東京五輪招致活動に際して、開催地決定の投票権を持つIOC(国際オリンピック委員会)委員に総額2億3000万円も渡していたという贈収賄疑惑が大きな話題になっている。そのスクープを報じた英ガーディアン紙の記事には、その疑惑の鍵を握る存在として日本の広告代理店最大手「電通」の名が繰り返し登場する。同紙は、「疑惑と電通の関係」にさらに踏み込んでいる。世界反ドーピング機関の報告書を紹介するかたちでこう記していた。

〈BT(ブラック・タイディングス)社(電通が送金をした相手であるシンガポールのコンサルタント会社)の口座は、アスリート・マネジメント・サービス社(以下、AMS社)のコンサルタントであるイアン・タン・トンハン氏によって管理されている。AMS社は(電通関連会社の)電通スポーツがスイスのルツェルンに作り、国際陸連から与えられた商業的権利の配分を行っている〉

 それが事実ならば、国会に参考人として呼ばれた竹田恒和JOC会長が答えたように、電通から招致委への「(BT社は)実績がある」という説明が、お手盛り推薦だったという問題も浮上しかねない。

 海外の疑惑拡大にも関わらず、国内メディアが電通の名を報じる例は少ない。

 ガーディアン紙報道の2日後から新聞各社はこの問題を報じたが、「電通」と企業名を書いたのは14日の朝日朝刊が最初。記事の最後でわずかに触れたのみだった。テレビ各局は、本誌が放送の録画を確認する限り、16日の竹田氏の国会答弁を『報道ステーション』などが報じるまで、電通という言葉は確認できなかった。

 逆に電通の存在を“消す”報道もあった。ガーディアン紙の記事の核心は、複雑な資金の流れを説明する相関図にあった。そこには「Dentsu」も登場するのだが、テレビ朝日やTBSのニュースで紹介された図は、ガーディアン紙を出典としているにもかかわらず、「電通抜き」のものだった。

 この件について、テレビ朝日は「5月12日放送時点では、事実関係が確認できた図を放送した。現在は電通についても必要に応じて報道しています」(広報部)、TBSは「放送内容についてのお問い合わせは、お答えしておりません」(総務局広報部)とそれぞれ回答した。博報堂出身で『電通と原発報道』の著作がある作家・本間龍氏が指摘する。

「及び腰の正体はメディアの自主規制。特にテレビに顕著ですが、代理店の機嫌を損ねたくないのです。テレビ局側は“代理店を怒らせたらCM枠販売に支障が出る”と懸念し、勝手に報道を自粛してしまう。各局とも広告収入が減る中で、遠慮が大きくなっている」

 さらに、電通と各テレビ局は五輪をはじめスポーツ中継やイベント開催などで密接な協力関係にある。また、朝日、読売、毎日、日経の大手新聞4社も、東京五輪のオフィシャルスポンサーとして合計60億円のスポンサー料をJOCに支払うことが決定している。“東京五輪ビジネスの仲間”であることも尻込みする一因なのか。

※週刊ポスト2016年6月3日号