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京都大学(京大)などは5月24日、がん細胞が免疫監視を回避する新たなメカニズムを解明することに成功したと発表した。

同成果は、京都大学大学院医学研究科 腫瘍生物学 小川誠司教授、片岡圭亮特定助教、東京大学医科学研究所附属ヒトゲノム解析センター 宮野悟教授、白石友一助教、北海道大学大学院医学研究科免疫学 瀬谷司教授、松本美佐子客員教授らの研究グループによるもので、5月23日付けの英国科学誌「Nature」オンライン版に掲載された。

近年、生体にもともと備わっているがん免疫を再度活性化することによって、抗腫瘍効果を得る「免疫チェックポイント阻害薬」が注目されている。抗PD-1抗体および抗PD-L1抗体をはじめとする免疫チェックポイント阻害薬は、特定のがん種では極めて高い奏功率が得られるが、他のがん種では、効果の得られる患者の割合が低いことが知られている。

同治療の費用が極めて高額に及ぶことを考えると、こうしたがん種についてはすべての患者に投与することが困難であり、治療効果を予測する優れたマーカーの開発が望まれていた。こうしたマーカーを見出すためには、がん細胞がどのようにしてPD-L1分子を発現して免疫を回避するのか、また、なぜ治療効果を示すがんと示さないがんがあるのかに関する理解が重要となるが、こうしたメカニズムについては多くが不明のままとなっていた。

今回、同研究グループは、33種類の主要ながん種を含む1万例を超えるがん試料のゲノム解析データについて、スーパーコンピュータを用いた大規模な遺伝子解析を実施。この結果、肺がん、胃がん、食道がん、大腸がん、腎がん、膀胱がん、子宮頸がん、子宮体がん、頭頸部がん、悪性黒色腫、B細胞リンパ腫など、主要ながん種の多くで、代表的な免疫チェックポイント分子のひとつであるPD-L1タンパクをコードする遺伝子の異常が生していた。

これらの異常には、染色体の欠失や逆位、転座、重複などさまざまなタイプの異常が含まれていたが、すべての例で、タンパク質に翻訳されない「3'非翻訳領域」と呼ばれる領域の欠損が起きていた。さらに、これらのPD-L1遺伝子のゲノム異常を持つ症例の全例で、PD-L1遺伝子の発現の顕著な上昇が認められたという。同研究グループは実際に、がん細胞を含むさまざまな細胞において、ゲノム編集技術「CRISPR-Cas9」を用いてPD-L1の3'非翻訳領域に欠失や逆位を生じさせることによって、PD-L1の顕著な発現の上昇が生ずることを確認している。

さらに、このようにして3'非翻訳領域を欠失させることによりPD-L1遺伝子の発現を誘導したがん細胞は、免疫による監視を回避して増殖することができるようになることが確認されたという。一方、この増殖効果は、抗PD-L1抗体によって阻害されたことから、このようなPD-L1遺伝子のゲノム異常を認めるがんでは、免疫チェックポイント阻害剤による治療が有効である可能性が示唆された。

以上の結果から、同研究グループは、PD-L1遺伝子の3'非翻訳領域の異常が、抗PD-1抗体や抗PD-L1抗体による免疫チェックポイント阻害治療において、特に有用と思われる患者を見出すための有用なマーカーとなる可能性があると説明しており、実際に同異常のバイオマーカーとしての意義を検証するため、「再発又は難治性の成人T細胞白血病・リンパ腫に対するニボルマブの第響螳綮媼臚骸8魁廚現在鹿児島大学を中心として進行中であるという。

(周藤瞳美)