シボレーがエンジンサプライヤーとしてインディカーシリーズに復帰したのは2012年。以来、世界最大のレース、インディ500では、ホンダとシボレーが1年おきに優勝している。ただ、予選では常にシボレーが強さを見せつけてきていた。4年連続ポールポジションを獲得し、去年は予選トップ5を独占した。

 しかし、今年は戦況が変わり、5月21、22日に行なわれた予選は実力拮抗で大接戦となった。そして、ホンダ・ユーザーのジェームズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)が見事ポールポジションをつかんだ。ポール以外にも、予選3、4、5位はアンドレッティ・オートスポートのライアン・ハンター-レイ、タウンゼント・ベル、カルロス・ムニョスで、ホンダ勢はトップ5に4人が食い込んだ。7位もホンダ・ドライバーのミカイル・アレシン(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)だ。今年の予選はホンダが優勢で、去年までとは立場が逆転した。

 インディ500では、予選と決勝でターボのブースト圧が異なる。決勝はブースト低め=パワーも少し下げた状態で戦う。そのため、予選前に行なわれるプラクティス5日間のうちの4日間は低ブーストで走る(週末の2日間で行なわれる予選の前日からブーストは上げられる)。

 ホンダ勢はレース用ブーストでのプラクティスでも好調だった。記念すべき第100回目のインディ500。アメリカだけでなく、世界の注目度も例年より高い今年のインディ500でホンダは勝つことができるだろうか。ゼネラル・モーターズのシボレーといったらアメリカン・ブランドの代表中の代表。彼らの方が「なんとしてでも勝ちたい!』という思いは強いレースかもしれないが......。

 予選上位のドライバーだけでなく、ホンダ勢ではオリオール・セルビア(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)=予選10位、アレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)=予選11位、佐藤琢磨(AJ・フォイト・レーシング)=予選12位、マルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・オートスポート)=予選14位といった面々が優勝争いへと加わっていきそうだ。

 グレアム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・ウィズ・セオドール・レーシング)も、予選では失敗したが、レースでは上位に浮上してくるだろう。

 ホンダ勢ではハンター-レイのみがインディ500の優勝経験を持つが、シボレーには過去のウィナーがエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)=予選9位、ファン・パブロ・モントーヤ(チーム・ペンスキー)=予選17位、スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング・チームズ)=予選13位、トニー・カナーン(チップ・ガナッシ・レーシング・チームズ)=予選18位、バディ・ラジア(ラジア・バーンズ・レーシング)=予選32位と、5人もいる。彼らが今年のレースでも活躍することは間違いない。

 その上、シボレー勢には予選2位のジョセフ・ニューガーデン(エド・カーペンター・レーシング)、2014年シリーズチャンピオンのウィル・パワー(チーム・ペンスキー)=予選6位、今シーズン3勝でポイントリーダーのシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)=予選8位、エド・カーペンター(エド・カーペンター・レーシング)=予選20位など、強力なドライバーたちがいる。これだけ多くのドライバーに優勝のチャンスがあるのだから、第100回インディ500はすさまじいバトルとなるだろう。

 アメリカという国は歴史が短いが、インディ500は世界で一番長い歴史を誇っている。アメリカ人はこのレースを大きな誇りとしており、「一生に一度は生でレースを見たい」と考える人は多い。

 第100回目の今年、そんな人たちが続々と5月末のインディアポリスに出かけることを決意したのだろう、指定席チケットは前売りで売り切れた。インディアナポリス・モーター・スピードウェイは世界最大規模で、指定席だけでも25万席近くあるというのに、だ。レースの週末はインディアナポリスとその周辺のホテルは満室。スピードウェイ横のキャンプ場のスペースも事前販売分は完売! この分だとレースの朝の渋滞がひどいものになるのは間違いない。

 2012年、ダリオ・フランキッティとバトルし、最終ラップのターン1で彼のインへと飛び込んだのが佐藤琢磨だった。思い切りラインを寄せてきた相手に対して、クリーンに勝ちたかった琢磨は接触を避けてコースのイン側に下り過ぎ、クラッシュ。あと一歩で優勝を逃したのだった。結果は17位だったが、この時の戦いぶりで、琢磨はアメリカのファンの心を掴んだ。インディ500で勝つためのマシン作り、レースの戦い方でも彼は着々とノウハウを積み上げ、その走りは安定感と鋭さが両立している。

 今年の琢磨は予選12位だった。4列目外側グリッドと、決して悪くないポジションからスタートを切る。心配があるとしたら、今年の琢磨はプラクティスでの周回数が少ない点だろう。マシントラブルが重なり、貴重な走行時間をロスしてしまったのだ。

 時速370km/h以上という超ハイスピードで周回し続けるインディ500では、乱気流を浴びても安定したマシンを用意する必要がある。かといってダウンフォースをつけ過ぎればトップグループで戦い続けることは不可能。マシンがグリップを失わない、ギリギリのところを見出す必要があり、そこが極めて難しい。しかし、琢磨は過去6回のインディで蓄えた経験を基に、予選後の月曜のプラクティスでマシンに対する手応えを掴んだようだ。

「最後のプラクティスではトラフィックでのマシンのフィーリングを確かめることができた。レース用セッティングのベースラインはいいと思う。ようやくいいポジションにつけることができたと感じている」と語る琢磨の目には、闘志が漲(みなぎ)っていた。頂点を目指して戦う準備が整いつつある、ということだ。

天野雅彦●文 text by Masahiko Jack Amano