■連載/ファイナンシャル・プランナー山崎俊輔の「フィンテック入門」

3回目は、投資手法でブームとなっている、ロボアドバイザーについて考えてみます。

【フィンテック入門】ロボアドバイザーは、投資理解の助けとなりうるか

■フィンテックの花形といえばロボアドバイザー?

 日本版フィンテックは世界のフィンテックと異なる要素がいくつかあります。日本では銀行預金口座の作れない人、というのがほとんどいないこと、海外送金需要が低いこと(海外で働き自国に送金するようなケースが少ない)ため、海外のフィンテックで注目されているような、銀行を介さない送金や決済方法はあまり普及していません。

 日本でフィンテックの代表例として語られがちなのは「投資ロボアドバイザー」です。

 資産運用はまだ日本人に広くなじみのあるものとなってはいません。しかし、ただでさえ超超低金利時代の預金金利(年0.01%!)ではお金を増やすことはほとんどできません。

 投資を上手に活用することができれば、お金が増えるペースは高まるのではないかという期待がある一方、やはり「何を買えばいいのか分からない」「金融機関の人に話をするとカモにされるのでは」という不安からなかなか投資に踏み出せない人もたくさんいます(あなたもきっとそうでしょう?)。

 そうしたギャップにちょうど適合するのが、ITの力を借り投資経験や投資知識が浅い人の支援をしてくれる、というものです。一般的にはロボアドバイザーと呼ばれます。

【フィンテック入門】ロボアドバイザーは、投資理解の助けとなりうるか

 海外でもロボアドバイザーのマーケット拡大はめざましく、2016年には3000億ドルのマーケットが2020年には2.2兆ドルに拡大するとの予測もあるほどです(Bloomberg)。

 日本でもフィンテック特集の雑誌を開けばほぼ確実にロボアドバイザーの会社がインタビューに応じていますし、新聞記事にも多く登場するのがこのロボアドバイザーです。

 さて、このロボアドバイザー、フィンテックの目指すべき、「金融の便利を私たちに使いやすくする」仕組みになっているでしょうか。

■しょせんは人が作り出したプログラムに過ぎない

 ロボアドバイザーといっても、スーパーコンピューターが毎回特別な演算を行い、何もないところからあなたにジャストフィットする提案をしてくれるというわけではありません。

 ロボアドバイザーの基本的な仕組みは、あなたが投資の意向や理解度を質問に答え、その回答を分析し、あなたに適切と考えられる資産配分や金融商品を提案してくる、というものです。

 どのようなロボアドバイザーであっても、そこには必ずプログラムを組んだ人の考えやロジックがあります(監修者として経済学者などが顔を連ねていることも多い)。そして、ほとんどのロジックは分散投資理論をベースにしています。

 あなたがもし、コンピューターに頼れば、絶対的に高利回りが確保できる投資方法を指南してもらえる、と考えるならそれは明らかな誤りです。

 また、ロボアドバイザーは運用開始後の見直しを自動的に行なうわけでもありません。ロボアドバイザーは最初の投資助言をするのが基本であり、投資一任(完全お任せ)ではないからです。FXにおける自動売買プログラムのようなものと混同しないようにしなければなりません(ロボアドバイザーに投資一任を組み入れ、年に数回自動的にリバランスを行ない、運用の軌道修正を行なう証券会社もある)。

 機械がやってくれるのだから、感情を加えずシミュレーションを行なえますが、だからといって人間のできないことをするわけではありません。あくまで魂は人が入れている(プログラムしている)のです。

【フィンテック入門】ロボアドバイザーは、投資理解の助けとなりうるか

■その助言料は手数料的に割高である可能性が高い

 ところで、私たちは今、「最安値」を追求する世界に生きています。楽天市場やYahoo!ショッピングでは、最安値ショップを必ず検索しますし、価格.comを使うことも当たり前のことです。

 残念ながらロボアドバイザーの投資については、そうした割安な投資にならない可能性があります。ロボアドバイザーの費用を考えたとき、便利の代わりに過剰に割高な費用を払うことになるからです。

 あるロボアドバイザーはあなたの資産残高の1%を投資アドバイスにかかる年間費用として徴収しますが、これは年4〜6%くらいの利回りを目指す資産運用において過重な費用です。もちろん株価が低迷している時期に資産が減少した場合も助言料はかかります。

 ロボアドバイザー会社の多くは、運用そのものは低コストのETFで行うとしていますが、仮に年0.2%の運用手数料しかかからないETFであったなら、ロボアドバイザーの費用はその5倍もかかっていることになってしまいます。

 私たちは直接ETFを買うことができるので、イニシャルコストとしてのみロボアドバイザーのアドバイスを買い、直接ETFを買うのがもっとも割安、ということになります(ロボアドバイザーであっても最後は自分で発注をかけることになる)。

 ロボアドバイザーが高コストの投資であったと指摘するのは、銀行の窓口で投資信託を買うような例です。購入時に2〜3%、運用期間中に年間1〜3%くらいの手数料を引かれ続けているようなケースがあり、これに比べれば確かに、ロボアドバイザー経由の投資は割安です。しかし、もともと高い手数料を払わされていたものと比較して安いというのもおかしな話です。

 そして残念なことに、この高いコストはあなたの元本割れリスクを軽くしてくれるわけではありません。日本株が急落したり、急激に円高に振れたり、海外の株式市場が大暴落したとき、ロボアドバイザーが守って勝手に売り抜けてくれるわけではないのです。

■自社取り扱い商品のみで囲い込むロボアドバイザーという問題もある

 もうひとつ注意すべきは、自分のところで取り扱っている金融商品のみを顧客に販売するロボアドバイザーもある、ということです。

 アドバイスがもし適切であったのならば、どこの金融機関に口座を開こうと自由であるはずですし、むしろ、複数の金融機関を活用してでも最高の条件の投資商品を買い集めるような助言があってしかるべきです。

 しかし、それでは販売手数料等の運用にかかる収入を得られません。自社取り扱い商品のみでの助言を行うロボアドバイザーについては、注意をしておくといいでしょう。要するに顧客囲い込みツールを格好良くしただけというわけです(ETFはどこの証券会社でも購入できるため、投資信託を対象としたロボアドバイザーがこの注意対象になります)。

■プログラムの基礎数値をいじればアドバイスの結果もガラリと変わってくるが見分けることは不可能

 さらに、ロボアドバイザーの注意すべきポイントは、そのバックグランドデータの正当性をユーザーが検証する方法がない、ということです。

 資産配分のシミュレーションと具体的な金融商品のマッチアップを行なうためには、いくつかの基礎的なデータが必要になりますが、そこを明らかにすることはまずありません。仮にAPIが公開されて、プログラムの第三者利用が促進されたとしても、プログラムそのものの中身はオープンにならないでしょう。

 なぜならプログラムの中身と基礎的データの設定そのものが各社のロバアドバイザーの個性であり他社への優位性になるからです。

 だとすれば、ロボアドバイザーが良いチューニングをされているかどうか顧客は知る方法がほとんどなく、でも「フィンテックだから」と頼るような構図になります。

 場合によっては「サイトが格好いいから」「広告がよくできているから」という理由でロボアドバイザーと契約することもあるでしょう。どんなに高度なシステムがあろうと、最後は私たちの感覚で利用することになるわけです。

■ロボアドバイザーを使いこなせる人は、ロボアドバイザーを使わなくてもいいという矛盾

 結局のところ、ロボアドバイザーは安易に頼ると危険な要素が多々ある一方で、それを理解のうえでロボアドバイザーを利用できるようなレベルの人はロボアドバイザーをほとんど必要としないという矛盾が起きます。

 フィンテックのヒーローをたたきのめすようで恐縮ですが、現在のロボアドバイザーは、紙のアンケート用紙で行なっていたヒアリングをネットで行なって、具体的な商品を提示する部分を少し精緻化したものです。

 5%刻みではなく1%刻みにしたり、具体的な金融商品名まで提示するようになったところは進歩ですが、シミュレーション結果を決めるのはシステムというより、あなた自身の回答です。

 あなたが「運用目的は余裕資金運用」とすれば株式投資比率は高くなり、「株価急落時には慌てて売ります」と答えれば株式投資比率はぐんと下がります(シミュレーションページでいくつか試行錯誤してみるといい)。

【フィンテック入門】ロボアドバイザーは、投資理解の助けとなりうるか

 しかしロボアドバイザーに安易に頼る人は、それが分からないため、自分の投機意欲を回答に入力、それがプログラムが勧めるベストなポートフォリオだと考えてしまう恐れがあります。「正解はプログラムが出すのではなく自分自身の内側にある」ということを理解する必要があります。

■ロボアドバイザーと人のアドバイスを併用することは可能か

 ここまでブームに水を差すような、厳しめの話をしてきました。それでも、ロボアドバイザーは脚光を浴び続けると考えています。資産額も増大すると思われます。個人の投資のハードルを下げることには一定の効果があるとも思えます。

 しかし、ロボアドバイザーが全能ではないことは明らかで、フィンテックブームが情報弱者をカモにするビジネス作りとならないことを祈りたいところです。

 アメリカでは、ロボアドバイザーの助言と、人の助言とを組み合わせる手法への期待がある、とされています。シミュレーションソフトをただ盲信したり、結果をひとりで疑うのではなく、人間の投資アドバイザーがその解釈の手助けをしたり、市場急落時などの心理的サポートを担う、というものです。

 ファイナンシャルプランナーの有料アドバイスはなかなか日本ではなじみがない仕組みですが、もしかするとロボアドバイザーの提案を個人に受け入れられるものとする橋渡し役になってくれるかもしれません。

 ロボアドバイザーのビジネスは、我が国ではまだ端緒についたばかりです。投資初心者や投資未経験者にとって、ロボアドバイザーが、本来のフィンテックの役割である「金融の便利を個人のメリットにする」仕組みとなることを期待したいと思います。

文/山崎俊輔

AFP、1級DCプランナー、消費生活アドバイザー。企業年金研究所、FP総研を経て独立。商工会議所年金教育センター主任研究員、企業年金連合会調査役DC担当など歴任。近著は「お金が「貯まる人」と「なくなる人」の習慣」