激安の豪邸に住んだら、庭に白装束の人たちが現れた【シングルマザー、家を買う/51章】
<シングルマザー、家を買う/51章>

 バツイチ、2人の子持ち、仕事はフリーランス……。そんな崖っぷちのシングルマザーが、すべてのシングルマザー&予備軍の役に立つ話や、役に立たない話を綴ります。

(前回のお話)
昔、夫の転勤に伴い、一家で地方の豪邸のような一軒家に住むことに。月9万円という安さに喜びつつも疑問を抱いた矢先、ベランダに血まみれの白いハトの死体を見つける。気味の悪さに怯えながらも、安さに惹かれてそのまま住むことにしたのだが……。

◆白いハトの次は白装束

 夢にまで見た庭付き一戸建てに引っ越してきてから1週間。早くも事件は起こった。

 その日、新しい土地で仕事もなく、専業主婦として過ごしていた私は、元旦那を送り出すと、まだ2歳と0才だった子供たちと一緒に二度寝をすることにした。

 すると、裏庭の方から“ガサッ”と音がしたのだ。何か動物でも通ったかなと思いながらも、寝ぼけている私はそのまま確認せずにうとうとしていた。

 しかし次の瞬間、“ガサッガサッ”と、完全な足音が聞こえてきたのだ。

 私が住んでいる家の隣は誰も住んでいない。向かいに家はあるが、裏庭にはバナナ畑があるだけで、そこに大勢の人が入ることなど考えられない。私はあわてて窓をのぞくと、そこには真っ白い衣装に身を包んだ女性が10人ほど中庭に入ってきているではないか。

「え! え!?」

 私は事態を把握できない。

 きっと、誰だって白装束の人たちが庭に入ってきたら、足がすくんで、それ以上のことなんてできないはずだ。

 警察を呼んだ方がいいのか、はたまた、刺激をしないように話しかけた方がいいのか……。私はとりあえず後者を選んだ。

「あの……、何をしているんですか?」

 すると一斉に女性たちがこちらを見て、なにか含み笑いをしている。

 怖い。怖すぎる!

 すると、1人の女性が口を開いた。「すぐ終わるから」と。え、何すんのよ、人んちの庭で!

 あまりの恐怖に立ちすくみながらも彼女たちを見ていると、なにやら庭先にある石を拝んで、1人ずつ去っていったのだ。

 え、何? 墓石!? まったく正解がわからない。

◆“御嶽”に住んでた

 私はすぐさま検索をかけた。「白装束 石 お参り」と。すると、そこには“御嶽(うたき)”という文字が出てきた。その後も、引っ越してきた土地や、場所などを検索し続けていくと、自分が今いる住所に、その御嶽があることが判明した。

 どうやら私は、御嶽に住んでしまったらしい。

 御嶽とは、琉球の神話の神が存在、あるいは来訪する場所なんだとか。神に仕えるのは女性とされるため、昔は男子禁制だったらしい。

……たしかに、さっきは女性しかいなかった! 怖い怖い怖い、ビンゴだ! これだ!

 その後も調べていると、御嶽に無意味に立ち入ると、祟られるらしい。

 え……。

 た、祟られるの!? ダメじゃん! え、知らないよ、そんなの!

 もちろん、これは宗教上の考え方で、無宗教の私には関係のないことなのだが、そんなところに住んではいられない。しかも、週1で白装束の人が勝手に入ってくる家なんか、絶対に嫌だ!

 その後、信じるか信じないかは別として、この家に住み始めてから、我が家の夫婦関係は顕著に悪くなった。もちろん、御嶽のせいではないと思っている。が、明らかに鬱っぽくなっていった元旦那を考えると、そのせいもあるのかな、なんて思ったりもする。

 もしかしたら、あの白いハトは、この御嶽に入った祟りにでもあったのか……。

 その真相は、今や闇の中である。

 しかし、つい最近、私が引っ越した土地の出身の人にある場所で会ってこの御嶽の話をすると、「え、御嶽に住んだの!? ダメダメ! あははは、バカじゃないの!」と腹を抱えて笑われた。

 その後、御嶽に関する怖い話を多々聞いたが、元当事者の私は一つも笑えなかった……。

 人間、まだまだ“知らぬが仏”なことがたくさんあるようだ。

 どうかみなさま、内見の際にベランダで白いハトが死んでいたら、絶対にその家は住まないことをオススメする。たとえどんなに豪華で安い物件でも。

<TEXT/吉田可奈 ILLUSTRATION/ワタナベチヒロ>
【吉田可奈 プロフィール】
80年生まれ、フリーライター。西野カナなどのオフィシャルライターを務める他、さまざまな雑誌で執筆。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。座右の銘は“死ぬこと以外、かすり傷”。Twitter(@singlemother_ky)

ママ。80年生まれの松坂世代。フリーライターのシングルマザー。逆境にやたらと強い一家の大黒柱。娘(8歳)。しっかり者でおませな小学2年生。イケメンの判断が非常に厳しい。息子(5歳)。天使の微笑みを武器に持つ天然の人たらし。表出性言語障がいのハンデをものともせず保育園では人気者※このエッセイは隔週水曜日に配信予定です。