ウィルチェアーラグビー日本代表は、パラリンピックアテネ大会8位、北京7位、ロンドン4位と順位をアップさせてきた。昨年行なわれた、リオデジャネイロパラリンピック予選を兼ねたアジア・オセアニアチャンピオンシップでは2014年世界選手権優勝のオーストラリアを撃破し、出場権を獲得。リオでのメダル獲得はもちろん、金メダルの期待も高まっている。

 そんななか、世界ランキング3位の日本が、同2位のアメリカ、4位のオーストラリア、5位のイギリスを迎え撃つべく5月19〜22日、千葉ポートアリーナ(千葉県千葉市)でジャパンパラ競技大会が開催された。

 パラリンピック本番に向けての前哨戦として合宿を重ね、万全の態勢で臨んだ日本だったが、結果は残念ながら4カ国中の4位。それでも、予選リーグ(2回総当たり)では、オーストラリアに2敗したもののアメリカに2連勝、準優勝のイギリスにも1勝1敗とし3勝3敗。リオでのメダル獲得の可能性はまだまだ消えていない。

 強豪国に対して「自分たちが積み重ねてきた形」が出せずに終わった今大会、日本代表には多くの課題と修正点が見つかった。荻野晃一ヘッドコーチをはじめ、選手全員が揃って口にしたのは「フィジカル」についてだった。

「ラグビーですから、当たり負けして体力を削られ、疲れていたら勝てません」

 エースの池崎大輔は唇をかみしめ、そう語った。

 強烈なタックルを受け、ディフェンス網がズタズタに切り裂かれ、オフェンスでは前に進めずボールを奪われてターンオーバー。優勝したオーストラリアとの対戦だけでなく、4日間で行なわれた7試合すべてで日本を何度も襲った屈辱的なシーンだ。

 大事な場面で繰り返されたミス、リオに向けて試行錯誤を繰り返す新ラインのコミュニケーション不足やタイミングのズレ、パスの精度、リードされた場面でのメンタル面の弱さなども課題として挙げられたが、突き詰めればそれらはすべてフィジカル面の弱さが原因となっている。

 会場に響き渡る、車椅子同士の"ガツン"という激突音が象徴する激しさが魅力のウィルチェアーラグビーだが、ポジショニングや残り時間の使い方、制限時間を止めるタイムのかけ方など、選手の頭脳的なプレーも勝敗を分ける大きなカギ。ところが、池崎が言うようにフィジカルで負け、疲れていてはその能力は下がるばかりだ。

 さらに、ウィルチェアーラグビーはポイント制。最も障がいが重い0.5点から最も障がいが軽い3.5点まで0.5点刻みに7段階のポイントが選手ごとに設定され、コートに立つ4名(ライン)は合計ポイントが8点以内となるように構成しなければならない。現在の日本代表には3.5点の選手はおらず、ハイポインター3.0点の池崎と池透暢、ローポインター1.0点の若山英史と今井友明の4名が組む"ハイ・ローライン"が最強のファーストラインだ。

 体幹が機能し、コートを自由に動き回れる池崎と池には、スピードを生かした攻撃、ロングスローやキャッチング、相手の動きを一発で仕留めるタックルなど、縦横無尽、獅子奮迅の働きが求められるが、ローポインター2人にも相手の走路を妨害し、ハイポインターの走路を作り出すという重要なミッションがある。

 また、池崎、池を休ませるため、どちらかと同じ3.0点のベテラン島川慎一が組むラインや、1.0点の選手2人ではなく1.5点と0.5点の選手を組み合わせるラインもある。相手の陣形、キープレーヤーのレベルや人数に合わせるとともに、長丁場の戦いとなるパラリンピックではバリエーションを増やすことも必要となる。

 そのためには、チームとしてメンバー全員がフィジカル面をさらに強化し、一段とレベルを上げなくてはならない。ウィルチェアーラグビーにレギュラーと補欠はいない。ベンチ入りした12名全員の総力戦だ。

「今大会、一番の収穫は4位に終わったということ。この悔しさをバネに自分たちは成長のスピードを上げ、強くなる」

 正確なロングパスで何度もチャンスをメイクし、自ら猛スピードでゴールラインに突進して得点をあげた池が、仲間を代表するように固い決意を述べる。パラリンピック4大会連続出場となる島川は、今のチーム状況を次のように説明した。

「アテネ、北京、ロンドン、どのチームと比べても、今は雰囲気がいい。なかでも、団結力は最高です。ロンドンのときは4位に入ったといっても、3位とは大きな差がありました。でも、今は全員がリオでメダルを獲るという目標を真剣に掲げ、自分から考え、己の限界に挑むように練習しています。

 今年の初め、リオまでの強化スケジュールを見て僕たちは唖然としました。"まじかよ!"って。ずっと合宿続きでこの大会。6月も合宿でカナダ遠征、カナダカップ出場。その後も合宿が何度かあり、オーストラリア遠征。リオへ向けての練習環境は完璧に整えてもらっているので、あとは僕たちがやるだけ。このチームでメダルが獲れなかったら、日本はいつまで経ってもメダルには手が届かない。みんながそう感じています」

 今大会に出場した日本を含む4カ国に世界ランキング1位のカナダを加えたトップ5は実力伯仲。どこが勝ってもおかしくない戦国模様だ。9月の本番までに、誰ひとり脱落することなく、メンバー全員がどこまでレベルアップできるか。チームとして機能を高めることができるか。メダルの行方は残り3カ月の準備で決まってくる。

宮崎俊哉●取材・文 Miyazaki Toshiya