2016年3月、中国政府が「匠の精神の育成」を重点戦略に据えたことがきっかけで、中国では「匠の精神」という言葉が話題にのぼるようになった。この「匠の精神」とは言わば、ものづくり精神と言い換えることができるが、中国人旅行客が日本で温水洗浄便座を爆買いしたのは、日本に「匠の精神」が存在するためとの見方が一般的だ。(イメージ写真提供:123RF)

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 2016年3月、中国政府が「匠の精神の育成」を重点戦略に据えたことがきっかけで、中国では「匠の精神」という言葉が話題にのぼるようになった。この「匠の精神」とは言わば、ものづくり精神と言い換えることができるが、中国人旅行客が日本で温水洗浄便座を爆買いしたのは、日本に「匠の精神」が存在するためとの見方が一般的だ。

 中国メディアの新華社はこのほど、「日本には匠の精神が今まで受け継がれてきたのはなぜだ」と疑問を投げかけつつ、日本の匠の精神について分析する記事を掲載した。

 記事は、「匠の精神と言えば日本製品がすぐに脳裏に浮かぶ」としつつ、日本の中小企業には多くの「匠」がいると紹介。中国も科学技術の水準では日本と変わらないはずだと主張する一方、「なぜ日本で匠の精神を受け継ぐことができたのか?」と疑問を投げかけた。

 その理由として、「富を見せびらかさない」日本人の価値観と関係があると分析。例えば、日本の有名な庭園を訪れた際、「中国の富裕層の庭に及ばない」ほど質素な庭園に拍子抜けしたという。しかし、日本の高級住宅街の庭もやはり質素だったので、日本人にとって「富は見せびらかすもの」ではなく、匠にとっても「完璧さと精緻さを求めることこそ光栄なこと」なのだと主張、これが日本人の価値観なのだと論じた。

 中国では儲けの大きさや所有する富の大きさで人の価値を図る風潮があるため、この価値観は中国人には理解しにくいかもしれない。日本の匠は「自分の作品を人格と名誉の表現」と考えており、富だけを追求するわけではない、と日中の価値観の違いを強調。そのためいわゆる「マニア」と呼ばれる人が多くいると紹介した。

 他にも、安定した政治体制、自分の好きな分野に挑戦する過程から成功と幸せを感じる人生観、公正な評価機構と法律による監督があることも、匠の精神が継承されてきた理由だと分析。日本では身近に真面目で勤勉で完璧を追及する人が多くいて、「匠の精神は深く尊敬され、互いに影響を与えている」と指摘、これが日本人のソフトパワーの源だと説明した。

 記事でも指摘されているとおり、匠の精神は日本で長い時間をかけて築かれてきた価値観と言える。中国も匠の精神の獲得を目指しているようだが、中国製造業を本気で変えたいならば、まずはその価値観から変えていく必要がありそうだ。(編集担当:村山健二)(イメージ写真提供:123RF)