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子宮頸がんの原因となるウイルスへの感染を防ぐことによって、子宮頸がんを予防するワクチンがHPVワクチンです。HPVワクチンについて、自治医科大学附属さいたま医療センター産婦人科教授の今野良先生に伺いました。

ワクチンと検診で子宮頸がんは予防が可能

子宮頸がんは、予防できる唯一のがんといわれます。それは、検診によって、早期がんよりももっと早い段階で見つけられることができると同時に、ワクチンを併用することで、原因となるウイルスへの感染を防ぐことが可能だからです。

がんを防ぐワクチンがあるのは子宮頸がんだけで、WHO(世界保健機関)が接種を推奨し、世界100ヶ国以上で使用されています。HPV感染経験のない11歳〜14歳の女子に接種することが最も効率的ですが、45歳までの成人女性にも有効です。
日本では2009年にHPVワクチンが承認され、2010年から中学1年生から高校1年生までの女子を対象に、公費助成によるワクチン接種が行われています。婦人科、小児科のほか、内科でもHPVワクチンの接種が受けられるところがあります。

ただし、現在のワクチンは、子宮頸がんの約70%を引き起こすとされる遺伝子型「16型」「18型」の感染予防を目的としており、すべての子宮頸がんを予防できるわけではありません。そのため、ワクチンを接種した人でも、子宮頸がん検診は必ず受ける必要があります。

副反応について理解し、接種しないことの不利益にも目を向けて

HPVワクチンは、ウイルスの生きた成分やDNAの入っていない不活化ワクチンで、感染性はありません。HPVワクチンは半年の間に3回接種する必要がありますが、万一、その途中で妊娠していることがわかっても大きな問題はありません。

副反応については、海外でもかゆみや発赤などの軽いものは報告されていましたが、定期接種が導入されてから国内で、接種後の失神などが報道されました。失神については、多感な思春期の女子におこりやすい「血管迷走神経反射」によるもので、ワクチン自体が原因ではないと考えられています。
ただ、ワクチンとの因果関係を否定できない持続的な痛みが接種後に特異的に見られたため、2013年6月には厚生労働省から、「国民に適切な情報提供ができるまでの間、HPVワクチンの定期接種を積極的に勧奨すべきではない」という勧告が出されました。

そのため、現在ではほとんど接種率がゼロに近いレベルまで低下しています。一方、国内でのHPVワクチン販売開始以来、ワクチン接種により回避することができた子宮頸がん患者数は1万3000〜2万人、死者数は3600〜5600人と推計されており、今後これを接種しないことによる不利益についても、副反応によるリスクと同様に考えることが必要です。