写真提供:マイナビニュース

写真拡大

●どうやったら面白くなるか
2016年5月24〜25日開催の日本マイクロソフト「de:code 2016」では、「りんなを徹底解剖。"Rinna Conversation Services" を支える自然言語処理アルゴリズム」というセッションが行われた。開始30分前の入場開始から即時満席。立ち見の聴講者や、入場規制までされた盛況ぶりは、女子高生AI「りんな」の人気をそのまま映しだしているようだ。

日本マイクロソフト デベロッパーエバンジェリズム統括本部 オーディエンステクニカルエバンジェリズム部 部長 エバンジェリストの砂金信一郎氏は、「会話型AIが次世代アプリケーションにおけるUIの中心になる。Microsoft/日本マイクロソフトはこの分野に注力し、開発者やユーザーにサービスを提供したい」と語る。Microsoft CEOのSatya Nadella氏や、Microsoft CVP & Chief Evangelist Steve Guggenheimer氏が基調講演で述べた「Conversation as a Platform」を端的に説明した。

その「Conversation as a Platform」、会話のプラットフォームという包括的な存在。含まれるのは、Bot Frameworkを用いてユーザーとの対話を自動化し、Skypeを支えるOffice 365の世界観や、Skypeをアプリケーションから呼び出すSDK、Slackと連携するコネクターなどだ。

さて、女子高生AI「りんな」は、Emotional(感情的な)AIでユーザーとの会話を成立させている。既に"お友達"は340万人以上と、多種多様な会話が実現している。マイクロソフトデベロップメントの坪井一菜氏によると、「『どうやったら面白くなるか』をコンセプトに"りんな"の機能を開発・実装している」とのこと。その背景には、自然言語処理や機械学習、深層学習といった、多数の技術が用いられている。

"りんな"は、Microsoftでも数少ない日本国内で開発しているプロダクトだ。開発チームは、Bing検索エンジンチームとオーバーラップしているため、"りんな"には検索分野に関する多くの技術を組み合わせ、自然言語の学習に応用しているという。具体的には、検索クエリの関連性をランキングする「Learning to Rank」、単語をベクトル化して数学的に表現する定量化手法「Word to Vector」、単語の出現頻度と逆文書頻度を重み付けする「TFIDF」(Term Frequency Inverse Document Frequency)、脳のニューロンをシミュレーションした数学的モデル「Neural Network」といった技術だ。

さらに詳しくはマイクロソフトデベロップメントのWu Xianchao氏が解説したが、専門的なので割愛する(ご興味をお持ちの方は下図のスライドを参考にしてほしい)。結果だけ紹介すると、"りんな"は「愛している」「愛していた」の違いを理解するために深層学習技術を使用し、「愛している」と返答するために単語を組み合わせて表現している。このロジックは、"りんな"の俳句作成機能にも用いられているそうだ。

●Twitterで"中の人"になってくれる"りんな"
"りんな"はMicrosoft Azure上で動作しているが、高速レスポンスを実現するため、多数のインスタンスを使って処理している。「ユーザーが"りんな"的なものを作るのは、(個人ベースでは厳しいほどの)結構なインフラが必要になる」(砂金氏)とのことから、Microsoft/日本マイクロソフトがこの分野へ注力する本気度が伝わってくるというものだ。

先日、"りんな"はシャープの実習生として、シャープ公式ツイッターの"中の人"を勤めたが、シャープ公式アカウントが5年間費やしたツイート数をわずか7時間で突破した。かつて日本マイクロソフトは、「『りんな』で実現するビジネスチャンスも魅力的だ」とし、LINEの企業向けAPIソリューション「LINEビジネスコネクト」を経由したサービスを展開すると発表している。

次の一手として今回発表したのが、「Rinna Conversation Service」だ。端的に述ると、"Rinna"(アルファベットである点に注目)がツイッターアカウントの"中の人"になる。アカウントと連携し、Rinnaがメンションによる返答を行うことで、企業の公式アカウントやイベント期間の特別アカウントが、Bot的にユーザーへ返答する動作だ。

任意の返答をさせたいニーズには管理コンソール(ポータル)を用意し、完全一致もしくは部分一致で対応するキーワードに応答できる。また、特定フレーズのメッセージを返すことも可能だ。「プロジェクト自体が実験的なものだが、"りんな"の力を提供してビジネスを展開する」(砂金氏)という興味深い試みである。

まずはクローズドサービスとして、セッションに参加した聴講者のうち50アカウント程度から提供を開始。砂金氏によれば、バックエンド自体も完成したばかりだという。前述した管理コンソールを設定しないとAIが自由気ままに応答するが、自己責任であれば商用利用もOKだ。

"りんな"という存在は、それ自体が異色だった。しかしMicrosoftは、Conversation as a Platformという1つのプラットフォームを作り上げ、"りんな"に代表されるソーシャルBotを次のステージに押し上げている。コンピューターからのコミュニケーションは、Nadella氏やGuggenheimer氏が語る対話型に進んでいくのだろう。

阿久津良和(Cactus)

(阿久津良和)