山岸由花子かわいいよ山岸由花子


前回、顔見世だけして一言もセリフを喋らず、否が応でも期待が高まっていた新キャラクター・山岸由花子を演じる声優さんのキャスト。その第一声が解き放たれた瞬間に、能登麻美子さんだー!っとTwitterのタイムラインに激震が走った第8話。


太陽は東から昇り、リンゴは木から落ち、能登さんといえばかわいい。『ケロロ軍曹』のアンゴル=モアや『君に届け』の黒沼爽子ほか、声を耳にすれば疲れもぶっ飛び悩みも溶け去る「癒やし声」の持ち主だ。「能登かわいいよ能登」というネットスラングは、どこかで目にしたことがあるはず。
可愛いはコワイ。きれいな声は、この世に未練を残させる死神の仕打ち……『地獄少女』の「いっぺん、死んでみる?」というウィスパーボイスは、地獄流しの宣告だった。さらに「かごめかごめ」など童謡をうたう能登さんの動画には「能登こわいよ能登」や「呪われる」などのタグが付けられている。
さて山岸由花子。今回は「能登かわいいよ能登」か「能登こわいよ能登」か、果たしてどっちでしょうね(すっとぼけて)。

第8話は、こんなお話


喫茶店で女性と二人っきりの康一を見かける仗助と億泰。なんと同級生の山岸由花子から好きだと告白されていたのだ。初めは喜んだ康一だったが、突然キレたりしおらしくなる由花子にドン引き。その翌日、一晩で編んだセーターや手のかかりすぎた弁当を用意され、康一は由花子の好意の異常さを確信する。わざと嫌われようとしたところ、彼女はとんでもない行動に出るのだった……。

元祖ヤンデレの愛が重すぎる


オープニング、先週に続いてまさかの変更! 康一くんのスタンドが追加された翌週に、アレンジバージョンの曲に差し替えられるとは。第四部のテーマの一つ「成長するスタンド」の象徴なのか……?
「スタンド使い同士ってのはどういう理由か、正体を知らなくても知らず知らずのうちに引き合うんだ」
ジョジョシリーズでもっとも大事なフレーズを最初に言ったのが、わりとどうでもいい間田敏和(先週の敵スタンド使い)だった! 意外な事実を思い出す今回のツカミだが、入院してる間田がけっこう重傷で、バイカー兄弟も仕返ししすぎだと笑いがこみ上げる。
「山岸由花子に愛されること」の意味は知っている原作派としては、心穏やかに見られるはずだった告白シーン。しかし能登さんの声でコクられるなんて聞いてない!
グツグツのシチューになった心に吹く爽やかなそよ風、それは億泰。「俺だってあんなこと言われたことねーのに!」 うんうん、俺ら視聴者だって能登さんにコクられたりしねーよ。

「あたしのようなカワイクない女の子、嫌いでしょうね」
「チクショー、カワイイよお〜」
「康一くん、ここ最近 急に顔が引き締まりました」
「俺だって引き締まってるよな〜仗助」

コッソリ覗きながら由花子の言葉をいちいち拾いに行く億泰、第四部トップの萌えキャラだ。大丈夫、男子ファンには愛されてるって!

「愛してるの?愛していないの?さっさと答えてよ!」

山岸由花子は今で言う「ヤンデレ」。相手のことを恋い慕うあまり、心を病んでしまったキャラだ。2005年前後にその用語はぼちぼち出てきたが、すでにジョジョ第四部(連載は1992年〜)に大先輩がいたのだ。
一晩で手編みのセーター、骨を一本ずつトゲ抜きしたヒラメのムニエル、重すぎる愛……康一くんの「どおおしよぉ〜っ!!」とテンパった心を映し、新鮮なエビが芋虫のように不味そうで素晴らしい。
他の漫画に「貴様の愛は侵略行為」という名フレーズがあったが、山岸由花子はまさにそれ。その火ぶたは、康一くんのゴミ捨てを手伝った学級委員の女子に切って落とされる。頭がチクっとしたと思ったら、焼却炉から引火させた上に救けを求める舌まで縛りつけるエグさ。髪のスタンド「ラブ・デラックス」のしわざだ。
ガオン!と学級委員子(仮名)のピンチを髪ごと削り取った億泰は、「ぜーたくは言わせねーよ、丸焼けになんのを俺は助けたんだぜーっ!」とつれない。そこで優しくフォローすればモテるのに、さすが俺たちの萌えキャラ。
それに引き換え「今考えなきゃあなんねーことはよお〜彼女の恨みを買わねー方法だよ……」と明らかに体験談に基づいてアドバイスする仗助。きさま!女子にコクられ&別れ話に慣れてるなッ!

ジョジョとスティーブン・キング作品


万引きをしただのカンニングをしたの、仗助たちに悪い噂を流してもらい、由花子に「男らしくない男」と思わせようとした康一くん。が、その夜、窓には黒髪をなびかせた悪夢がベッタリ貼りついていた。「あたしのために立派な男の人」に育てたい教育ママ・由花子に、ダメ男作戦はやりがいを与えるだけだった……。
男性の才能(将来性)に惚れ込んだ女性が拉致・監禁して、ときに献身的に、ときに狂気を暴走させる。あらすじだけを取り出せば、映画化もされたスティーブン・キングの小説『ミザリー』そっくりだ。
原作者は『荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論』という新書を出しているホラー映画好きだが、その中で「スティーブン・キング・オブ・ホラー」という章を設けるほどのキング好きでもある。
そもそもスタンドの由来は「そばに現れ立つ」=キングの『STAND BY ME』からで、「空条」承太郎も小説『クージョ』から。第三部で登場した車のスタンド「運命の輪」も、破壊されても自己修復する車のホラー『クリスティーン』が元ネタだろう。死んだ人間が土から蘇って凶暴化する「審判」(カメオ)はペットがゾンビになる『ペットセメタリー』、斧でドアをぶっ壊した穴から顔をのぞかせたアレッシーは『シャイニング』のジャック・ニコルソンにしか見えない。
第四部では、スタンド入り牛乳を配達しかけたアンジェロは『ミルクマン』(小説では毒蜘蛛)、虹村形兆のバッドカンパニーはおもちゃの兵隊が主人公を襲う『戦場』。読んでから見るか、見てから読むか…往復すると面白さが加速するキング小説×ジョジョ。
そして荒木先生が選ぶ最高のキング映画は、さっきも触れた『ミザリー』。以下、ご本人に語っていただこう(『ダ・ヴィンチ』2012年8月号より)。

「僕が思うサスペンスの、完璧な形ですね。好きだからというより、勉強のために今でも読み返しています。作家が熱狂的なファンに監禁され、小説を書かされるという話なんですけど、主人公がどんどんどんどん追いつめられていく過程が本当に面白い。こういうパターンの場合、“逃げればいいじゃん”って読者に思わせちゃダメなんですよね。そう思わせないための演出というか手続きが、絶妙なんですよ」

不法侵入した他人の別荘に監禁され、英語のテスト16点(彼女のプレッシャーのせい!)が見つかって英単語カードのコーンフレークを食べさせられそうになり、髪にスタンドをしこまれて逃げられない康一くんの追い詰められる過程が面白い! ちと気の毒だが、前後編ということで、次回もじっくり描かれる災難が楽しみでたまらない。