中国が海洋進出を図る南シナ海が米中両国によるチキンゲームの舞台になりつつある。中国機の米機へ「異常接近」などをめぐり、両国は非難合戦を展開している。写真は南シナ海。

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2016年5月27日、南シナ海を飛行中の米軍機に中国の戦闘機が異常接近し、米軍は3回目の「航行の自由作戦」を決行―。米中両国は相手方の行動の非難を繰り返し、南シナ海は朝鮮半島と同様に、チキンゲームの舞台になりつつある。米国防総省は「中国がさらに緊張を高める行動に出る可能性がある」などとも懸念を示している。

米メディアなどによると、国防総省は18日、南シナ海を飛行中の米海軍の電子偵察機EP3に中国空軍の主力戦闘機・殲(せん)11が「危険な方法で」接近したと発表した。米CNNなどは「双方の距離は約15メートル以内だった。EP3は衝突を避けるため降下せざるを得なかった」とも報道。同省のデービス報道官は声明で「危険な事案として調査を始めた」と述べ、「今回の事件は外交、軍事ルートを通じて懸念を伝える」とした。

これに対し、中国外交部の洪磊(ホン・レイ)報道官は19日の記者会見で、米国の発表は「事実ではない」と否定。米軍機が海南島付近の海域に近づいたため、中国軍機は法規に基づいて追跡、監視したと主張し、危険な行動はしていない、と反論した。

さらに、米メディアは米海軍の駆逐艦「ウィリアム・P・ローレンス」が10日、「航行の自由作戦」の一環として、南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島にあるファイアリー・クロス(永暑)礁の12カイリ(約22キロ)内を航行したと伝えた。米軍が南シナ海の中国の人工島周辺で同作戦を実施したのは、昨年10月、今年1月に続いて3回目。

中国国防部の楊宇軍(ヤン・ユージュン)報道官は「米艦が中国政府の許可を得ずに違法に南沙諸島の関係島しょ付近の海域に入ったことは著しい挑発行為だ」と非難した上で、戦闘機やミサイル駆逐艦などを現場海域に派遣し米軍側に離れるよう警告したことを明らかにした。

中国の海洋進出をめぐって米国防総省は13日、中国の軍事力に関する年次報告書を発表。中国が南シナ海のスプラトリー諸島で占拠する拠点7カ所で、過去2年間に約1300ヘクタールの土地を新たに造成したほか、拠点のうち最大3カ所では、約3キロの滑走路が設置される見通しだなどと指摘し、東シナ海を含めた今後の行動に警戒感を示した。中国国防部は「中国の合法的な行動を勝手に歪曲(わいきょく)している」と反発している。

南シナ海で米国と歩調を合わせるフィリピンのアキノ大統領は退陣間近にもかかわらず、「中国がスカボロー礁を開発するのであれば、米国には軍事行動を起こす義務がある」と発言。「米国はフィリピンを守らなければ地域からの信頼を失う」と言及し、「中国のいかなる行動にも対応する準備ができている」とも語った。

一方、中国メディアによると、過激発言で知られる中国の軍事評論家・戴旭(ダイ・シュー)氏はこのほど、南シナ海での軍事衝突を想定した準備を整えるべきだと強調。「米国は今後5〜10年の間、北アフリカや中東情勢の泥沼から抜け出せない。中国はこの機会を利用し、特にベトナムを直接かつ現実的な敵と想定し、軍事衝突を想定した準備を整えるべきだ」と主張した。(編集/日向)