一つ一つ丁寧に答える姿が印象的だった小野賢章

写真拡大

 映画『燐寸少女 マッチショウジョ』に出演する小野賢章が、俳優・声優・歌手として多方面で仕事をこなすことに対する率直な思いや、子役から始まった自身の俳優業を語った。

 本作は、謎の少女から寿命1年と引き換えに妄想を具現化する“妄想燐寸”を買った人間たちがその力に取りつかれていくさまを描くダーク・ファンタジー。完成した作品を観て「衝撃的だった」と語る小野が演じるのは、燐寸を手にする自信家の美大生・岸田叶人。「僕は自信はあまりない」と役柄とは対照的な面を明かしつつ、「自信がないと思っていた方が自分を客観的に見られるかなと。慢心してはいけないと思います」と冷静だ。

 複数のエピソードが交錯する物語で、小野の出演パートは「観ていてあまり気持ちいいものではないかもしれない」としながら、「岸田はプライドや考えが一直線になっていくのが見えるキャラクターなので、1人の狂っていく男の生きざまを観てもらえたら」と自分なりの解釈で作品の見どころを語る。岸田を狂わせる妄想“人の心がのぞけたら”については、「心は読まれたくないですね。僕は態度にもあまり出ないので、読まれにくいと思います」と苦笑。「思ったことは胸に秘めています。そう簡単に読める人間って、おもしろくないじゃないですか。どう考えているかはわからない方がいいんですよ」と持論を述べた。

 映画やドラマ、舞台などに多数出演する一方で、声優としても第一線で活躍しているが、「なかなか両立は難しいです。やられている方もほとんどいないので……」と小野が吐露するように、俳優業と声優業の両立は簡単なことではない。ベースは同じ“芝居”と捉えているというが、小野の口からは「大変な時もありますよ」と本音もこぼれた。その上で、「僕がこの道を切り開いていけたらと思っています。人と同じことはやりたくないという思いがあるので、そういう意識のもとやっています」と淡々とした口調の裏に熱を込める。多忙な毎日だが、「いま頑張って色々な仕事をして、きっとこの先に何かがあると信じてやっています」と真摯に語った。

 また、映画『ハリー・ポッター』シリーズで主人公の吹き替えを務めるなど子役時代から活躍する小野だが、幼い頃は役者としてやっていくことなど考えてもいなかったという。俳優業を意識したのは18歳の時で、「やっていくのならこの道しかない」と進学せずに俳優一本でやっていくことを決意。当時を「その道しか残っていなかったというのもあるし、結局それしか考えていなかったと思う」と振り返り、「これまでは勢いだけでやってきた。20代後半になり、役者としてさらなる一歩を踏み出せるよう、作品一つ一つをより深いところまで読み解けていけるようになっていきたい」と先も見据えた。(編集部・小山美咲)

映画『燐寸少女 マッチショウジョ』は公開中