金華山の329mの位置に佇む岐阜城は、岐阜公園内の「金華山ロープウェー」に乗り、山頂駅から8分ほど歩くと見えてくる/(C)(一社)夜景観光コンベンション・ビューロー/丸田あつし

写真拡大

見る場所で趣が異なるのも夜景の魅力。なかでもより特別な気持ちに浸れるのが、歴史ある「城」からの眺めだ。夏にかけて、多くの城で見学時間の延長が行われるほか、周辺で行われるイベントでより賑わいをみせる。そこで今回は全国から3つの“城夜景”を厳選し、夜景評論家の丸々もとお氏にそれぞれの楽しみ方について聞いた。

【夜景特集】夜景にまつわる最新トピックスやフォトギャラリーをチェック!

「“一国一城の主”という言葉があるように、城から見る夜景は男性的な意味合いが強く、夢や未来の象徴でもあります。見上げるのではなく見下ろすという点でも、ほかとは違う迫力を感じるのではないでしょうか。電気がない時代は大地の暗さに月や星の明かりがいっそう映えていました。今は昼間だと現代的ですが、夜は明かりがぼんやりして、タイムスリップしたような感覚を味わえます。天守閣に登れない時期も城の麓からの眺めは独特の風情を感じるので、昔の人々が見ていた景色に思いを馳せながら楽しんでほしいですね」(丸々氏)。

■ 国内有数の山城から見る360度パノラマ夜景/岐阜城(岐阜県岐阜市)

日本夜景遺産に認定されている岐阜城は、織田信長の天下統一の足がかりになった城。7月16日(土)から8月31日(水)まで、9月3日(土)から10月16日(日)までの土日・祝日には天守閣から夜景を楽しめる「パノラマ夜景」を開催し、普段とはひと味違う眺めを味わうことができる。金華山の標高329メートルに立つ岐阜城は、いわゆる“山城(やまじろ)”で、丸々氏も「全国を探してもなかなかない」と話すほど貴重な夜景が拝める国内有数のスポットだ。

「城自体はそこまで大きくありませんが、岐阜市外や平野、晴れていれば名古屋の中心部まで見渡すことができます。西には山系やそこから海に続く平野が見られます。またそのなかに揖斐川や木曽川が流れ、光で埋め尽くされた平野部から川や山など、いろいろな要素が詰まっています。織田信長をはじめ、日本の礎を築いた人々ゆかりの場所で、歴史を感じながら360度の大パノラマを味わってください」(丸々氏)。

■ 情緒あるたそがれ!必見のライトアップ演出/大阪城(大阪府大阪市)

豊臣秀吉によって築かれた大阪城では、7月23日(土)から8月21日(日)までは19時まで、8月22日(月)から31日(水)までは18時まで開館時間を延長し、天守閣から外を眺められるようになる。2014年に“日本三大夜城”にも認定された大阪城について「時間も早めなので、夜景というよりは“たそがれ”ですね」と丸々氏は解説。

「城が立つ大阪城公園周辺には高層ビル群もあり、都市のリアリティを感じる眺めです。豊臣秀吉が住んでいた場所でもあり、それを考えると雄大ながら親しみが湧く雰囲気を感じられます。さらに、東側に見える生駒山が、西に沈む夕日に反射してオレンジ色に染まるのです。ここでは東に目を向けたほうが夕日が反射したあとのブルーモーメント(晴れの日の夜明けや夕焼け後のわずかな時間に見られる、空が青みがかる現象)も見られるかもしれません。また大阪城の特徴は、夜更けに合わせて徐々に消灯していく演出。22時以降の大阪城は、見ていると面白いですよ。22時ごろになると下からの光が消えますが、窓の光は24時まで消えません。その後もぼんやりと明かりが点いていて、まるで寝静まるかのような情緒あるライトアップが施されています。近くのホテルニューオータニの客室やバーからよく見えるんですが、そういった通な見方もおすすめですね」(丸々氏)

■ 花火の時期は必見!現代に建てられた城にも注目/熱海城(静岡県熱海市)

錦ヶ浦の山頂に建つ熱海城は、1959年に観光目的で建てられた“現代の城”で、熱海駅から車で約10分という好立地にある。

「ここは城からではなく、正面駐車場からの眺めが絶景なんです。少し趣旨が異なりますが、一度ぜひ訪れてほしいスポットです。ひと昔前は“東洋のナポリ”と称されていた夜景も、今は旅館やホテルも減り、マンションの光を中心に構成されています。決して派手ではありませんが、海に続く急斜面による高低差が特徴です。こうした夜景を一望できるところは日本ではなかなか少なく、貴重な場所です。特に花火大会の時期は必見です。熱海は夏も冬も花火大会を開催しているので、せっかくなら夜景も花火も一緒に楽しんでみてはいかがでしょう。そうすることでより思い出に残りますしね。余談ですが、熱海はイタリアンがおいしいんですよ。和食のイメージが強いかもしれませんですが、実はイタリアンの名店も多いのでぜひ行ってみてください」(丸々氏)。

【ウォーカープラス「夜景時間」/取材・文=金城和子】