『エルヴィス、我が心の歌』 提供:パイオニア映画シネマデスク

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【映画を聴く】『エルヴィス、我が心の歌』前編
ほとんど本人!?
“プレスリー”歌声が胸を打つ!

2012年のアルゼンチン映画『エルヴィス、我が心の歌』が、今日から日本でも公開される。そのタイトルからエルヴィス・プレスリーの伝記映画か何かに勘違いしてしまいそうだが、実際は自分をエルヴィスの生まれ変わりと信じて疑わない男を主人公としたオリジナル・ストーリーだ。

『レヴェナント:蘇りし者』のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督と『BIUTIFUL ビューティフル』『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』の2作で共同脚本を手がけたアルマンド・ボーの長編初監督作品で、大人になりきれずに理想を追い続ける中年男の生き様を淡々と、しかし愛情に溢れた視点で描いている。

主人公を演じるジョン・マキナニーは、アルゼンチンでエルヴィスのトリビュート・バンドを率いて活動している人物。普段は大学教授であり建築家でもある彼のアルバムを偶然手にしたボー監督が、その歌声や存在感にインスパイアされて脚本を執筆。劇中では晩年のエルヴィスそっくりの歌声を随所で披露しており、本作の成功によって母国アルゼンチンでは映画と音楽の両方から引っ張りだこの人気者になっているという。

周囲の人間に自分を“エルヴィス”と呼ばせるだけでなく、自分の娘にはエルヴィスの娘と同じ“リサ・マリー”という名前をつけ、服装や食べ物、クルマにいたるまで徹底して本物のエルヴィスを真似て生活するカルロスは、普段は鉄工所で働く冴えない中年男。愛想を尽かして出て行った妻の交通事故をきっかけに、再び娘と暮らすことになったカルロスの、父親としての自覚の芽生えを描きながら、物語の舞台はエルヴィスの故郷、メンフィスの“グレイスランド”へと移っていく。

物語を彩るエルヴィスの楽曲は、どれもジョン・マキナニーによる吹替なしの歌唱。ジャンプスーツ姿でナイトクラブのステージに立って歌う「See See Rider」、娘の枕元で優しく弾き語る「Hawaiian Wedding Song」、晩年のエルヴィスのステージと同じようにアップテンポで聴かせる「Suspicious Minds」、ゴスペル風のピアノを弾きながら熱唱する「Unchained Melody」、エンドロールに使われるアコースティック・ギターの弾き語り「Always on My Mind」など、単なる“そっくりさん”の域を超えた彼の歌声とパフォーマンスは、本作最大の見どころ&聴きどころだ。(後編「『グレイスランド』と対照を成す作品」へと続く…)

【映画を聴く】後編/単なる“そっくりさん”じゃない! 大学教授兼建築家がプレスリー映画の主役に!?

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