終日はすごくフラストレーションがたまったけれど、その中で自分なりには(上昇への)いいきっかけを見つけている。だから、今回のコロニアルCCでのプレーには自信を感じている」

 プロの選手であるならば、そのほとんどが世界のトップに立つことを目指してプレーしている。だが、頂点に立つ選手にしかわからない苦しみがある。友人であり、ライバルであるマキロイの久しぶりの優勝を受けて、そのうえで自らの気持ちをどう整理して今大会に臨むのか。スピースの地元でのプレーを改めて注目したい。

text by Reiko Takekawa/PGA TOUR JAPAN