“僕はまだまだの選手”…飽くなき向上心を持つU-23代表FW浅野「期待に応える自信はある」

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 対戦相手を震撼させる脅威のスピードスター・サンフレッチェ広島所属のU-23日本代表FW浅野拓磨はプロ入り後、順調にステップアップを果たすと、昨季はJ初ゴールを皮切りに8ゴールを叩き込んでチームのリーグ制覇に貢献し、自身はベストヤングプレーヤー賞を受賞。U-23日本代表の一員としても、16年1月のAFC U-23選手権(リオデジャネイロ五輪アジア最終予選)決勝の韓国戦で2ゴールを奪うなど、アジア王者、そして五輪出場権獲得に貢献した。大きな期待を背負う若き侍は、目の前に立ちふさがる壁を乗り越え、さらなる成長を遂げようとしている――。

先発での2試合連続ゴール

手応えをつかみ始めた矢先の負傷

――リオデジャネイロ五輪が近付く中、5月11日にはガーナとの親善試合で3-0の勝利を収めました。

「チームが勝利できたのは良かったですが、ガーナ戦での僕のプレーは全然良くなかったですね。前線の選手とのコンビネーションのところで、もっと周りを見てワンタッチでさばいた方が良い場面があったし、ターンをしてドリブルに行ってボールを奪われてしまう場面もありました。ボールを失う回数が多かったし、判断のスピードや質を上げていかないといけないと感じました。裏に対する意識は悪いものではなかったけど、裏に抜け出すのか、ボールを受けて仕掛けるのかという使い分けの部分で自分のスピードを活かし切れなかった。ただ、自分のプレーが良くなかったからこそ、もっともっとやらないといけないという思いが強くなりました」

――Jリーグでは相手チームの警戒が強まり、簡単にはスピードを活かす場面を作らせてもらえないように感じます。

「それは、自分としても感じます。プロになったばかりの頃と比べると、相手チームが研究していると思うので難しいと感じるところはありますね。例えば自分が裏に抜けようとしたときの対応ですが、間合いを詰めずにスペースをとって、なかなか裏に抜けるタイミングを作らせてもらえないし、ボールを受けて前を向いて仕掛けるときもボールを取りに来る感じではなく、時間を作って1対1でなく1対2、1対3を作ってボールを奪いに来る状況が増えました。ただ、難しいと感じるところはありますが、その中でも結果を残さないと一流の選手にはなれないと思うので、今の時点では自分がまだまだ未熟なプレーヤーだと感じています」

――ただ、警戒が強まる中でも、ACL(3月16日グループリーグ第3節ブリーラム戦)、Jリーグ(3月20日J1第1ステージ第4節大宮戦)と先発出場で2試合連続ゴールを挙げました。

「今季の出だしは自分の中でも特に悪いとは感じていませんでしたし、2試合連続でスタートから試合に出てゴールを決め、自分の中でもスタートに対しての感覚をつかみ始めていました。ただ、ここからドンドン行くぞと自分の中でも気合いが入った中で、ケガをしてしまった。ようやく、スタートでの手応えを感じていたので、本当にケガをしたのが痛かったし、復帰してからはなかなか思うようにプレーできていない部分もあります。ただ、それも自分の実力なのかなと思うし、ケガをしてしまった時間は戻ってきません。その中でできることは自分の中でもやったので、これから良い状態に持っていきたいですね」

――クラブでもU-23日本代表でも「スーパーサブ」の役割が多い中、先発で結果を残したことで一つ階段を上るきっかけをつかめそうだったんですね。

「今までは途中から試合に出て『流れを変える』『自分が試合を締める』という役割がありましたが、スタートはより緊張感があって難しさを感じていました。その中でも、スタートで出てチームの勝利に貢献できたのは、自分としてもすごく自信になるものでした」

――先発出場だと緊張が大きくなるのですか?

「自分が緊張していると思っていなくても、体が思い通りに動かないことがあります。雰囲気であったり、ピッチに入ってみないと分からないのですが、プロになって初めての感覚で、少し緊張するだけで自分の体のフィーリングが全然違うんですよ。トレーニングマッチでは一歩抜け出せたところで、体が動かなくて反応が遅くなってしまう。ただ、2試合連続ゴールを決めた頃は緊張感も徐々に取れて、ゲームの感覚が良い状態になっている途中でした。ケガをしてその感覚が完全に振り出しに戻ったわけではないので、また感覚を取り戻すことができれば、自分の持てるものをすべて出せるような状態になれるはずです」

――今季から背番号10を背負うこともプレッシャーになりましたか。

「シーズンの最初のころはそういうプレッシャーも感じていましたが、それは徐々になくなっていますね」

――10番は浅野選手にとって、どういう番号でしょう?

「自分にとって10番はファンタジスタが着けるイメージで、FWがあまりつける番号ではないと思っていました。でも、広島の歴代の10番を見ると、(高木琢也、久保竜彦、ウェズレイなど)ストライカーと言われる選手が着けている時期が長かったので、10番の話を頂いたときに、今までのストライカーの人たちに負けないくらいの選手になりたいと思った。ただ、僕はずっと11番が好きだし、特に広島の11番は特別な番号だと思うので、正直11番をつけたいという気持ちがあります。だから(佐藤)寿人さんからポジションを奪い、いつか自分が譲り受けられる選手になりたいと思っているので、10番を着けて少しでも11番に近付こうという思いがあります」

「すごかった」と言われるが

貢献できたのは韓国戦だけ

――1月のリオデジャネイロ五輪アジア最終予選では見事に優勝を飾り、リオ五輪への切符を手にしました。今振り返ってみて、どのような大会でしたか。

「自信を持って臨んだ大会でしたが、初戦から多くの選手が得点を決める中、僕はなかなかゴールを決められず、チームの勝利に貢献できていないとずっと感じていました。チームメイトが活躍する姿を見て、『自分もまだまだの選手なんやな』と改めて思いましたが、そこで下を向くわけではなく、もっともっと頑張らないといけないと前向きな気持ちになれた。周りの選手から刺激を受けたし、良い意味で自分の力の無さを感じられた大会だったと思います」

――ただ、決勝の韓国戦では2ゴールを奪い、チームを勝利に導きました。

「日本に帰ってきてからも『すごかったね』と言われますが、韓国戦だけなんですよね、自分が何かできたのは。決勝戦だけ、いいところ取りをしてしまったけど、大会を通してチームに貢献できたとは言えません。ゴール以外にもチームの勝利に貢献できますが、FWとしてピッチに立っている以上、やっぱりゴールが一番大きな仕事です。『自分はチームを引っ張る立場ではなく、追い付いていかないといけない立場なんや』と感じたからこそ最後まで諦めず、たとえ点が取れなくても『次こそは。次こそは』と考えていたし、五輪出場が決まった準決勝までゴールがなくても、『あと1試合残っている』と前向きに捉え、『最後の試合でゴールを奪ってヒーローになるのは自分や』と強く思って決勝に臨みました。だから、韓国戦で2ゴールを決めてチームの勝利に貢献できたことで、自信がついた部分もあります」

――帰国後の反響も大きかったですし、期待の大きさも感じたと思います。

「リオ五輪の出場権を獲得して、アジアチャンピオンになれたこともあり、帰国後のキャンプやJリーグの試合でたくさんの人が期待してくれているのは自分でも感じました。ただ、僕はそこまですごい選手ではないし、まだまだの選手。だから、期待をプレッシャーに感じることもあります。期待してもらえることや、『ジャガー』と言われるのはすごくうれしいですが、『まだ僕はそこまでの選手ではないんや』と思う自分もいるんです。ただ、その期待に応える自信はあるので、早く、そのプレッシャーに打ち勝って結果を残せる選手になりたい」

――アジア最終予選前は「勝てないチーム」とも呼ばれていました。

「チーム全体としてはどうだったか分かりませんが、僕はどちらかというとその評価がプラスに働いたと思っています。前評判があまり良くないのは分かっていたし、僕たちは100パーセントのチャレンジャーだと思って大会に臨めた。守る側ではなく奪いに行く側、獲りに行く立場だったので、ここで良い結果を残せばいいじゃないかと前評判は気にせずに大会を楽しみにしていましたね」

――アジアチャンピオンとなり、本大会での組み合わせ抽選では第1ポッドに入ったことで、意識的には守る側になってもおかしくないと思いますが。

「そういう意識は全然ないですね。世界と比べればアジアのレベルはまだまだ高いとは言えないので、アジアではチャンピオンになりましたが、特に構えることはありません。五輪に行けば僕たちよりもすごい国ばかりで、また追い掛ける側だと思っているし、最終予選のときのようにチャレンジャーの立場で本大会に挑めると思います」

――本大会まで残された時間は決して多いとは言えません。

「時間は限られていますが、Jリーグ、トゥーロン国際大会に親善試合と本大会までに行われるすべての試合でゴールという結果を残したいという思いがあるし、そうしなければメンバーに入り込んでいけないと感じています。まずは目の前の試合に対して、すべての力を注いでアピールできるように、毎日毎日100パーセントで臨んでいこうと思います」

――新しい相棒となるマーキュリアルの新作『マーキュリアル スーパーフライ V』を履いた印象はいかがですか。

「『マーキュリアル』は軽くて、フィット感がすごくあるので、スピードを武器にする僕には抜群に合うスパイクですね。切り返しのときとかにスパイクの中で足がちょっと動いただけでも、スピードがコンマ何秒か落ちてしまう感覚があるのですが、『マーキュリアル』はすごくフィットしていて、横ズレしないのでストレスなくプレーできます。新しいモデルはポイントが変わりましたが、より芝に食い込むようになっているので、切り返しもしやすいし、他のスパイクよりも『グッ』と加速できる感じです」

――スパイクが芝に食い込むとスピードは出やすいものですか。

「芝に食い込むと切り返してもスピードが落ちない感覚です。FWクリスティアーノ・ロナウド選手(レアル・マドリー)のプレーを見てもらったら分かると思いますが、切り返しの部分で相手と差をつけているんですよ。当然、C・ロナウド選手の能力が高いというのはありますが、切り返しのときにスピードが落ちないというのは大きい。初めて『マーキュリアル』を履いたときから、切り返しの部分やクイックの動きは抜群に良いと思っているし、カラーリングも派手で格好良いので、目立ちたがり屋の僕としては最高のスパイクですね。このスパイクで相手と差をつけて、五輪でゴールを決められれば最高やなと思っています」

――最後に改めて五輪への思いを聞かせて下さい。

「小さい頃から一つの目標にしていた大会なので、『やっとここまで来たな』という感覚です。小学生の頃から『出たい』と思っていた大会だけど現実的ではなかったし、まさか自分が本当に五輪に出場できるかもしれないという位置までくるとは思っていなかった。ただ、そうやって小さな頃から夢見ていた大会が目の前まで来ているので、まずは絶対にメンバーに入れるように頑張り、メンバーに入ったら、自分が活躍している姿を日本の皆さんに届けられるように全力を尽くします」

(取材・文 折戸岳彦)


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