強制アップグレードに非難殺到。Windows10への乗り換えを強制するMicrosoftの意図とは?
 昨年のリリース以降、2016年7月29日までの期間限定で無償提供が行われているMicrosoftの最新OS「Windows10」。まだ「Windows7」や「Windows8.1」を使用しているユーザーのPC上には頻繁にWindows10への アップグレードを促す通知が表示されていたが、5月13日以降、次のような通知が現れるようになった。

「Windows10はこのPCで推奨される更新プログラムです。このPCは次の予定でアップグレードされます」

 アップグレードをするか否かを問うのではなく、アップグレード自体は実行が予約済みであることを伝える一文。もはや「強制アップデート」とも呼べるこの通知を目にし、面食らったユーザーも多いはずだが、さらなる問題はアップグレードをキャンセルする方法が非常にわかりづらい点だ。

 この通知をよく見ると「ここをクリックすると、キャンセルできます」という項目がある。しかし、やや見つけづらいため、Windows7やWindows8.1などの旧OSを使い続けたいと考えるユーザーの一部は通知欄右上の「☓」印をクリックし、通知を消すことでアップグレードをキャンセルしたと思い込んでしまう。だが、これだけでは予定はキャンセルされず、ユーザーが予期せぬタイミングでアップグレードされてしまうケースが多発しているのだ。

◆トラブル多発の強制アップデート

 実際、問題も起きている。通知内容が変更される以前のものだが、4月15日にはある大学の講義中に教授のPCが突如アップグレードを開始してしまい、講義が中断したとの報告がTwitter上にもたらされた。

講義中に教授のPCがWindows10にアップグレードしてしまうハプニング面白すぎるんだが pic.twitter.com/tpZ6YkDSs2
- カミブクロ (@kamibucuro) 2016年4月15日

 また同27日には米・アイオワ州のテレビ局KCCIの天気予報で、天気図をちょうど覆う形でアップグレードの告知が出現し、進行が滞るトラブルも。

 アップグレードの所要時間はマシンスペックにもよるが90分から120分が一般的。この間は操作不能になるため、もしもプレゼン資料を詰め込んだPCが商談中にアップグレードされようものなら、実害を被る可能性は十分にある。現にこの“強制アップグレード”を「Microsoftによるテロ」「近年最悪のコンピュータウィルス」と批判するユーザーは少なくない。

◆アップグレードを急がせるMicrosoftの意図とは?

 アップグレードが無事に完了したとしても、さまざまな問題があるようだ。SNS上に散見される報告によると、Windows7やWindows8.1で使用できていたソフトやアプリとの互換性が完全とはいえず、画像編集などの一部の操作に不具合が生じるケースがあるという。また、それまで慣れ親しんでいた一部の設定が初期化してしまうという不満も多い。例えばアップグレード後の文字入力ソフトはMicrosoftの「MS-IME」になっているため、「Google日本語入力」などの他社のソフトを使用していた場合、再度選択する必要がある。

 こうしたさまざまなリスクがありながら、アップグレードを強制されることはユーザーにとって多大なストレスだ。こうした事態は容易に予想できたはずだが、なぜMicrosoftはここまで強硬にアップグレードをさせたがるのだろう。

 Microsoftからの明確なアナウンスはないが、巷で囁かれている推測としては「OSをWindows10に一本化することでサポートのコストを削減するため」というものがある。確かに現状ではWindows 7、8、10のユーザーが入り乱れており、それぞれに個別のサポートを行うのは多大な労力を要する。

 また、Microsoftが運営する「Windowsストア」の収益を増やす意図もあるはずだ。これまでOSの販売を収益の柱としてきたMicrosoftだが、Windowsに限らず、OS単体での収益は減少傾向が否めない。そこでWindowsストアを土台としたアプリ販売の手数料を新たな柱にすることはMicrosoftにとって非常に優先順位の高い戦略といわれる。Windowsストアが販売するアプリを利用できないWindows7から利用できるWindows 10へユーザーを誘導することは、OSを無償で提供してでも成し遂げたい事業だろう。

 企業である以上、自社利益を追求するMicrosoftの姿勢は当たり前のものともいえる。しかし、Windowsは現代において一企業の製品の枠を超えて、社会基盤のひとつであることは疑いない。それに対して半ば強制的にアップグレードを適用するという行為は、ユーザーフレンドリーとは言い難いのではないだろうか。<取材・文/小神野真弘>