台湾民進党の国際部長などを務めた林成蔚常葉大学教授が蔡英文政権誕生の経緯や展望について日本記者クラブで講演した。蔡英文政権は台湾社会で高まる「台湾アイデンティティー」を基盤にした若者世代や無党派層に支持されている、と指摘した。

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2016年5月24日、台湾陳水扁政権の国家安全会議シニア・アドバイザー、民進党本部国際部長などを務めた林成蔚常葉大学教授が蔡英文政権誕生の経緯や展望について日本記者クラブで講演した。蔡英文政権は台湾社会で高まる「台湾アイデンティティー」を基盤にした若者世代や無党派層に支持されていると強調。現在台湾経済は輸出の不振や経済成長の低迷に陥っているとし、今後も「現状維持」を志向した上で、経済再建を最優先することになると予想した。発言要旨は次の通り。

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蔡英文氏が勝利した総統選は、若者・ひまわり世代の支持が圧倒的だった。過去4年間で129万人の有権者が増加(有権者の6.8%)し、若者(20〜29歳)の投票率は74%に達した。蔡氏は「今風」「政治屋ではなく誠実な政策エクスパートである」というイメージ戦略に成功した。左右の極端なグループを排し、分厚い中間層の穏健な層=無党派層(中間選民)を重視し、その取り込みに成功した。

無党派層の中国本土との関係に関する意見では「独立」「統一」は少数派で、「現状維持」が大多数。「台湾アイデンティティ」が主流化しており、「台湾人」志向が強い。
5月20日の蔡総統就任式の総統就任演説では、史上初めて台湾の歴史について語られた。漢族による移民から始まり、228事件(大陸人支配に対する台湾人の反乱事件)など政治性が高い話題にも言及した。

新政権の人事の特徴は(1)総督府に外交のベテランと国内政策調整の側近を配した、(2)国家安全会議に外交軍事、司法改革担当のシニア・アドバイザーを置いた、(3)国史館に日本留学経験のある台湾史専門家を起用した―などが特徴だ。

この結果、手堅く行政経験のあるベテランが起用された。党派関係がなく多くは蔡氏が在野時代に主宰したシンクタンクで政策を担当してきた。

新政権の重要政策課題は「若者」「社会的公平性と正義」「経済構造転換」「社会的セーフティネット」の3点。特に経済は、15か月連続で輸出が減少、16年度のGDPはマイナス成長の恐れがある。OEM生産、台湾で受注し大陸で生産する輸出依存の経済構造が行き詰まり、打開策が必要だ。

蔡政権は「国民国家の完成」とか「国家統一の夢など」とかいった「情念」を脱し、実質的な利益を重視する方針だ。(八牧浩行)