早起きは三文の徳!?(shutterstock.com)

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「早起きは三文の徳」----―。

 子どもの頃、祖父母に諭され、両親に叱られながら、いやいや早寝早起きした思い出は誰にでもあるだろう。中学の英語教師から「The early bird gets the worm.」も教わったかもしれない。

「早起きは三文の徳」はウソ!?

 2016年2月3日に発行されたオンライン学際的ジャーナル『Nature Communications』によれば、英国オックスフォード大学の睡眠・概日リズム神経科学研究所の名誉研究員ポール・ケリー博士は、「早起きは心身に大きな負担をかけるので病気につながる。今や『早起きは三文の徳』は古くさい非常識。悪習慣を改めるべきだ」と発表した。

 研究発表によると、ケリー博士は、五大陸の人種の睡眠パターンを総合的に分析し、各世代が勧める起床時間と起床後の活動開始時間を集計したところ、個人差はあるが、起床時間は青年期(15〜30歳)が9時、壮年期・中年期(31〜64歳)が8時、高齢期(65歳以上)が7時だった。

 さらに研究に参加した高齢者の遺伝子解析によれば、6時以前に起きる高齢者は7時以降に起きる高齢者よりも、心筋梗塞や脳卒中の発症リスクが約40%、糖尿病やうつ病の発症リスクが20〜30%も高く、しかも重篤化しやすいことが判明した。早起きは健康に悪いのだろうか?
「早起きは三文の徳」はホント!?

 ケリー博士が研究発表した同じ号の『Nature Communications』に、対論というべき論文が掲載されている。消費者向け遺伝子検査サービスを手がける23andMe社に所属し、調査・研究に携わったデビッド・ハインズ氏らによるものだ。

 ハインズ氏は「夜型生活よりも朝型生活を好む人の遺伝的変異が特定できた。朝型生活を好む人は早寝早起きで、夜型生活を好む人は起床時刻も就寝時刻も遅い。24時間周期を有する概日リズム(サーカディアンリズム)は、朝型生活が好きになるか、夜型生活が好きになるかを決める生物学的な決定要因になる」と論評している。

 概日リズムは、細胞周期(DNAの複製・分配や細胞質の分裂)、代謝、摂食、生殖など、生存するために欠かせない生命現象をコントロールしている生体システムの根幹だ。

 概日リズムを制御する時計遺伝子は、Per2、Cry、Bmal1、Clock、Chronoなどがすでに確認されているが、今回の研究は、これらの時計遺伝子が朝型生活の好みと深く関わっている事実を初めて解明した。

 研究者らは、23andMe社の消費者向け遺伝子検査サービスを利用した8万9283人を対象に「朝型生活が好きか? 夜型生活が好きか?」をインターネットでリサーチし、被験者のDNAのゲノムワイド関連解析(GWAS:Genome-Wide Association Study=ジーバス)を実施した。

GWASは、DNAチップを用いてゲノム配列の個人差や、疾病に関わる多因子形質と変異の関係を探りつつ、疾病に関連する遺伝的原因を解明する解析法だ。

 GWASの結果、朝型生活の好みに関連する15の遺伝子の変異が同定され、その内の7つの遺伝子が概日リズムを制御する時計遺伝子の近くに位置している事実が確かめられた。

 また、光感知を制御する遺伝子の近くに位置する遺伝子の変異も特定された。つまり、概日リズムを制御する時計遺伝子が朝型生活の好みを決める主因である事実が確認されたのだ。

 さらに、朝型を好む人はうつ病に罹るリスクも、肥満や低体重になるリスクも低いことが判明。このような遺伝的変異が同定されたことは、今後の概日リズムと睡眠障害などの研究にも役立つにちがいない。

 「早起きは三文の徳」は、ウソか? ホントか? 概日リズムを制御する時計遺伝子が解き明かした「早起き好き」のメカニズム論争。しばらくは口角泡を飛ばす徹夜の激論が避けられない。
(文=編集部)