「子供を産めないことに泣き叫んだ」有働由美子を勇気づけた「子供を産まない選択をした」山口智子の強い言葉

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 4年連続で紅白歌合戦の総合司会を務め、現在は大河ドラマ『真田丸』のナレーションという大役を担っているNHKアナウンサーの有働由美子。老若男女に愛される飾らないキャラクターと、NHK初の女性理事就任も近いのではと噂されるほどの輝かしいキャリアを誇る彼女だが、先日18日、『あさイチ』で飛び出した赤裸々な告白が、いま話題を集めている。

「去年ようやく出産の可能性を諦めて、やっとひとりで生きる自信が出てきた」

 その日の番組の特集は、「どう思う?"子どもがいない"生き方」。今年2月、「FRaU」(講談社)のロングインタビューで女優の山口智子が「私は、子供のいる人生じゃない人生がいい」「子供を産んで育てる人生ではない、別の人生を望んでいました。今でも、一片の後悔もないです」と告白して反響を呼んだが、他方、現在47歳の有働は"産めない"ことに悩んできたというのだ。

 有働によると、まわりの友人たちが結婚ラッシュを迎えたときにも出産したい気持ちが高まったが、大きな仕事を任されるたびにその気持ちも低下、そうこうしているうちに40歳を迎えた。そんなとき、婦人科の医師に「あなた、このままのペースで働いていたら卵巣ダメになって出産できませんよ」と言われたことがきっかけで、"産みたい気持ち"が膨らんでいったという。

「とんでもない間違いをしたのではないか。産む可能性、機能があるのに、無駄にしたんじゃないかと。気が狂ったように泣いたりして病院通いした」
「仕事がもしなくなったら、みんなには子どもが残るけど、私には結局何もないやんって。そう思いたくないから、これで満足だって思おう思おうっていうような。恥ずかしいほど揺れる」

 じつは有働は、昨年発売した初のエッセイ集『ウドウロク』(新潮社)でも、不妊治療の経験について語っている。傍目にはアナウンサーという専門職で腕を磨き、高い評価と絶大な支持を受け、順風満帆な人生を歩んでいるように見えるが、その胸の内では"子をもてない"ということに苦しんできたらしい。

 もちろん、子をもちたいのにもてないというのは、とても辛いことだろう。ただ一方で、その辛さの背景には、「女は子を産んで一人前」という世間からの圧力の存在もある。とくに、安倍政権が掲げる「女性の活躍」とやらは女に対して「働け」「産め」とうるさく、社会にも「女の幸せは子をもち、育てること」といった保守反動的な価値観が強まっている。それゆえ、じつに堂々と"子をもたなくても幸福"と語った山口には、勇気づけられた女性も多かった。

 実際、有働はこの山口の発言について、「よく言ったなと思いました」と言い、「まだ世の中に子どもを産んでお母さんになるほうが多数派」「誰も『そうじゃないよ』って言わないし、なんかどこか心の底に(産んで当たり前という気持ちが)なんとなくあるような気がする」と、女性に向けられるプレッシャーを口にした。

 女性には、産まない生き方だってあるはず──。番組はそうした本来"当たり前"であるべき問題に迫ったが、同時にはからずもあきらかになったのは、世間の風当たりの強さだ。翌日の番組中、視聴者から寄せられた50代男性の意見は、こんなものだった。

「子どもをもたないと主張することが『よく言った』と賞賛されるとは、愚かな女性が増えたものだと落胆します」
「幼稚なエゴを声高に主張する特集でワガママ女が助長しないことを祈ります」
「少なくとも、私の子どもが汗水たらして働いた税金をあなたの老後に使って欲しくないです」

 まさしくこうした声に有働をはじめ、多くの女性たちは苦しめられているわけだが、この投書を読み上げた有働は、一体どんな気持ちだったのだろうか。そう想像すると痛みがこらえきれなくなる。

 だが、だからこそ"女には産まないという選択肢がある"ことをもっと語っていく重要性があるだろう。有名人として先鞭をつけた山口智子は、「AERA」(朝日新聞出版)5月23日号でも、夫・唐沢寿明との関係を語るなかで、再び子どもの問題について言及している。

「血が繋がっているという理由だけで、そこに依存したくないという思いが強い。たとえ血が繋がっていなくても、心から尊敬できる人と時を共にしたい。私自身、子どもを持たないという人生の選択に後悔はないし、選んだからには最高の人生にするぞという覚悟を持って臨んでいます」

 また、山口は前述した「FRaU」のインタビューにおいても、「私はずっと、『親』というものになりたくないと思って育ちました。私は、『子供のいる人生』とは違う人生を歩みたいなと。だからこそ、血の繋がりはなくとも、伴侶という人生のパートナーを強く求めていました」と話していた。

 血縁は絶対なものではない。親との関係に悩む人にとっては、これもまた気持ちを楽にしてくれる大きなメッセージとなったと思うが、山口はこうも述べている。

「人間、最終的にはたった一人でも、スックと大地に立って、美しく完結できるかが、一生を懸けた勝負だと思っています」(前述「AERA」インタビューより)

 山口のように最良のパートナーを得て人生をともに歩む道もあれば、結婚を選ばず、ひとりで進むことにも幸福のかたちはあるはずだと、山口のメッセージからは感じられる。

 世間が押し付けようとする価値観から外れ、自分の脇汗やセックスレスの問題にも忌憚なく発言し、視聴者目線で社会や人生を語る有働の姿勢は、ある意味、とても"美しい"ものだ。山口と同じように、女性には多様な生き方があっていいのだということを、有働には伝えていってほしいと思う。
(田岡 尼)