安倍晋三公式サイトより

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 本サイトでは昨日、"オバマの歴史的広島訪問の立役者は自分だ"と言わんばかりの安倍首相が、そのじつ、まったく広島のことなど一顧だにしてこなかったことを紹介した。それは、2014年の「原爆の日」を迎えた広島で、昨年とほぼ同じ"コピペ演説"を披露し批判を浴びたのに、いけしゃあしゃあと長崎でもコピペのままだったこと。被爆者たちから起こっていた集団的自衛権行使容認への批判の声に対し、「見解の相違ですね」の一言で切って捨てたことなどだ。

 いずれも安倍首相がいかに広島・長崎という被爆地、そして被爆した人たちをないがしろにしてきたかを証明する話だが、じつはもうひとつ、安倍首相の"被爆地への冷淡さ"を浮き彫りにするエピソードがある。

 それは、安倍首相が被爆した人たちの暮らす原爆養護ホームの訪問をサボっていたという問題だ。

 毎年8月6日と8月9日、総理大臣はそれぞれ広島と長崎で行われる式典に出席するだけでなく、それぞれの地にある原爆養護ホームを訪問することが慣例になっている。だが、安倍首相は総理大臣に返り咲いた2013年の訪問を最後に、2014年、2015年と訪問を行っていない。

 しかも、2014年の場合、当初は行く予定だったのを急遽取りやめている。事実、訪問が予定されていた原爆養護ホーム「矢野おりづる園」の当日のブログには、こう綴られている。

〈当初、安倍晋三首相も来訪の予定でしたが、スケジュールの都合で急遽帰京となり、国務大臣お二人での慰問となりました〉

 突然、予定を変更するとは、なにか緊急で東京に戻らざるを得ない大きな問題でもあったのか。そう思い、当時の首相動静を調べてみたのだが、安倍首相は驚きの行動を行っていた。

 まず、安倍首相は東京に戻るなり、安倍首相は議員会館内の歯科診療室に直行。さらに夕方には、行きつけにしている青山の美容室でヘアカットをしている。つまり安倍首相は、原爆養護ホームへの訪問をドタキャンして、歯の治療や散髪をしていたのだ。

 同年の長崎も同様だ。原爆養護ホームを訪問することなく帰京すると、一旦、渋谷の私邸に戻り、その後すぐ別荘のある山梨へ。そして、大学時代の同窓生たちとともに炭火焼き料理を楽しんでいる。

 ......歯科医院や美容室に行くことも、同窓生との宴会も、別にいつだってできることだ。どう考えても、年に1度、広島と長崎の原爆養護ホームに出向いて、被爆者と対話をし、現状を実際に見て知るという総理の大切な任務をドタキャンしてまで優先させることとではない。というよりも、被爆者をバカにするにも程があるだろう。

 さらに、前述したように、原爆投下から70年という節目を迎えた昨年も、安倍首相は広島・長崎の原爆養護ホーム訪問を行っていない。ではその日、安倍首相はなにをしていたか。6日は帰京すると取り巻きの大臣たちと会い、夜はお気に入りのホテル・アンダーズ東京の51階にある「アンダーズ タヴァン」で高級ヨーロッパ料理に舌鼓。9日は羽田空港から私邸へ直帰している。

 夜景をバックにディナーを優雅に楽しむ余裕があり、ましてやとっとと家に帰るくらいなら、総理は被爆者とふれあう時間をもつべきだ。しかし、どうしてこの人にはそれができないのだろうか。

 つまるところ、安倍首相にとっては、広島と長崎の被爆者たちからあがる戦争への懸念や平和を訴える声が、自分の足を引っ張っているとでも思っているのではないか。実際、安倍首相を支持する極右たちは「広島や長崎の式典出席者は動員された左翼ばかり」などと喧伝し、安倍首相と一体化している極右団体・日本会議にいたっては、昨年、原爆の日に合わせて広島で「反核平和70年の失敗」という信じがたい講演会まで開催している。

 自国で起こった悲惨な過去に向き合うことさえできない人間が、「積極的平和主義」を語る。まったく呆れてものも言えないが、国民を、そして被爆した人びとを侮蔑する行為は、いいかげんやめていただきたい。
(野尻民夫)