サッカーダイジェスト代表担当記者による選出メンバーのポジション別序列。CF、左ウイングは絶対的な存在がいない状況だ。

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 5月26日、日本協会はキリンカップに臨む日本代表のメンバー25名を発表した。
 
 5年ぶりに開催される同大会に参戦するのは、ブルガリア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、デンマークという欧州の実力国だ。大会はノックアウト方式で行なわれ、6月3日に準決勝2試合が実施されて、日本はまずブルガリアと対戦。同7日に3位決定戦と決勝戦が予定されており、デンマークかボスニア・ヘルツェゴビナと戦うことになる。

【PHOTO】キリンカップ2016に向けた日本代表メンバー25人
 
 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は「大きな野心と真剣さを持って臨まなければならない」と意気込みを語る。9月から始まる最終予選を見据えて「良いテストになると思う」とコメントし、「(最終予選は)簡単なグループではない。我々はいろいろなことに“気付かなければいけない”」と言葉に力を込めた。
 
 発表されたメンバーは、3人のGKと、ふたりの初招集を含む22人のフィードプレーヤーの計25人。以下、基本システムの4-3-3に沿って、各セクションの序列を考察していく。

 
【GK】
◎西川周作(浦和)/○川島永嗣(ダンディー・ユナイテッド)/○東口順昭(G大阪)
 
 実績では川島が群を抜いているが、ここ最近は代表での貢献度は決して高くなく、クラブでも充実のパフォーマンスを見せている西川をレギュラー筆頭にした。
 
 ただ、ハリルホジッチ監督は「優先順位は付けていません。競争してほしいと思っています」と明かす。誰がレギュラーポジションを掴むのか――「そうみなさんに聞かれても、私も分かりません」と、3人は横一線であることを強調した。
 
 すべてのポジションに当てはまることではあるが、GKはとりわけ、スタメンを勝ち取るには試合までのトレーニングでいかにアピールできるかが鍵になりそうだ。ちなみに、西川はFCソウルとのACL決勝トーナメント1回戦セカンドレグで、PK戦の5人目のキッカーを務め痛恨の失敗に終わっているが、ハリルホジッチ監督は「A代表では絶対に蹴らせません(笑)」と語っている。
 
※凡例:◎=スタメン候補 ○=準レギュラー △=三番手
 
 
【DF】
CB:◎吉田麻也(サウサンプトン)/◎森重真人(FC東京)/○昌子 源(鹿島)/△丸山祐市(FC東京)
右SB:◎酒井高徳(ハンブルク)/○酒井宏樹(ハノーファー)
左SB:◎長友佑都(インテル)/○槙野智章(浦和)
 
 次にDFを見ていくと、選ばれた8人の顔ぶれはほぼ順当と言ってもいい。ただし、3月シリーズのメンバーから左SBの藤春が外れ、CBの丸山が新たに入った。この入れ替えと並行して、そのユーティリティ性からコンバートを考慮されているのが槙野だ。
 
「今回、槙野には左SBで競争してほしいと思っている」
 
 このポジションの候補者として、藤春や太田宏介(フィテッセ)の名前をハリルホジッチ監督は挙げたが、ふたりに関しては「オフェンス面は素晴らしいものを持っている」としつつも、守備面に関してはやや物足りなさを感じているという。
 
 最終予選はより厳しい戦いになる。攻め込まれる場面は2次予選に比べて多くなることが予想されるなかで、守備強化を考えて槙野に白羽の矢が立ったのだろう。左利きの丸山をコンバートさせる手もあるが、槙野には左SBでのプレー経験があることも決め手になったようだ。
 
 右SBは、所属クラブが降格の憂き目に遭うなど「難しいシーズンを送った」(ハリルホジッチ監督)酒井宏より、昨季は新天地でレギュラーを掴み、さらに自信を深めた酒井高を一番手に。
 
 CBは、3月シリーズの2試合(アフガニスタン戦、シリア戦)でともに先発してコンビを組んだ吉田、森重が今回もファーストチョイスになるはずだ。これに昌子、丸山が続く形だが、両者の優劣をつけるとすれば、「デュエル(1対1の勝負)が向上している印象がある」と評価される昌子だろう。
 
【MF】
ボランチ:◎長谷部誠(フランクフルト)/◎柏木陽介(浦和)/○遠藤 航(浦和)/△大島僚太(川崎)
トップ下:◎香川真司(ドルトムント)/○清武弘嗣(ハノーファー)/△小林祐希(磐田)
 
 中盤では、ボランチとトップ下、それぞれで若いタレントが初招集された。
 
 ボランチには、U-23代表の一員で、リオ五輪出場も期待される大島を選出。リーグの優勝戦線をリードする川崎でも存在感を発揮しているプレーメーカーは、「2列目から飛び出せるし、パスのテクニックもスピードもある」のはもちろん、「アグレッシブなボール奪取。そこが伸びている」と、指揮官も着実なステップアップを認めている。
 
 そしてトップ下候補として、昇格組の磐田でインパクトのある活躍を見せている小林がA代表入りを果たした。大島と同様、この小林もハリルホジッチ監督は「長い時間をかけて追跡してきた」選手だという。攻撃に絶妙なアクセントをもたらせる左利きのテクニシャンであり、「フィジカル的にまだまだ伸ばせるのではないか」と、さらなる成長が期待されている。
 
 もっとも、ふたりの“新顔”がいきなり初キャップを刻めるかは分からない。むしろ、実際のピッチ上での結果を求めるよりも、まずは手元に置いて、練習などを通じてその実力の見極めが優先されるのではないか。
 
 ボランチはキャプテンの長谷部を軸に、その相棒は「彼のことは本当に信頼している」と言われる柏木だろう。ここに手倉森ジャパンの主将を務める遠藤がどこまで割って入ることができるか。
 
 トップ下は、A代表の経験で上回る香川が清武を一歩リードしている構図だが、ハリルホジッチ監督はふたりの同時起用も示唆している。
 
※凡例:◎=スタメン候補 ○=準レギュラー △=三番手
【FW】
CF:○岡崎慎司(レスター)/○金崎夢生(鹿島)/△浅野拓磨(広島)
右ウイング:◎本田圭佑(ミラン)/○小林 悠(川崎)
左ウイング:○原口元気(ヘルタ・ベルリン)/○宇佐美貴史(G大阪)
 
 実力的に岡崎がCFの絶対的なレギュラーであるのは事実。ただし、レスターの奇跡の優勝を受けて様々なクラブでの活動があり、「どんなフィジカル状況で、プレーできるかどうかは分からない」とハリルホジッチ監督は一抹の不安を抱えている。二番手の金崎に関しても、「クオリティは高いが、コンスタントさに欠けるだけに、ちょっと疑問がある」と正直な感想を述べる。
 
 つまり、今回のキリンカップに限定すれば、CFの序列は現時点で最も流動的だと言えるかもしれない。それだけに、経験値は3人の中で最も低いが、「将来のA代表に絶対に必要」と指揮官がその才能に惚れ込んでいる浅野の大抜擢があってもおかしくはないだろう。
 
 左ウイングも決め手に欠けるポジションだ。宇佐美がG大阪で持てる能力を存分に発揮できていればなんの問題もないが、「クラブでは難しい状況にいますね。もっとやってほしいし、私の要求は完璧に知っているはず」と、ハリルホジッチ監督も辛抱強く“完全復活”を待つ構えでいる。
 
 一方の原口に関しては、「中盤でも競争しなければならない」と、複数のポジションでの働きを要求している。ただし、「フィジカルだけでなくメンタルも疲労しているはず」とハリルホジッチ監督は見ており、コンディションをしっかりと見定めて起用するつもりでいるようだ。状態が上がってこなければ、途中出場が多くなるだろう。
 
 右ウイングは、絶対的な存在である本田の地位は揺るがない。
 
「ミランとA代表では違うポジションでプレーしてもらわなければいけません。我々はFWとして考えています」
 ハリルホジッチ監督からのオーダーに応えなければならないという難しさはあるかもしれないが、それは今に始まったことではない。
 
 今大会でも勝負の命運を握る選手として大きな期待がかかる男に、クラブで好調をキープする小林が挑む。
 
※凡例:◎=スタメン候補 ○=準レギュラー △=三番手
 
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)