ろくでなしの神様と天使のような娘? 宗教観をぶっ飛ばす異色ファンタジー映画『神様メール』で勇気がわいてくる!【最新シネマ批評】

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[公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画のなかから、おススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。

今回ピックアップするのは映画『神様メール』(2016年5月27日公開)です。

本作は2015年「ゴールデン・グローブ賞外国語映画賞」候補など、世界各国の映画賞を席巻した作品。その秘密はオリジナリティ! スピリチュアルな世界観と現代を繋げる設定と演出が見事なんですよ。おまけに爽やかな感動が駆け抜けるすがすがしさもあるという、この素晴らしさ! 『トト・ザ・ヒーロー』など、良作を生み出してきたベルギーの巨匠ジャコ・ヴァン・ドルマル監督の新作です。

それではさっそく、見ていきましょう。

【物語】

神様(ブノワ・ポールヴールド)はブリュセルのアパート暮らし。彼の妻(ヨランド・モロー)と娘のエア(ビリ・グロワーヌ)ら家族と暮らしているが、とにかくワンマンでケチくさい男。家族をアパートに閉じ込めて、神様であるのをいいことにPCひとつで世界を支配しています。

ある日、エアは神様が不在の間に、世界中の人々に余命を送信してしまいます。「みんなには、神様に支配されずに自由に生きてほしい」と思ったからなのですが、これが大混乱を招きます。

エアは世界へと飛び出し、余命にとまどう人々に力を与えますが、神様がこれに気付いてエアを追いかけて来るのです……。

【神様が邪悪という新解釈に驚き!】

『神様メール』の素晴らしさは、その独創性! 神様がこんなヨレヨレのオヤジで、ケチでイジワルだと誰が思うでしょうか。でもよく考えてみれば、神様はオールマイティな存在。何でもできるわけですから、黒い神様がいても不思議ではないわけです。

ドルマル監督は、この個性的な神様や映画について、こう語っています。

「本作は神様や宗教ではないのです。人間が本来持つパワーがテーマ。社会や政治が持つ権力は、それに従わないと罰が下されるようなことが時にはあるかもしれない。しかし、エアは “恐れないで好きな事しようよ” と語ります。あなたの人生はカタログではない、好きに設計できるのだというメッセージです」

また、キリスト教信仰者からのバッシングはなかったか? ということについては……

「この映画を作って宗教関係者からのバッシングはないですよ。むしろベルギーでは教会の人々が、この映画を薦めてくれています。女神や死後の世界を描いていますし、なにより神を信じるなとは、この映画で語っていませんからね」

【エアが出会う人々はあなたに似た人?】

エアの送ったメールによって、思いがけず自分自身の余命を知ってしまう人々は、それぞれ個性的な人ばかりのように見えますが、実は彼らはフツーの人々。置かれている状況は違うけど、心は、この映画を見る観客のみなさんと変わりないのです。

誰でも何かしらコンプレックスを抱きながら、どこかで夢を見ている、妄想している。“こんなことあったらいいな”と奇抜なことを考えている……。みなさんも考えたことあるでしょう?

エアが出会う人々も、そんな風に “こんなことやってみたいな” ”こんな人生だったらいいな“ とモンモンと考えているのです。それはいいことも悪いこともあるけれど、ドルマン監督はきっと人間が大好きなのでしょう。みんなの夢を平等に、かつ、平和に叶えてあげるのです。だから「ああ、素敵だなあ」と、映画を見ながら思わずニコニコしてしまうのですね。

【父と娘のスリリングな追いかけっこのあとの美しさ】

エアがどうやってアパートから脱出したか、その楽しいしくみはネタバレになるので伏せますが、エアを追いかけて同じように飛び出したキレやすい神様は、現実の世界では、ちょっと頭のおかしなホームレスに間違えられてしまう。それでもキレまくりながらエアを探しまくり、エアは逃げまくり……という追いかけっこはなかなかスリリング。

エアは、女の子になりたい男の子と仲良くなりますが、二人で逃げまくったあと、ラストに起こる美しい光景! ヴィジュアルが最高にキュートなんですよ!

宗教に詳しい人が見れば、様々な結びつきに気付いて楽しめるでしょうし、まったく詳しくなくても監督の語るように “人生の設計図は自分で描く、人にはその力があるはずだよ” というメッセージにうなずくことができるはず。

見終ったあとすがすがしく、一歩前進できるような、そんな気持ちにさせてくれる映画です。

執筆=斎藤 香(C)Pouch

『神様メール』
(2016年5月27日より、TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー
監督:ジャコ・ヴァン・ドルマル
出演:ブノワ・ポールヴールド、カトリーヌ・ドヌーヴ、フランソワ・ダミアン、ヨランド・モロー、ピリ・グロワーヌ、ローラ・ファーリンデンほか
(C)2015 - Terra Incognita Films/Climax ilms/Apres le deluge/Juliette Films Caviar/ORANGE STUDIO/VOO et Be tv/RTBF/Wallimage

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