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米国のB2B企業では、2015年頃よりAccount-Based Marketing(以降、ABM)が急速に注目を集めるようになってきた。このトレンドは2016年に入ってからも継続しており、マーケティングテクノロジーで最も期待されている分野である。そこで本稿では、ABMテクノロジーがどのようなものかについて説明しよう。

○米国におけるABMの導入状況

米国では今、ABMが熱い。2016年版のMarketing Technology Landscapeでも、ABMテクノロジーは新しく登場したカテゴリーであり、製品・サービスの購買プロセスにおける顧客やリード(見込み顧客)との関係マネジメントに関する「Social & Relationship」クラスターに分類されている(図1)。

実際のABMテクノロジーへの投資状況はどうなっているのだろうか。ABMテクノロジーの代表的ベンダーであるDemandbaseは、今年4月に実施した自社イベントにおいて、"2016 State of Account-Based Marketing Study"の結果を発表した。それによれば、B2B企業のABM導入は加速しており、急速に組織に受け入れられているという。以下、主な結果を紹介しよう。

・70%以上の企業がABMプログラムを専任でもしくは兼任で運用するスタッフを抱えている。
・58%がパイロットあるいはテストプログラムを展開中である。
・2015年の同調査では、わずか20%の企業が完全なプログラムを展開していたのに対し、2016年は41%が完全なプログラムを展開している。
・62%の企業がABMプログラムを成功させるにはスキルが必要と回答している。
・60%の企業が、緊密にあるいはそこそこにセールス部門と連携している。
・58%の企業が2016年に関連テクノロジーやサービスへの投資を計画している。

○ABMテクノロジーが登場した背景

ABMの考え方自体は特に目新しいものではない。2003年、ITSMA(IT Service Marketing Association)はABMを最初に提唱し、IT業界のマーケティング・アプローチとしては10年超の歴史がある。ITSMAが考えるABMとは「最も重要なアカウントと共に、持続的な成長と収益性を望む企業にとって不可欠な戦略」である。

さらに、ITSMAは、個別のアカウントを1つの市場として扱い、アカウントに明確にフォーカスすることを重視する。また、ITSMAはABMを高度にカスタマイズしたマーケティングキャンペーンを展開するための構造化されたアプローチととらえ、アカウントのビジネスゴールの達成に向けて、セールス、マーケティング、デリバリー部門およびそのエグゼクティブたちと協働することが不可欠と主張する。このように、最終的な意思決定を行うエグゼクティブだけではなく、購買プロセスに関与するあらゆる部門、キーパーソンをまとめて「アカウント」として扱うのがABMの特徴である。

ABMはIT業界では古くから実践されてきたマーケティング手法であるが、IT業界のマーケターだけのものではなく、あらゆる企業向けに製品・サービスを提供する業種のB2Bマーケターのためのマーケティングプラクティスとして変化し始めた。

この背景にはマーケティングテクノロジーの発展がある。例えば、ターゲットアカウント(重要顧客)リストの規模が10〜50社程度であれば、セールス部門だけでプロセスを運用できるし、テクノロジーを利用する必要もない。通常、ターゲットアカウントごとに専属の担当者を配置し、それぞれのアカウントのビジネスニーズに合致するようカスタマイズした製品・サービスを提供する。

しかし、このターゲットアカウントリストが500〜5000社に拡大すると、全アカウントに対して1:1のきめ細かな対応は事実上不可能である。そこで、先行企業では経営資源を効率的に割り当てるために3階層モデルを採用し、キャンペーンを展開している(図2)。

重要なのは、どの階層のターゲットアカウントに対しても一貫性のある顧客エクスペリエンスを提供することであり、サイロ化されたプロセスは完全に自動化する必要がある。ABMテクノロジーは、企業がABMプラクティスを展開する上で、効率性とスケーラビリティの両方を改善するものとして登場したと言えるだろう。

○ABMテクノロジーが期待される理由

B2B企業のマーケティング活動のゴールは、売上の増大であり、売上パイプラインの成長につながるよう、高品質なリード(見込み顧客)をできるだけ多く獲得したい。しかし、多くのB2Bマーケターは、購買プロセスの入口に当たるリードジェネレーションのプロセスに非常に苦労している。

B2C企業と比べ、TVやラジオといった媒体への広告出稿が比較的少ないB2B企業にとって、Webサイトは非常に重要な顧客とのタッチポイントである。だが、Webサイトへの訪問者は必ずしもサイト運営企業にとっての潜在的な顧客とは限らない。Webサイト訪問者の中には、競合調査のために同業他社のマーケター、自社の製品・サービスを売りたいと考える外部のマーケター、企業文化を知りたい求職者も含まれるからだ。

このような訪問者に対して、自社の製品・サービスを買ってもらうためのコンテンツを一律に提供するわけにはいかない。自社の製品・サービスを購入する可能性が高く、かつ購買に関して意思決定を持つ人物に有益な情報をピンポイントで提供する必要がある。

ABMテクノロジーは、ターゲットアカウントリストの効率的な作成と、その人物の意思決定に役立つパーソナライズしたコンテンツの提供を支援する一連のテクノロジーとして期待されている。

(冨永裕子)