By Darrell A.

定期的な運動は肥満を防ぐことができ、健康的な体を維持することができるのは周知の事実。さらに運動ががん細胞の増殖を抑制する可能性があるなど、運動ががんに良い影響をもたらすという考え方は以前から存在しますが、運動による好影響は13種類もの異なるがんに及ぶことを示す144万人規模の研究結果が発表されました。

JAMA Network | JAMA Internal Medicine | Association of Leisure-Time Physical Activity With Risk of 26 Types of Cancer in 1.44 Million Adults

http://archinte.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=2521826

Exercise Tied to Lower Risk for 13 Types of Cancer - The New York Times

http://well.blogs.nytimes.com/2016/05/18/exercise-tied-to-lower-risk-for-13-types-of-cancer/

多くの研究が座ってばかりいる人より定期的に運動する人の方が特定のがんになりにくいことを示しています。一方で、それらの研究は乳がん・結腸がん・肺がんなどのいくつかの有名ながんに焦点を当てたものであり、運動が他のがんにどのような影響を与えるのかは、詳しくわかっていない状態でした。

アメリカ国立癌研究所、ハーバード・メディカル・スクール、その他アメリカ・ヨーロッパの研究者らによる研究チームは、144万人の参加者を対象に運動が26種類のがん発症率へどんな影響を与えるのかを調査した長期的な観察研究を、アメリカ医師会のジャーナル・JAMA Internal Medicineで公表しました。10年以上にわたってさまざまながんと運動の関連性を観察した結果、運動が13種類のがんの発症リスクを軽減させていることがわかったとのこと。

初期の研究は参加者に体重・複数の健康指標・食事・運動習慣を尋ね、10年以上にわたって参加者の病気や死亡などの遷移を追跡するという方法で行われました。この観察結果で定期的な運動で発がん率に影響がある可能性が確認できたため、十分な研究データを集めるべく、アメリカ国立癌研究所の主導で12の大規模研究から144万人に上る成人男女のデータを集めました。それらのデータを精巧な統計的手法を使って分析した結果、適度・または活発な運動を行っている人、および早歩きのウォーキングやジョギングを行っている人は、座ってばかりいる人に比べて、複数のがんの発症率が著しく低いことがわかったとのこと。



By Peter Mooney

運動により発症リスクの減少が確認されたのは乳・肺・結腸・肝臓・食道・腎臓・胃・子宮内膜・血液・骨髄・頭頸部・直腸・膀胱の13種類のがん。運動量が少なくても、ほとんど運動をしない人よりは運動する人の方が、これらのがんの発症リスクが減少する傾向にありました。さらに、最も運動を行っていた上位10%のグループと、最も活動的でなかった下位10%のグループを比較すると、発がん率になんと20%もの開きが確認されています。

一方で、この2つのグループによる比較から、運動をよくするグループは悪性黒色腫(メラノーマ)や成長の遅い前立腺がんの発症リスクが高いこともわかっています。研究を主導したアメリカ国立癌研究所のスティーヴン・ムーア氏は、運動をよくする人は外に出る機会が多い傾向にあり、日焼けによって悪性黒色腫になる危険が増加していると推測しています。また、よく運動する人は健康診断を受ける回数が多い傾向にあり、無痛性で発見されづらい前立腺がんが発見されやすいためであるとのこと。

運動をたくさんするほどに13種類ものがん発症リスクを軽減できるわけですが、いくつかの別のがんの発症リスクは増加することになります。ただし、運動にはほかにも肥満の解消など、数多くの健康上の利益が得られるため、相対的に運動をしている人の方が健康的でいられると言えそうです。なお、この研究を取り上げたThe New York Timesは、これは観察研究のため、運動によるがんリスクの減少を直接証明しているわけではないことに留意する必要がある、と述べています。