「勝ったにせよ負けたにせよ、振り返ってこそ経験ってのは生きるんだ」

なるほど、と思う言葉で始まったのは、日5枠アニメ『僕のヒーローアカデミア』。先週放送の第8話「スタートライン、爆豪の。」は、模擬戦闘訓練が終わった後の様子をじっくりと描いたエピソードだ。


緑谷出久(通称・デク)&麗日お茶子コンビVS爆豪勝己&飯田天哉コンビの模擬戦闘訓練は、デクが必殺の個性“ワン・フォー・オール”をぶっ放して爆豪コンビに辛勝。幼い頃からデクを見下し続けてきた爆豪は、膨れ上がった自尊心をズタズタにされて自我崩壊寸前だ。

ショックを受ける爆豪を横目に、模擬戦闘訓練は進んでいく。今までチラッとしか映ってなかったクラスメイトたちの個性が次々と明らかになっていくぞ。

次の対戦は、轟焦凍(とどろき・しょうと)&障子目蔵(しょうじ・めぞう)コンビVS尾白猿夫(おしろ・ましらお)&葉隠透(はがくれ・とおる)コンビ。葉隠透の個性は “透明化”。いつも素っ裸(!)の女子高生ヒロインで、モザイクも謎の光も不要という日曜の夕方に似つかわしくない存在……というワケではなく、要するに完全に透明なので手袋がプカプカ浮かんでいるだけというH・G・ウェルズ的なキャラクターだ。声はとても可愛い(演:名塚佳織)。

手袋もブーツも脱ぎ、本格的な全裸になって張り切る葉隠だが(ペアの尾白は困惑)、轟焦凍の強力な個性“半冷半燃”でビルごと凍らされて瞬殺。素足を凍らされたら戦うどころじゃないもんね。

次の対戦は、切島鋭児郎&瀬呂範太コンビVS常闇踏陰(とこやみ・ふみかげ)&蛙吹梅雨(あすい・つゆ)コンビ。肘からセロハンテープを噴出してビル内に張り巡らす瀬呂範太もカッコいいが、影のような生物“ダークシャドウ”を操る常闇踏陰もクール。常闇を見て、『名たんていカゲマン』のシャドーマンを思い出した筆者は40代半ばである。

続いては、八百万百(やおよろず・もも)&峰田実コンビVS上鳴電気&耳郎響香(じろう・きょうか)コンビ。大変な優等生である八百万の個性は“創造”。生物以外なら何でも生み出すことができる。セクシーなコスチューム姿で構造物を生み出し続ける八百万を、横目で見続けるスケベな峰田のキャラは今後もブレることはない。

砂藤力道&口田甲司コンビは、パワフルな砂藤に対して見た目はゴツいのに内気な口田が好対照。対するは、青山優雅&芦戸三奈(あしど・みな)コンビ。芦戸の個性は“酸”。全身から溶解液を出して何でも溶かしてしまう。とにかく動き回る芦戸がハツラツとしていてカワイイ。アニメならではの発見だった。

「負けたことがある」というのがいつか大きな財産になる



模擬戦闘訓練を終え、教室に戻ったデクをクラスメイトが取り囲む様子にちょっとグッと来る。中学時代は落ちこぼれでいじめられてばかりだったデクだが、戦闘訓練で実力を発揮したため、優秀な個性を持つエリートたちの見る目も変わったのだ。「男子三日会わざれば刮目して見よ」ということわざがあるが、本当に10代男子の成長は早い。

そんな中、初めて味わう敗北にショックを受けていたのが爆豪勝己である。ほとんど無傷ながら、目の前で繰り出されたデクの個性の威力、そして知略に打ちのめされていた。さらに優秀なクラスメイトたちの戦いぶりを目の当たりにして、自分の未熟さを知ったというわけだ。

「こっからだ! 俺はこっから! 俺はここで1番になってやる!」

みっともなく涙まで見せながら、見下していたはずのデクに対して宣言する爆豪。初めて敗北を味わったが、本来的に賢い彼は敗北を敗北としっかり認め、早くもそれを糧にしてジャンプアップしようとしている。

「『負けたことがある』というのがいつか大きな財産になる」とは、『SLAM DUNK』の山王工業高校監督・堂本五郎が語った名言だが、まさに今回の爆豪にぴったりの言葉だ。敗北や失敗の経験を、そのままにしておくか、次に活かすかで、人生は大きく変わってくる。

デクと爆豪だけでなく、エリートに見えるクラスメイトたちにもそれぞれ少年少女らしいコンプレックスや悩みがあり、それを克服しながらヒーローを目指していくのが『ヒロアカ』の物語だ。夕日の中で激情をぶつけ合う主人公とライバル、そしてオロオロする新米教師(オールマイト)……久しく見ることのなかった清く正しい昭和の青春ドラマのような1シーンだった。

ここまで原作に忠実に、じっくりと主人公たちの成長を描いてきた『ヒロアカ』だが、一方でクラスメイトたちのキャラと個性がはっきりわかって楽しかった分、今回ぐらいは思いきってアニメオリジナルの模擬戦闘訓練でまるごと1話使っちゃったほうが嬉しかったかなぁ、とも思ったりした第8話でした。『キン肉マン』も『聖闘士星矢』も『魁!男塾』も、やっぱりサブキャラが光ってこそ面白くなるからね(例えが全部古い……)。

あ、ラストに死柄木弔(しがらき・とむら)が出てきたよ! コイツはヤバい奴です。演じるのは『機動戦士ガンダムUC』バナージ・リンクス役の内山昂輝! 今後の活躍に期待しましょう。

さて、本日放送の第9話は、生真面目な飯田くんにスポットを当てた「いいぞガンバレ飯田くん!」。なんだかより一層、学園ドラマっぽい雰囲気だ。それではご唱和ください。さらに向こうへ、「Plus Ultra!」。

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(大山くまお)