写真提供:マイナビニュース

写真拡大

●2016年5月28日(土)まで一般公開
デジタルの可能性が急速に拡大しつつある中、広告代理店でもユニークな戦略を打ち出し始めた。広告代理店のデジタル部門から生まれた博報堂アイ・スタジオでは、現在の技術で実現可能な"発明品"をクライアントに提示し、業界の注目を集めている。デジタルガジェットとしても非常におもしろい。そんな作品が一堂に会する展示・体感イベント「DIGITAL DIVERZ」の一般公開が、東京都・渋谷のギャラリー「Galaxy 銀河系」で始まった。入場は無料、会期は5月28日までだ。

DIGITAL DIVERZで展示されている作品は、いずれも博報堂アイ・スタジオの社内クリエイティブラボ「HACKist」(ハックイスト)に所属するクリエイターおよびエンジニアによるもの。アート、テクノロジー、コミュニケーションのアイデアが融合された意欲作が揃った。

HACKistでクリエイティブ・ディレクターを務める望月重太郎氏によれば、この試みでは3つのメリットが得られるという。

それは、国内外で賞を獲得することで対外的な評価が上がること、社内のクリエイターとエンジニアの技術が上がること、作品自体が新しい商品や広告素材として利益を生む可能性が出てくること。望月氏は「これからも広告発信の全く新しいアプローチを積極的に行っていきたい」と意欲的に話していた。

実際にどんな作品が展示されているのか、紹介していこう。

○Dig-Log

Dig-Logは、重労働である"雪かき"を「誰もがやりたくなる活動」に変えるという、雪かき専用IoTデバイス。スマートフォンと連動し、雪をかいた重さやカロリー量を圧力センサーで算出、ログ化する。そのデータは、ゲームやフィットネスにも活用が可能だ。

今年(2016年)2月には、雪かきをスポーツエンターテイメント化する試みとして、長野県・長野市で雪かきの講習イベント「越後雪かき道場 in 鬼無里」に参加した。開発者は「従来の雪かきにはなかった目的意識や、達成感などの新たな価値が生まれる。フィットネスのような感覚で、モチベーションを高めながら雪かきに取り組めます」と説明していた。

○Pechatt(ペチャット)

Pechatは、ボタン型おしゃべりスピーカー。ぬいぐるみにつけることで、ぬいぐるみのふりをして子どもとおしゃべりできる。スマートフォンとBluetoothで連携し、話者の声色を変えて離れた場所から話しかけられるほか、ボタンひとつで定型文やテキストの文章をしゃべらせることが可能。

「育児を楽しくアシストする次世代玩具です。お母さんが子どもとコミュニケーションする手段のひとつとして使ってもらえれば。大人が言っても聞かないけれど、ぬいぐるみが言うことは素直に聞くお子さんもいます。一緒に歌をうたう、昔話を話すといったことも可能です」(開発者)。

○PLUS ANIMA

PLUS ANIMAは、モノとコミュニケーションできるインタフェース。テーブルの上に置いたモノをディープラーニングで解析し、最適な性格づけをした上で、しゃべらせる。会場のデモでは、例えばパプリカを置くと「私はパプリカです」から始まる自己紹介を聞くことができた。パプリカの歳は16歳、性別は女声で、性格は陽気らしい。

「プロジェクションマッピングを利用して、まるで魂が宿ったかのような演出をします。モノと人のコミュニケーションを実現します」(開発者)。将来的には、店舗に置くことで商品が自己PRをしたり、小さい子どもが遊びながら学べる教材にしたり、ということを考えているという。ちなみに未知のモノを置いたときは、ネット検索をして最も近いと思われるものが表示される設計だ。

○TREK TRACK

TREK TRACKは、登山の事故を減らすことを目的としている。登山者の行動を一定間隔でデータに保持し、第三者が遠隔からモニタリングできる新しいプラットフォーム。仕組みは、低コストのチェックポイントを登山ルートに20個ほど設置し、登山者が通過するたびにログをとる。通過ログは、登山者のスマートフォンからモバイル通信でデータベースに送信される設計。

山中では電波が届かない場所もある。そこで、山道ですれ違う登山者同士でも通過ログが共有される仕様にした。遭難を防ぐ試みとして、自治体からも注目を集めている。仮に遭難事故が発生した場合、登山者のログが途切れたエリアを中心に捜索することで、発見の確率が高まる。

○PLAN-NET

PLAN-NETは、Google Calendarと同期することで、スケジュールをアートに変貌させる置時計型デバイス。開発者は「淡々と時を刻むだけだった時計が、すべてのスケジュールを理解し、直感的に伝えてくれるパートナーになります。UIが文字ベースのGoogle Calendarでは気付きにくかったスケジュールの切迫感が、パッと見でも理解できるようになります」と話す。

●米国「サウス・バイ・サウスウェスト(SXSW)」で注目を集めた作品も
○有名な2作品も展示

今回のイベントでは、米国テキサス州で毎年開催される世界的なデジタル・クリエイティブの大型イベント「サウス・バイ・サウスウェスト(SXSW)」で注目を集めた、海外でも有名な2作品も展示されていた。

そのひとつ「POSTIE」は、スマートフォンに手書きしたメッセージを相手に手紙として届けられるIoTデバイス。写真やスタンプも送れる。手紙よりも早く、メールよりもハートフルなやりとりを実現する。

もうひとつの「トーカブル・ベジタブル」は、箱の上に置かれた野菜に触れることで、野菜が生産者の声でしゃべりはじめるというもの。店頭でのプロモーションツールとして利用できる。「第18回 アジア太平洋広告祭」の2部門を受賞している。会場のデモ機は、じゃがいもが「マッシュポテトにして食べるのが、一番おいしいです」などと自己紹介していた。

○数々の意欲作

ほかにも、数々の意欲作が展示されていた。

「次世代の漫画 I」は、スマートフォンの特性を生かした短編漫画作品。漫画「マンボウの書」では、画面の向きをタテからヨコに変えることで1本のストーリーを別の視点から楽しめるようにした。開発者は「漫画は絵巻物を起源として、印刷の技術によって綴じ型へと変化を遂げました。現代の技術の進化は、漫画をさらに進化させると考えています」と解説する。

「、。(テンマル)」は、原稿用紙や手紙に文章を手書きしていた時代に、人が味わっていた気持ちの整理を抽象的に可視化する試み。「波紋の動きが変わることで、キーボードで文字を打ちながらにして、気持ちを整理できることを目指しました」(開発者)。

「ふわッチ」は、スイッチを押すと布の色が変わるソリューション。ステッチ状に縫い付けた糸にインタラクティブ性を加えることで、繊維の色彩・日常への変化を与えることを目的にしている。将来的には、スマートフォンをタップすることで自由に服の色を変える、といったことができるようにしたいという。

「Cubic Roove」では、ARによる立体的な表現を目指した。iPadなどのスマートデバイスを通してデジタル映像を覗き込むと、肉眼では見えなかったARが飛び出す仕組み。ARマーカーなしで認識させる技術が新しい。「ミュージック・クリップで、音楽の裏に隠れたコンセプトを表現することも可能です」と開発者。

「drop」は、水の染みこんだスポンジから水滴が落ちる様子を音楽にしようという試み。「自然現象の中に潜んだ独特のリズムを抜き出すことで、自然の理(ことわり)に触れ、そこにあるかも知れない"なにがしか"のメッセージを読み取る試みです」とは開発者の言葉。

「別世鏡」は、あらかじめ用意した紙ベースの漫画において、続きをデジタルで楽しめる趣向。別室が用意されており、鏡を通じて体験者を3次元から2次元の世界へと誘う。「漫画からリアルへ、リアルから漫画へと次元の境が曖昧になっていく体験をお楽しみください」(開発者)。

「OTOPE (Product by K-)」は、触感と聴感の探求をテーマとした体験型プロダクト。暗闇の中で視覚を遮断して体験する。そこには触ったこともないものに触って身体に付着させる触覚体験、聞いたこともない音を聞く聴覚体験が待っている。モノや素材の持つ声を「聞きわける」ことを目指しているという。目の不自由な人と同じ感覚を共有でき、語り合えることを目指した。

(近藤謙太郎)