WEEKLY TOUR REPORT
米ツアー・トピックス

「第5のメジャー」と呼ばれるプレーヤーズ選手権(5月12日〜15日/フロリダ州)。首位と4打差の2位タイで3日目を終えた松山英樹(24歳)は、最終日最終組でラウンドしたが、「73」とスコアを落として後退。首位のジェイソン・デイ(28歳/オーストラリア)を追撃することができず、通算9アンダー、7位タイに終わった。

 最終日は序盤につまずいて苦しい展開となった。1番パー4は、ドライバーでのティーショットを左ラフに打ち込んでボキー。3番パー3では、ティーショットのボールはピンに重なって飛んでいったものの、わずかにグリーンをこぼれて奥のバンカーに入ってしまった。結果、2打目のバンカーショットもグリーンに乗らず、1.8mのパーパットも外してダブルボギー。振り返ってみれば、ここでのミスが致命的となった。

 上位争いに加わっていながら前半で崩れる展開は、2打差の3位で最終日を迎えた4月のマスターズとよく似ている。マスターズでは1番のボギーを2番で取り返したが、4番、5番で連続ボギー。さらに6番パー3でダブルボギーを叩いて優勝戦線から脱落した。

 その際、松山はラウンド後にこう話した。

「自分の抱えていた不安が、そのまま出てしまった」

 そして、今大会を終えたあとの松山は次のように語った。

「すべてに対して不安がちょっとずつあったのが、悪い方向に出てしまったのかなと思う」

 それぞれ、ほぼ同じような言葉を発している。どうやら松山は、優勝を争うラウンドを前にすると、大きな"不安"を抱えてしまうようだ。それは、大舞台だからこその緊張感なのか、誰しもが受ける重圧なのか、いずれにしても、その不安を解消する方法を見つけられていない、というのが現状だろう。

 ところで今大会、そうした不安に苛(さいな)まれ、気持ちが落ち着いていなかったのは、松山だけではなかった。松山と同組で回った首位のジェイソン・デイも、最終日の朝はとてつもなく緊張していたという。

「今朝は、ものすごく重圧を感じていた。おそらく、これまでの試合で一番大きかったかもしれない。妻にも、そう話した。これまで、僕が3日目を終えてリードしていたのは、4回ある。そのうち、3回は勝っている。だから余計に、『負けられない』というプレッシャーがかかった。でも『負けられないから、絶対に弱気なプレーだけはするまい』、そう誓ってプレーした」

 そうしてジェイソン・デイは、4打差のリードがありながらも、アグレッシブに攻めた。前半はノーバーディー、2ボギーと振るわなかったが、後半は3バーディー、ノーボギーと立て直して、逃げ切り優勝を飾った。

 その傍らで松山は、奇しくもマスターズと同じ7位タイに終わった。

「スコアを伸ばせなかった2日目、下を向いて歩きすぎた。だから、決勝に入ってからは、悪いプレーがあっても『絶対に下を向かない』、そうがんばって歩いたつもり。実際にできていたかどうかわからないですけど......、そこだけは(自分を)評価したい」

 今回は勝ちにつながらなかったものの、マスターズ以降、松山も自分なりに"不安解消"へ試行錯誤を繰り返し、着実に"進化"しているように感じた。

「勝つためには、かみ合うプレーが1日だけじゃなく、2日目、3日目と続かないとダメ。それなのに、最終日はまったくうまくいかなかった。緊張感の中で、どうやってうまく打てるのかわからない。それでも、デイと回って(自分に)足りないものが明確になった。もちろん、それ(課題や問題)をどうやって自分に置き換えて克服していけるか(が重要)、なんですけど......」

 現在、松山は24歳。28歳のジェイソン・デイにしても、最初から自分の気持ちを落ち着かせ、プレッシャーのかかる舞台でうまく対応してプレーできたわけではない。世界ランキング1位になった現在でも、それが毎回、いい方向に行くとは限らない。

 左に池が広がる最終18番パー4。ジェイソン・デイは、2番アイアンで打ったティーショットのボールがフェアウェーに落ちると、ようやく重圧から解放された。ティーグランドから駆け下りたジェイソン・デイは、松山の肩を叩いて何か話しかけた。そしてそのまま、傾きかけた太陽に向かって、ふたりはしばらく並んで歩いていた。

 その姿を見て、ふたりで何を話していたのか、ラウンド後の松山に聞いてみた。すると、彼は「内緒です」と言って笑った。

 マスターズと同じ展開だったが、その内容は違っていた。一歩、一歩ではあるが、松山は確実に前に進んでいる。そんな松山の姿を昔の自分と重ねて、ジェイソン・デイは声をかけずにはいられなかったのかもしれない。

「次は、おまえの番だ」――。

 事実はわからない。だが、ジェイソン・デイが松山を有望視しているのは明らかだ。

 松山はこのあと、2週間のオフを経て、ツアー初優勝を挙げたザ・メモリアルトーナメント(6月2日〜5日/オハイオ州・ミュアフィールド・ビレッジGC)に臨む。さらに進化した姿が、そこで見られることを期待したい。

text by Reiko Takekawa/PGA TOUR JAPAN