動脈瘤内部では血流が溜まり、血栓ができやすくなる。それが剥がれ落ちて細い動脈を詰まらせ、腎臓障害、下肢の血流減少が起きることもある。腹部大動脈瘤は直径5センチ以上、総腸骨動脈でも3センチ以上であれば1年以内に1割以上が破裂する危険性があるとされるが、これ以下のサイズでも破裂する可能性があるという。

 厄介な大動脈瘤破裂だが、家族に動脈瘤の人がいるケースや、女性や喫煙者は破裂しやすいことが分かっている。
 東京社会医療研究センター主任の村上剛士氏が語る。
 「大動脈瘤の予防と治療で大事なことは“血圧を下げる”ことと“禁煙”の二つ。降圧薬による治療で破裂リスクは約2割減り、逆に喫煙継続で年間0.4ミリほど直径が大きくなるという報告があります。腹部大動脈瘤が発見されれば、超音波などでの慎重な経過観察となりますが、5センチ以上になると外科的治療が必要になります」

 その治療法は大きく分けて二つある。一つはカテーテルの中にステント(伸縮可能な金属を取り付けた人工血管)を収納する「ステントグラフト内挿術」と、外科手術で人工血管を縫いつけて埋め込む「人工血管置換術」だ。
 「『人工血管置換術』の手術時は、体温を低く下げた方が脳梗塞などの合併症を起こしにくいと考えられ、かつては20℃程度、最近では25〜28℃に保つのが主流でした。しかし現在は、そこまで体温を低くすると脳の血管が縮み、逆に脳梗塞を起こしやすいという研究報告もあり、最も安全に手術が行われる体温としては、32℃ぐらいがいいと言われています」(前出・村上氏)

 実際に、ある研究では32℃グループ23人と、25℃のグループ27人で比較した場合、前者の方が手術時間は2時間以上短く、出血量も少なく、入院期間が短かったという。
 ただし、32℃では30分以内に血管の吻合を終えなければ肝臓や腎臓などの臓器にダメージを与えてしまう。
 「そのことからも『人工血管置換術』は高い技術が要求されるため、普及しくいとされています。大がかりな手術でもあるので、患者にとって“どの治療をどこで受けるか”の選択も重要事項であることは間違いありません」(健康ライター)

 静かに忍び寄ることから“サイレントキラー”と呼ばれる血管のこぶ・大動脈瘤の治療を受けるなら、少なくとも病院の手術件数と治療成績は事前に調べる必要がある。もっとも、前述のように、家族の病歴や自分の生活習慣病の度合いを知っておくことも大切だ。