健康診断は終わりましたか? 健康診断の何がコワイって、ズラリと並んだ検査報告書の、体重や中性脂肪はもちろん、血圧やらコレステロールやらガンマGTやらの「基準値外」ってやつですよね。

ところでこの「基準値」、何を元に計算された数値かご存知ですか? 実は案外ザックリしています。

まず、病気や体に異常のない人の検査値(血圧やコレステロールなどの)を集めます。次にその数値を低いほうから高いほうへ並べます。それから低いほう2.5%分の人の数値と、高いほうの2.5%分の人の数値をカット。合計で5%分をカットします。残り95%の人たちの検査値を「基準値」とするのです。

仮に対象が100人とすると、5%カットで5人が確実に「基準値外」になる仕組みです。つまり基準値外の人は、つねに存在します。たとえ検査を受けた100人がみんな健康で特に悪いところなく、毎日元気に暮らしているとしても、そのうち5人は「基準値外」になるわけです。

職場によっては人間ドックを受ける人もいるでしょう。人間ドックに入ると、検査項目がグッと増えますね。「だから安心よね」と思われるかもしれませんが、人間ドックを受けると、9割がたの人は何からの数値が基準値外になり、「異常」を言い渡されます。理由は簡単。検査項目が30も40もあるので、すべての数値が95%の枠内に入るのは、計算上たいへん狭き門になるからです。

コレステロール220超えもオッケーなの?

みなさんが気にしているコレステロールはどうでしょう。総コレステロールの値は220mg/dL以上で「基準値外」とされますが、これはさらに根拠がないようです。健康診断の有効性について研究している元慶応大学病院の医師・近藤誠先生は、

「この値は95%枠とも関係なくて、日本動脈硬化学会が恣意的に決めたものです。220mg/dL以上で高脂血症と判定されますが、これだと成人女性の何割もが、更年期後だと6割以上が基準値外にされてしまいます。こんな低い値で高脂血症だという国は日本だけです。日本人の女性はコレステロール値が高くても死亡率が上がらないことがわかっています。それなのに日本動脈硬化学会が、こんなに低い上限値に決めたのは、たくさんの人にコレステロール低下薬を飲ませたいからでしょう。コレステロールよりクスリの副作用の方が健康を害するリスクが高いですよ」

また、善玉、悪玉と言われますが、コレステロールはどちらも重要、不可欠だと言います。

「体じゅうの細胞膜やさまざまなホルモンの原材料がコレステロールです。善玉も悪玉もどちらも高くていいのです。280mg/dLぐらいまでは大丈夫ですよ」

と、驚きの総コレステロール善玉説! 基準値の正体を知って、すこしホッとした人も多いのでは? 

検査結果を見るのはいつもドキドキ……。

クスリの副作用や健康情報のウソ・ホントを近藤誠先生と漫画家・倉田真由美さんが徹底解説。『先生、医者代減らすと寿命が延びるって本当ですか?』(小学館刊 1100円+税)好評発売中!