トゥーロン国際トーナメントに出場しているU−23日本代表は、グループリーグ第2戦でポルトガルに0−1で敗れた。これで日本の通算成績は2戦2敗となり、自力でのグループリーグ突破の可能性が消えた。

「今日は選手の気持ちが、前へ前へ行ってくれた。『負けはしたが、内容には満足している』と選手たちには話した」

 試合後、手倉森誠監督がそう振り返ったように、初戦に比べると、日本の選手たちは落ち着いてゲームを進めることができており、特に後半はほぼ一方的に日本が攻め続けた。

 また、明らかなミスジャッジと言っていいレフェリーの判定にも苦しめられた。後半23分のポルトガルDFのハンドが見落とされなければ、少なくとも日本には1本のPKが与えられ、日本が同点に追いついていた可能性は高い。

 こうした事情を察すれば、指揮官の「内容には満足」の言葉も分からないではない。

 しかし、ポルトガルにしてみれば、1−0で勝っているからこそ、ある程度守備に徹し、日本に攻めさせた面があることは否めない。仮にどこかで日本が1点を返し、1−1の同点になっていたら、その後の試合展開はどうなっていたか分からない。それがサッカーというものだ。

 実際、グループリーグ第1戦のパラグアイ戦では、日本は0−1で負けていた後半開始からの20分ほどは迫力ある攻撃を展開したものの、1−1に追いついてからは再び相手に押し込まれ、FKで決勝点を奪われている。

 やはり結果的に無得点に終わっていることから考えても、本当に満足していい試合なのかどうかは疑問が残る。

 しかも、相手のポルトガルは、今大会の登録メンバー20名全員が1996年以降生まれの"U−20ポルトガル代表"である。加えて、ポルトガルはすべて中1日での3試合目だったのに対し、日本は2試合目。日本には日程的なアドバンテージもあった。

 にもかかわらず、日本は相手のパスワークに守備組織が完全に崩されて先制点を与え、最後まで追いつくことはできなかったのだ。ある意味、内容で相手を上回るのは当然のことで、そこに満足していい試合ではない。

 今大会、日本が勝ち星から遠ざかっている最大の要因は、得点力不足にある。いずれも年下のチームと対戦し、2試合で計1点しか取れないのでは寂しすぎる。

「僕の決定力不足が敗因になった」

 ポルトガル戦後、FW浅野拓磨は負けの責任をすべて背負い込むように、そう語った。

 確かにこの試合、浅野にはいくつかのシュートチャンスが訪れたが、ひとつも決めることができなかった。

 しかし、そうした場面のほとんどは、浅野が自分をマークする相手DFとのギリギリの争いのなかで、独力でどうにかシュートまで持ち込んだものだった。

 要するに、チーム全体で攻撃を組み立てるなかで、最後に浅野がDFラインの裏に完全に抜け出し、目の前にいるのはGKだけ、というような決定的なチャンスを作れているわけではないのだ。

 1月に行なわれたリオデジャネイロ五輪アジア最終予選(アジアU−23選手権)の韓国戦では、一撃必殺の武器となった浅野のスピードも、このレベルになると絶対的なものにはなりえない。ただ単純にDFラインの裏へボールを蹴って、ヨーイドンで浅野が走るだけでは決定機を作るのは難しい。

 浅野の存在は、今大会でも間違いなく相手にとっての脅威となっている。だが、このレベルになると、それだけに頼って得点できるほど圧倒的な速さではない。

 裏を返せば、浅野のスピードという最大の武器を、チーム全体でどう生かすか。そこに日本の得点力アップのカギがある。浅野が語る。

「元々自分のスピードを生かすことには常に自信を持っているし、(相手が強くなったからといって)何かを変えるというよりは、自分が持っているものをすべて出すことが、ゴールに一番つながる方法だと思う。今のところ、まだゴールまで行けていないが、裏への意識や相手との駆け引きは、そんなに悪くないと自分でも手応えを感じている」

「ジャガー」の異名を取る日本のスピードスターは、「ただ」と言葉をつないで、こう続ける。

「自分の動きやパスのクオリティ、パスの出し手とのタイミングを、チーム全体でもうワンレベル上げていけば、もっともっとスピードも生きると思うし、そこからのシュートも増えると思う」

 ポルトガル戦にボランチとして出場した、MF井手口陽介も、「最後のところで、もう少しクオリティの高いプレーができていたら、確実に2、3点は取れていた」と悔しがり、こう話す。

「全部が全部(浅野を)狙っていたら相手も分かりやすいので、一発のパスで拓磨くんを狙うのではなく、崩すためにはもっと工夫して攻める必要がある」

 井手口の言う「工夫」とは、例えば、ポルトガル戦の前半にそのヒントがある。

 日本は強風の風下となった前半、あえて長いボールをDFラインの背後に蹴り、浅野を走らせ、相手にカットされても中盤がセカンドボールを拾って、今度は足下へのショートパスを中心にした地上戦で二次攻撃を仕掛けた。

 日本は立ち上がりから後ろから前へ、上から下へと、相手に揺さぶりをかけながら攻撃を続けた。その成果がひとつの形となって実を結んだのが、38分に浅野の左足シュートがゴール左ポストを叩いた場面である。井手口が続ける。

「僕たち中盤がセカンドボールを拾えたら二次攻撃ができるし、パスを出しただけで終わるのではなく、出した後にセカンドボールを全部拾えればいい。(ポルトガル戦前半は)効果的に攻撃できたと思う」

 足の速い選手をDFラインの裏に走らせて、単純に長いボールを蹴るだけでは崩せない。かと言って、スペイン代表やバルセロナのごとく、足下でつなぐパスワークだけで崩し切るのも難しい。

 バイタルエリアにスペースがないのなら、ボランチがドリブルでボールを前に運んだりすることも必要だろう。そうすることで、守備を固める相手も引っぱり出されてスペースが生まれる。スペースが空けば、浅野のスピードはもっと生きる。

 そして中盤からの縦パスをスペースが空いたバイタルエリアに入れ、ワンタッチでパスをつなぎ、攻撃がスピードアップしたところで浅野にラストパスを通す。そんな流れが、理想のフィニッシュのイメージだ。

 浅野を警戒するあまり、相手DFラインが下がるようなら、積極的にミドルシュートを打ってもいい。相手にとって明らかな脅威である浅野のスピードを効果的に生かすことは、結果として攻撃のバリエーションを広げることにもつながる。浅野は言う。

「相手も(自分のスピードを)意識してくるし、なかなかスペースがない試合もあると思うが、そのなかでも一瞬の駆け引きや1本のパスで勝負が決まる。パスが通らなかったり、オフサイドになったりしても、僕は常に裏を狙い続けることが大事だと思うし、そのうちの1本がゴールまで結びつけばいい。何本ミスがあっても、ゲームのなかでみんながめげずに、自信を持ってやり続けることが大事になると思う」

 すでに2敗を喫した日本は、グループリーグ敗退が濃厚。それでも残り2試合、リオ五輪本番へ向け、手の中にしっかりと残る手応えをつかんで帰りたいところだ。

 浅野のスピードを最も効果的に生かすには、チームとしてどうすればいいのか。

 今大会でその問いに対する確かな答えを見いだせたとき、U−23日本代表は世界と戦うための強力な武器を手にするはずである。

浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki