ローランギャロス(全仏)2回戦で、第5シードの錦織圭(ATPランキング6位、5月23日付、以下同)が、アンドレイ・クズネツォフ(40位、ロシア)を、6−3、6−3、6−3で破り、2年連続で3回戦に進出した。

 第1セット第3ゲームで、「(錦織の浅いボールを)ステップインして、クロスにたたいてきた」と錦織が語ったように、クブネツォフが、得意のフラット系のストロークで早めに展開し、錦織のミスを誘って先にブレークに成功した。

「(クズネツォフとは2010年イーストボーン大会以来)久しぶりの対戦で、様子を見過ぎていた。(第1セット)1−3になってまずいな」と反省した錦織は、トップスピンを多めにかけたり、ボールの軌道を少し高く山なりにしたり、ストロークのペースを落として、単調なリズムにならないようにした。軌道修正をした錦織は、第6ゲームでブレークバックに成功して、試合の主導権を取り戻した。

 この軌道修正を「なかなか男としては、つらい判断でしたけど(笑)。どちらかというと、思い切りバンバン打って勝てたら一番いいです」と冗談も交えながら振り返ったが、もともと戦術眼に長けている錦織は、相手によって戦い方を柔軟に変えていくのを得意としている。錦織がワールドテニスツアー屈指のショットメーカーといわれているゆえんでもある。

 第2、3セットに入ると、錦織は得意のフォアハンドストロークやバックハンドストロークのダウンザラインを思い切り打ち込み、実力の差を見せつけて、ストレートで2回戦を勝ち上がった。

 今回のローランギャロスで、錦織は1回戦も2回戦もストレート勝ち。捨て身で立ち向かってくる下位選手に対し、トップ10プレーヤーとしての安定感、格の違いを感じさせる。

「グランドスラムは(試合が)1日おきで休めるので、フィジカルも2日後には大丈夫だと思います」と錦織が語るように、大会の序盤戦では、試合を短くして疲労を蓄積させないようにし、ギアを上げるべきグランドスラム第2週での試合に臨むのが、上位シード選手としての理想的な戦い方だ。

 また、ロビー大橋トレーナーと取り組み、トーナメント中にもトレーニングを取り入れて、フィジカル強化に取り組んでいる効果も少しずつ出ているのかもしれない。

「自然とトレーニングしながら、大事な筋力だったり、よりストロークやサーブにつながるいい体が作れていると思う。ケガも少なくなっている。しっかりウォームアップしたり、試合後の細かいトレーニングをしたりすることによって、体も温まるし、ケガ予防にもなる」

 錦織は手応えを感じている。フィジカルの充実がトップ10プレーヤーらしいハイレベルにある錦織のテニスを支えている。

 全仏優勝者のマイケル・チャンコーチは、「ハードワークのおかげで、良い結果が出ている」と、錦織の成長を認め、「大会中にフィジカルトレーニングをやるのが大切なこと」だと強調した。さらに、今までたびたび発生した錦織の問題を次のように指摘する。

「圭は(遠征に入って)第1週目、第2週目にトレーニングで問題を抱えたことがない。問題は第3週目や第4週目なのです。痛みを伴わないで、大会中に強さを保つことをメインゴールに置いています」

 4月下旬から始まったクレーシーズンでのヨーロッパ遠征では、昨年も今年も、遠征4週目にあたるマスターズ1000・ローマ大会の時点では、疲労の蓄積を否めなかった。錦織がその苦境を乗り切るために、チャンコーチは、ロビー大橋トレーナーの知恵を借りているのだ。ただ、この試みは長い目で取り組んでいきたいと考えている。

「すぐに結果は出ないと思うので、この1年じっくり続けて、大会中にもやれることをやって、少しずつ積み重ねていければ。どちらかというと、将来的にというか、これから大事な2〜3年で、体もできていくと思う」

 3回戦で、錦織はフェルナンド・ベルダスコ(52位、スペイン)と対戦する。2009年4月には、自己最高の9位を記録した32歳のベテランだ。4月にクレー前哨戦となるATPブカレスト大会で、ツアー通算7個目のタイトルを獲得し、調子を上げてきている。対戦成績は、錦織の1勝2敗で、クレーでは2012年ATPバルセロナ大会準々決勝で対戦し、錦織が途中リタイアで負けている。ベルダスコは、左利きのトップスピンのきいたフォアハンドストロークが最大の武器で、錦織は2回戦とはまったく異なるストローク戦になると警戒する。

「(ベルダスコは)ストロークは重く高いボールで、ラファ(ラファエル・ナダル)みたいなプレースタイル。2回戦よりは、自分のより早いペースに持っていきたいけど、タフな相手ですね」

 ラウンドを勝ち上がるにつれて、対戦相手のレベルも上がり、当然厳しい試合が予想されるが、今の錦織なら特に体力が必要とされるローランギャロスでも、存分に実力を発揮できるはずだ。

神仁司●文 text by Ko Hitoshi