遺体発見現場を検証する沖縄県警 (c)朝日新聞社

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 国土面積のわずか0.6%に在日米軍専用施設の74%が集中する沖縄県では、米軍人・軍属の犯罪が後を絶たない。5月19日、沖縄県警に死体遺棄容疑で逮捕されたのも元米海兵隊員で、米軍嘉手納基地の軍属、シンザト・ケネフ・フランクリン容疑者(32)だった。

 細身で180センチの長身の黒人だが、取り調べ中も完全に憔悴しきって、ふるえておどおどしているという。

「最初の事情聴取があった翌日の17日に多量の睡眠薬を飲み、病院に担ぎ込まれ、18日にも700ミリリットルのウイスキー2本を一気飲みし、救急搬送されていた。本人が乗っていたYナンバーの米軍車両を捜索すると、ルミノール(血液)反応があり、問い詰めると、『棒で頭を殴り、強姦し、ナイフで刺した』とすぐに自供しました」(捜査関係者)

 米国出身のシンザト容疑者はメリーランド、ワシントンDCなどに住み、2007〜14年まで米海兵隊に所属。その後、来日し、日本人女性と結婚し、シンザトと名乗るようになった。今は嘉手納基地の企業でインターネット配信などの業務に携わり、与那原町に妻と生まれたばかりの子どもと居住、素行など近所の評判は悪くはなかったという。

 殺害された女性と面識はなかったとされるが、2人の運命が交錯したのは、4月28日夜――。

「ウォーキングしてくる」

 女性が同居中の交際相手の男性にLINEでメッセージを送信。その後、スマートフォンの位置情報が途絶えたのが、29日午前2時40分頃だ。うるま市内の女性の自宅から1〜3キロほど離れた工業地帯だった。

 そしてシンザト容疑者の供述により、女性の遺体が見つかった現場は、恩納村安富祖にある雑木林。米軍セントラルトレーニングエリアの一画である。遺体は腐敗が進み、すでに白骨化していた。

 県警は、女性の消息が途絶えた工業地帯の防犯カメラ映像から、付近を通行した約300台の車を割り出した。

「Yナンバーは数台だけだったので、すぐにシンザトは容疑者として捜査線上に浮上した」(地元紙記者)

 近隣のコンビニエンスストアの防犯カメラもその奇行をとらえていた。

「周囲をうろついたり、コンビニで購入した塩を車にまくような様子が映っていた。1度目の自殺未遂の直後、なぜ、すぐ身柄を押さえなかったのか。日米のややこしい問題になるのを恐れ、自殺するのを待っていたのではないかと、疑う声もある」(地元関係者)

 結婚を控え、悲劇に見舞われた女性は地元のショッピングセンターで働き、勤務態度もいたって真面目。ウォーキングが趣味の活発な女性だった。

 親族にあたる前名護市長、島袋吉和氏が語る。

「本当にむごたらしい。彼女の祖父が島袋家の門中(親族集団)の長になります。いま大勢で見送りしたが、みな怒り心頭です」

 20日の告別式には翁長雄志沖縄県知事や中谷元・防衛相も参列した。

「飛行機の時間を気にしてVIP扱いで、焼香の時も列に並ばなかった中谷さんは地元で顰蹙(ひんしゅく)を買っただけでした」(参列した人)

 うるま市選出の照屋大河県議も怒る。

「沖縄中が常に危険と隣り合わせであることに、改めて腹立たしい思いがする」

「治外法権」という不条理のために、今回の事件も県民に知らされないまま闇に葬られかねない危険性があった。というのも、米軍関係者を保護する日米地位協定が、常に立ちはだかっているからだ。

 米軍人・軍属が事件や事故を起こしても、被疑者が公務中の場合、捜査権と第1次裁判権は米軍側にある。例えば、ひき逃げ事件が発生して、県警が犯人の米軍人を逮捕しても、公務中の事故だったとされれば、検察官は不起訴にせざるを得ないのである。

 今回の死体遺棄事件の場合は、シンザト容疑者は公務外だったが、基地内に逃げ込んでいたら、県警の捜査の手が及ばなくなる可能性もあった。米軍犯罪に詳しい池宮城紀夫(いけみやぎ・としお)弁護士が説明する。

「被疑者が米軍の手中にある場合、起訴前は米側が身柄を確保することになっています。シンザト容疑者が米軍基地内にいると、公務外でも県警は手出しができなかった」。(本誌・亀井洋志、西岡千史、秦 正理/今西憲之)

週刊朝日  2016年6月3日号より抜粋