北朝鮮からの脱北事件が止まらない。先月はじめ、中国浙江省寧波の北朝鮮レストラン(北レス)「柳京食堂」の支配人と従業員13人が脱北したのに続き、今月23日にも、別の北レスの従業員3人が脱北し、韓国行きを目指していることが明らかになったのは本欄でも伝えた。

脱北に失敗すれば収容所送り

韓国の聯合ニュースは、中国にある北朝鮮レストラン関係者の証言を引用しながら、西安の北レス従業員2〜3人に問題が生じたと伝えている。この関係者はそれ以上の詳細について言及を避けたが、脱北した従業員が勤めていたのは、上海市内にある「K」というイニシャルのレストランだとする情報もある。

また、上海の徐家匯の北朝鮮レストランが、23日のディナー営業を中止したと伝えた。北朝鮮レストランのウェイトレスのなかには、その容姿端麗さで、韓国の若者たちの間でアイドル並みの人気を博している例もある。こうした女性たちが、脱北されては困ると北朝鮮当局も警戒を強めて営業を中止したのかもしれない。

こうした表に出る脱北事件の裏で、脱北を試みるも、国家安全保衛部(秘密警察)に逮捕され、連れ戻される事件が発生した。

デイリーNK内部情報筋によると、北朝鮮の北東部、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の会寧(フェリョン)で市内在住の3家族、15人前後が、国境を流れる豆満江を渡り、集団で脱北。しかし、中国側に派遣された保衛部逮捕組に発見され、あっという間に北朝鮮に連れ戻されてしまった。保衛部は、3家族を脱北させたブローカーの割り出しにも全力を上げている。

北朝鮮当局は、朝鮮労働党第7回大会の前後期間を含めた今月2日から10日までを特別警戒週間とし、通常時以上に国境警備を強化していた。電波探知機を搭載した車両で、携帯電話の通話を探知するほどだった。こうした大きな政治イベントの前後には、国境警備が疎かになる傾向があるが、今回ばかりは、3家族の脱北は失敗に終わった。

気になるのは、3家族の今後である。彼らに過酷な刑罰が待っていると見られる。

通常、1〜2人の脱北ならば、捕まっても労働教化刑数ヶ月で済む。しかし、先月と今月と立て続けに北朝鮮レストラン従業員の集団脱北事件が起きているだけに、タイミングが悪い。家族単位で集団脱北する場合、当初か韓国行きを目的としたケースも多く、3家族は、政治犯扱いとなり、収容所送りの可能性もある。北朝鮮の政治犯収容所は、劣悪な環境もさることながら、悲惨な人権侵害が行われている現場だ。

(参考記事:赤ん坊は犬のエサに投げ込まれた…北朝鮮「人権侵害」の実態(6)

事件の余波で、北朝鮮当局は、脱北を防ぐため、「韓国に電話したらタダではおかない」と住民を脅迫し、川に洗濯に行く人を監視するなど、厳しい締め付けをおこなっている。そのため、日常的な経済活動にも支障が出ており、市民生活に、暗い影を落としている。