「ぼくたちは建築家(ではない)」地方で“暮らし”を設計するTABって?

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岐阜県大垣市に拠点を構える建築設計事務所「TAB」。

以前ルーミーで家具を紹介した「TAB」は、建築設計事務所でありながら、家具など建築に関係するプロダクトの制作、DIYにまつわるイベント企画など、幅広い活動を行っています。TABのみなさん曰く「ARCHITECTURE & AROUND(建築とその周辺)」の設計を担っている、とのこと。

「ぼくたちは建築家(ではない)」とは?



岐阜の建築事務所TAB1TABのロゴ

「WE ARE (NOT) ARCHITECTS」と、Webサイトの事務所紹介に入れている彼ら。新しいモノの価値に出会うECサイトmachi-ya(マチヤ)にも出店しているTABのものづくりへの姿勢について、インタビューをさせていただいた。

──はじめに、TABの仕事内容を教えてください。

岐阜の建築事務所TAB2「TAB」の事務所

建築設計を基盤に、デジタルファブリケーションを用いた家具や雑貨などのプロダクト制作から、イベント、期間限定のショップ、街づくりに関することまで、「建築家」とは一括りにできない、さまざまな活動をしています。

*デジタルファブリケーション:レーザーカッターや3Dプリンタなど、コンピューターと接続したデジタル工作機械によって、さまざまな素材をデジタルデータで切り出し、成形する技術。

──岐阜県大垣市で事務所を開かれるまでの経緯を教えてください。

岐阜の建築事務所TAB3TABのメンバーは4名。左から横山将基さん、西田拓馬さん、山下健さん、冨田太基さん
岐阜の建築事務所TAB4岐阜おおがきビエンナーレ2015
岐阜の建築事務所TAB5イベント、OPEN STUDIO

TABは、岐阜県大垣市出身の西田、東京都出身の山下、愛知県出身の横山、埼玉県出身の冨田で編成されています。もともと大垣市で設計事務所を西田が構えていたところから始まりました。

大垣には、情報科学芸術大学院大学(IAMAS)という大学院があり、山下、横山、冨田の3人はここの出身です。西田、山下、横山が大垣で出会い、これからの建築設計事務所のあり方について話した末にTABを作りました。TABを立ち上げて3年が経ちますが、仲間が徐々に増えると、やれることやアイデアが増えて、制作できる範囲が拡大しているのを感じています。

身の回りのおもしろそうな素材は、すぐに実験してみる



──プロダクトをデジタルファブリケーションで制作されていますが、どう活用しているのですか?

岐阜の建築事務所TABレーザーカッターレーザーカッター

あくまで僕らのアイデアを形にするためのものと考えています。特別な機械というより、電動丸ノコやインパクトドライバーと同じような感覚で使用しているんです。

TABのプロダクトの中では、「Trapezoid stool」の天板カットや、脚部分の台形型パーツの切り出しに、CNC加工機(ミリやインチ単位・秒単位で数値化して、自動でものを加工できる機械)を使用しています。この加工は手作業で行うと大変ですが、デジタルファブリケーションの使い方をマスターすることで、簡単に加工ができるようになりました。

──デジタルファブリケーションを使うと、どういうものづくりができるのでしょうか?

岐阜の建築事務所TAB3Dプリンター3Dプリンタ

TABのものづくりのキーワードは「DIY」です。今はインパクトドライバーや電動丸ノコ、レーザーカッター、3Dプリンタ、CNC加工機などのデジタルファブリケーション機材を使っています。もともとは、当時オフィスをシェアしていた株式会社GOCCO.さんがレーザーカッターを購入し、共同で使い始めてみたのがきっかけです。徐々にデジタルファブリケーション機器が使用できる環境になり、実験的にプロダクトを作るようになりました。

特に、僕らはプロダクトの素材にこだわって制作しています。例えば、よく使用するのはOSB合板、MDF材(繊維に戻した木材を成型したもの)、針葉樹合板、ラワン合板は、いずれももともと住宅の仕上げ材として使われる素材です。デジタルファブリケーション機器で加工しやすいという大きなメリットがありますし、かつ身の回りで手に入る素材なんです。プロダクトにも、この素材を使ってみたらおもしろいかもね、と実験を始めて、今に至ります。

安価で加工がしやすく、使い手も手を入れやすいのがポイントです。使い方に合わせて、部品を取り付けたり、色を塗ったり、思い思いにDIYして欲しいと思っています。

地方と都心の「ものづくりの違い」って?



──「地方で制作することで、何が可能かを実践している」とのことですが、地方と都心でのものづくりにおいての違いはなんでしょうか?

岐阜の建築事務所TAB7事務所の工房スペース

もともと地方は都会に比べると人が少なく、仲間がいません。切磋琢磨できるメンバーを集めるのが、大変かもしれませんね。でも、地方はホームセンターが多いので、材料が手に入りやすいんです。僕らのオフィスの周りには5、6軒くらいホームセンターがあって、ここは本当にアイデアの宝庫なんです。

それに、アイデアを出してから、実際に材料を買いに行き、手を動かし、テストサンプルを制作するまでの流れが、かなりスピーディーであると感じています。都会と比べて、広いスペースを安く借りることができるので、事務所と工房を同じ場所に構えて、設計と実験をいくらでも繰り返せます。より瞬発的にアイデアを具現化できる環境にあると思いますね。これが都会だと、ファブリケーションができる施設を借りたり、別の場所に構えた工房まで行くことになりますよね。

家は、それぞれのライフスタイルや価値観を、住み手が実験できる場所



──TABにとって「家」はどういう場所で、家や家具の設計はどういうものでしょうか?

岐阜の建築事務所TABhouseKIM_B
岐阜の建築事務所TABKIM_T_2
岐阜の建築事務所TABHOUSE KIM_3住宅のリノベーション事例:HOUSE KIM 上からBefore/お施主さんとの塗装風景/After

「家」は、それぞれのライフスタイルや価値観を、お施主さん自らが実験して、作り上げていく場所なんじゃないかなと思います。
今、いろいろなライフスタイルや価値観があるので、求めていることがお施主さんによってまったく違います。僕らはお施主さんをサポートして、求めていることを現実にしていくのが役割だと思っています。

──TABの技術とアイデアが結集した、おすすめの「家で使いたいプロダクト」をご紹介ください。


岐阜の建築事務所TAB8Trapezoid Trestle
岐阜の建築事務所TAB9ww table

2つとも「Trapezoid stool」から派生したテーブルです。「Trapezoid Trestle」は「Trapezoid stool」の脚を伸ばすことで、机の脚にしています。「Trapezoid stool」と一緒に使用してもらえれば、さらに統一感が出ます。

「ww table」は、「Trapezoid stool」の作りから派生して制作した、円形のテーブルです。脚部分に穴を開けることで、軽やかさを出しています。どちらも、家でも事務所でも柔軟に使えるプロダクトです。

岐阜の建築事務所TAB10TABが他の事務所とシェアしているビルの什器デザイン
岐阜の建築事務所TAB11岐阜の建築事務所TAB_17プロダクトの制作事例:ポップアップストアにも、住空間をゆるやかに分ける家具としても使用可能な「Block shelf #1」
岐阜の建築事務所TAB12プロダクトの制作事例:ショップや、軽食を販売する屋台スペースとして可能な「Block shelf #5」

これらのプロダクトと同様に、建築や内装でも、「手の入れやすい素材であること」を重視して設計をしています。加工しやすかったり、経年変化したときに交換が容易だったり、使用する環境によって使い方を変えたり。住まい手や使い手が自分で手を入れる余地を残すことで、空間にさらに愛着を持ってくれたらいいと考えています。

まずは塗るだけでもOK! 初心者でも始められるDIY



──都内のマンションで暮らし、家が小さくてもできる、DIYのはじめ方を教えてください。

岐阜の建築事務所TAB13Maker Faire Tokyo 2014
岐阜の建築事務所TAB14mikketaアクリルを使ってコースターを作るワークショップ

欲しいものをデザインして材料を買って、必要な工具を揃えて作る……のは大変だと思います。まずは1からすべて作るのではなく、普段使っているテーブルや収納ボックスを、ペンキやニスで塗装してみたり、板材を新たに取り付けてみたり、自分もできそうな簡単なことからトライしてみるのがいいかもしれませんね。それだけで、思ったよりも部屋の印象が変わったり、生活が少し便利になったりして、やる気が湧いてきますよ。そこから「次はこれをやってみよう」「こんな家具があったらいいな」とアイデアが出てくると思います。

また、そんな人のために、「TAB」ではスツールやボックスなどの組み立てキットを、今後販売していく予定です。まずはこのキットを通して、工具の使い方や作り方などを学んでもらえればと思っています。

ものづくりを軸に「場づくり」を展開していきたい



──これからの建築事務所の職能とはなんでしょうか? また、今後のビジネス展開や活動を教えてください。

岐阜の建築事務所TAB15オリジナルスツールワークショップ@港町ポリフォニー2015

かなり難しい問題で、僕らも今模索しているところです。ただ建築設計をするだけではなく、周囲の環境を巻き込んでいくことが大切だと思います。例えば、公共空間のリノベーションやブランディング、テクノロジーと一緒に建築を考えていくことですね。

これからも、ものづくりを軸に「場づくり」も展開し、建築設計事務所の職能を拡張していきたいです。このあたりはまだ僕らも模索している段階なので、今後の活動にご期待ください(笑)。また、メンバーそれぞれが異なる興味関心をもっているので、それぞれの領域を広げて活動していきたいと思います。

[TAB]
TAB[machi-ya(マチヤ)]