しかし、下剤の効果は、あくまで便が大腸を移動するスピードを促進させるという、限定的なものに過ぎない。
 「便がさほど溜まっていないのに緩下剤を使ったらどうなるか。便が軟らかくなるだけですから、水便が出るだけです。同じような状態で刺激性下剤を使った場合も、便が大腸を通過する時間が短くなるため下痢になる。大腸に便が溜まっていなければ、下剤の効果は十分に発揮されないのです」(同)

 排便には、様々なものが影響していると言われる。種々の排便に影響を及ぼす要素の中で、下剤は腸の働きだけに作用する。排便には食事や活動性が影響しているにもかかわらず、下剤だけを使ってコントロールすること自体、かなり無理があるのだ。
 腸が便を運ぶベルトコンベヤーとすると、下剤はそのベルトコンベヤーのスピードをアップさせる働きがある。しかし、ベルトコンベヤーの上に物が何も載っていなければ、いくらスピードを速くしても意味がないということだ。
 「便の量は食事で摂る植物繊維の量でも決まってきます。さらに、排便のプロセスには生活習慣などがかかわってくる。起床してから朝食をしっかり食べ、食後に便意を感じれば、そのタイミングを逃さずトイレに行ける余裕があるかどうか。あるいは、トイレに座った時、便を出すために適度ないきみで排便ができるかどうか。さらに、その間に正しい姿勢をキープできるかどうかなど、多くの要素が関係しているのです」(同)

 東京社会医療研究センターの村上剛志医師も言う。
 「便秘でお腹が張ってしまうと、その苦しさから一刻も早く解放されたいと思うものです。その際、頼りたくなるのが便秘薬や下剤などの『瀉下薬』です。一番いいのは、こうした薬に頼らないこと。食事や生活習慣を見直すことで、便秘の多くは改善します。植物繊維や水分をバランスよく摂れば、便のかさが増えたり軟らかくなって出やすくなる。植物繊維は1日20グラムほどが目安で、野菜や豆類のほか、わかめなどの海藻、こんにゃくに多く含まれています。さらに、規則正しい生活を心掛け、自律神経のバランスを整える。朝起きてまず水を飲むと、腸の働きが活発になります。排便を習慣づけるため、便が出なくても毎朝トイレに行くことも大事です」

 また、マッサージや運動も効果がある。国立病院機構久里浜医療センターの水上健医師はこう話す。
 「日本人の腸はねじれている人が多い。その場合は、便が通りやすいように、お腹を押したり、ひねったりするマッサージが効果があります」

 マッサージは、仰向けに寝た状態で左腹部と下腹部にそれぞれ両手を当て、指で小刻みにお腹が少しへこむ程度、トントンと交互に押す。次に両足を肩幅くらいに広げて立ち、両手を広げて上体をひねる。これらをそれぞれ1分間ずつ行う。
 スポーツではゴルフやテニス、ラジオ体操など、体をひねる要素が入ったものも効果的。運動をしていない人は、している人に比べて3倍以上便秘になりやすいとの報告もあるという。
 ただし、便秘に加えて発熱や血便、痩せてくるなどの症状がある場合は注意が必要。がんなどの恐れもあるので、病院で検査を受けた方がいいだろう。