写真提供:マイナビニュース

写真拡大

キリンが適正な飲酒習慣とバランスのよい食生活をサポートするスマートフォン向け無料アプリの配信を開始した。食事や飲酒などに関する情報を打ち込むユーザーにアドバイスを送り返すアプリで、場合によっては酒量を抑えるよう促すことも辞さない。アルコールの販売と適正な飲酒習慣の支援。一見、矛盾する関係だが、本業にマイナスの影響を及ぼしかねないアプリをキリンが配信する狙いとは。

○顧客の健康管理をサポート

キリンのアプリ「KIRIN お酒と食事の健康サポーター(キリン健サポ)」は、食事、飲酒、運動、体重を入力すると、即座にアドバイスがもらえる。アドバイスの内容は、食事の良かった点、反省点、次の食事についての助言など。キリンは摂取カロリーや栄養素のバランスなどに応じた約200万通りのアドバイスを用意しているという。開発に際しては、約7,000人の管理栄養士・栄養士を擁するリンクアンドコミュニケーションに監修を受けた。

ユーザーは自身の食事や飲酒の情報を、あらかじめ登録されているメニューから選んで打ち込む。実際に使ってみると、用意されている選択肢は豊富で、かなり詳しく自分の情報が反映できそうに感じた。

食生活や運動習慣を記録するアプリは多いが、飲酒に関するデータを反映させられるのはキリンならではの特徴だ。例えばビールを中ジョッキで何杯といったように、ユーザーは飲酒に関する詳細な情報を入力できる。

○飲酒を控えるよう助言する理由は?

不思議なのは、このアプリにアルコールの消費を抑えるような機能が備わっていること。酒量にもよるが、このアプリはユーザーに対し、飲み過ぎだとアドバイスしたり、休肝日を設けるよう促したりする。アルコールを販売するキリンが、顧客の適正な飲酒習慣を後押しするのはなぜだろうか。

「(顧客に)元気に暮らしてもらうことで成り立つ商売」。林田氏はキリンのビジネスをこう表現する。休肝日を設けず、一度に多くのアルコールを消費するのが優良顧客だという気もするが、キリンは健康管理アプリを配信し、健康的な飲酒習慣を支援することで、顧客との「長い付き合い」を構築する方を選択した。長い目で見ると、こちらの方がアルコールの販売数量にもプラスになると考えているようだ。

○ビジネス面の影響はいかに

顧客との長い付き合いを構築する以外に、キリンがアプリに期待するビジネス面の効果はあるのだろうか。「(このアプリを配信することで)直接的に、すぐに特定の商品の売上につながるということは考えていない」(林田氏)とのことだが、特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品などを手掛ける同社は、健康意識の高い消費者に訴求したい商品を豊富に取り揃えている。アプリを使っていると、キリンの商品を紹介し、ECサイトへと誘導するページが表示される場合もあるため、アプリ経由でキリン商品を買うユーザーも出てくるだろう。

林田氏はユーザーから得られるビッグデータを活用する可能性についても言及した。アプリ経由で取得できる情報は、新商品の開発や新素材の探求などに役立つかもしれないという。

○若者のビール離れに効果も?

もう1つ、アプリを配信することでキリンが狙うのは、「(顧客に)近しさを感じてもらう」(林田氏)ことだ。アプリを通じて顧客の生活に食い込み、キリンとの親しさを感じてもらおうというのだ。

このアプリが浸透すれば、キリンは顧客との有効なタッチポイントを獲得することになる。アプリを担当したキリンCSV推進部の山本恵莉氏によると、アプリのメインターゲットは自身の健康面を気にし始める30代以上だが、SNSを通じた情報発信などにより、若者を含めた幅広い層にアプリの有用性を訴えていく方針だという。

山本氏にアプリの今後について尋ねると、コミュニティのような機能を持たせることや、ゲーム性を取り入れることも検討中との答えが返ってきた。ビール離れが進む若者との接点を増やすことは、いまやビール業界全体の課題となっている。アプリにSNS的な要素を持たせるなど、面白さの部分を若者に上手く伝えることができれば、キリン健サポはキリンと若者をつなぐツールの1つになるかもしれない。

(藤田真吾)