20周年記念企画として「喫茶100軒」を特集した「散歩の達人」6月号

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大人のための首都圏散歩マガジン「散歩の達人」が、2016年6月号で「喫茶100軒」を特集している。創刊20周年の特別企画だ。サブタイトルは「わたしの『憩いの一軒』、お教えします」。

住宅街の書店に併設された喫茶コーナー、流行りのメイド喫茶、昭和をしのぶレトロな名店・・・著名な作家やパフェ評論家、喫茶店写真家、和菓子ライターなど様々なジャンルの「喫茶の達人」100人がイチオシの店を紹介している。

大詩人の隣でコーヒーを飲む

詩人の谷川俊太郎さんが最近、よく訪れるのはJR荻窪駅に近い書店「Title」(タイトル)。店の奥にある喫茶コーナーがお気に入りだ。自宅の近くなので、散歩の途中で立ち寄る。書店というよりは本屋さんと呼ぶ方がふさわしいような小さなたたずまいの店だ。

2016年1月にオープンしたばかり。店主の辻山良雄さんは昨年、7月に閉店したリブロ池袋本店を退職して自分の店を構えた。時には新刊書の著者と直接話せるような催しもある。近年、街の本屋さんや書店は危機的な状況にあるが、「今の時代の新しい流動的なサロンになっていくかも」と谷川さんは期待する。タイミングが合えば、大詩人の隣でコーヒーが飲めるかもしれない。

経済評論家で、オタク研究でも知られる森永卓郎さんは、当然ながら秋葉原に詳しい。駅周辺には多数のメイド喫茶がある。そんな中から、森永さんが「東京随一」と称賛するのは「キュアメイドカフェ」。あやしい店も少なくないが、ここは「本格派の代表」だという。

森永氏によれば、メイド喫茶とは19世紀の英国貴族社会のご主人とメイドの関係を手本にしたもの。主人はメイドのことを心憎からず思えども決して態度に出してはいけない。現代のメイド喫茶とは本来、そうした抑制のある関係を基本にロールプレイを楽しむ場だという。したがって、正統派のメイド喫茶では、英国貴族の伝統にならい、コーヒーではなく紅茶をたしなむのが正しい作法だそうだ。

紹介者の人生もにじむ

「東京喫茶店研究所二代目所長」の難波里奈さんが、金曜日の夜に行くのは「喫茶亭   ルアン」。珍しい映画を上映することで知られるJR大森駅からすぐの映画館「キネカ大森」の近くにある。いかにも昭和の空気を醸し出す横丁。創業45年の歴史を持つ琥珀色の店内で、アルコール入りコーヒーを注文すると、いつもと違うレトロな夜が現れる。

ママ鉄・鉄道文化人の豊岡真澄さんが「トレインビュー」を楽しむのは「PRONTO田端店」。窓の外を乗客ゼロの新幹線がゆっくり通り過ぎる。検査や清掃のため、JR田端駅近くで本線から分岐している東京新幹線車両センターと行き来しているのだ。まるでパドックで名馬を見るようなもの。鉄道マニアにとってはたまらないスポットだ。

東京で最もアナーキーな街と言えば高円寺。作家で活動家の雨宮処凛さんが立ち寄るのは駅の近くの「Yonchome Cafe」。ここからは運がいいと、「反原発」や「放置自転車の撤去反対」などという自然発生的なデモを見ることができるそうだ。

シニア世代には懐かしい神保町の「ラドリオ」や上野の「古城」、西荻窪の「ダンテ」、阿佐ヶ谷「ヴィオロン」、桜木町「ダウンビート」、神田「エース」などのほか、銀座の新しいカフェなど登場する店は多彩だ。

紹介者も、アーティストのPUFFY、漫画家の江口寿史、野球評論家の江本孟紀、作家の保坂和志、映画監督の山本晋也、画家の山口晃の各氏ら多士済々。それぞれの思い出話に、店や街が育む文化と歴史だけでなく紹介者の人生もにじみ出ている。

付録として店のリストが一覧になった小冊子も。実際に行ってみたい人には便利なガイドブックとなっている。