連続テレビ小説「とと姉ちゃん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第7週「常子、職業婦人になる」第45話 5月25日(水)放送より。 
脚本:西田征史 演出:岡田健


「勝負は時の運」
「柔力、剛を制す」
これは、常子(高畑充希)の和文タイプライターの練習で、「葉っぱのあんちゃん」(byまつ〈秋野暢子〉)こと星野武蔵(坂口健太郎)が出した例文。
2273もの文字の配置を覚えるためには、ひたすら打って覚えるしかない。昔の人は大変だったのだなあ。
記憶力の良さ=能力の高さ という考え方はどこか偏っているよなあという疑問はさておき。
「顔も知らない人に自分の人生を委ねるってことでしょ、それってなんだか」
これは、常子の同級生 中田綾(阿部純子)の言葉。
親の決めた人と結婚が決まってちょっとこわいが、会えばなんとかなると前向きな綾。
「勝負は時の運」と近い考え方かもしれない。

西田征史の脚本の巧さを感じるのは、綾の結婚話を描いたあとに、常子と武蔵の関係性をじわじわと変化させているところ。
ついに常子は武蔵の部屋に。
下宿先のひと(大島蓉子)にも「葉っぱの学生さん」と認識されている武蔵。花、ではなく、葉っぱ、なんだなあ。それにしても目隠しして、花に顔を近づけている様はやばい。
異性がふたりきりで部屋にという少々の緊張感も描きつつ、ふたりはまだまだうぶな感じ。
高畑充希は黒木華と並んでいい感じに素朴さを出すのがうまい女優である。彼女の「結婚なさる? 聞かない、聞かない」なんて台詞まわしの達者さには、素で勝負しないかなりの演技力なんだろうなあ、などと感心している場合ではない。武蔵は、実家の弟が兵隊に行くことになったので、進路を悩みはじめていると語る。

常子も鞠子(相楽樹)も綾も武蔵もみんな岐路に立っている。この問題を一気にまとめるのも西田征史はうまい。冒頭、野球でアメリカに行った日本人の新聞記事の話題を出して、後半、「あすなろ」(明日は桧になろうという有名な話)の木の話でいい感じにまとめた。
みんなの進路、どうなるんだろうと気になる一方で、兵隊に行くことを「おめでとうございます」「ありがとうございます」と捉える時代なんだ・・・とどきどきしてしまう。
(木俣冬)