松尾文夫・元共同通信ワシントン支局長が講演し、「日本が率先して韓国、中国など和解することが急務である」と強調した。その上で、安倍晋三首相は甚大な被害を与えた中国の南京や重慶を訪れ、献花するとともに、韓国の従軍慰安婦に直接謝罪すべきだと訴えた。

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オバマ米大統領の広島訪問を前に、『オバマ大統領がヒロシマに献花する日』を7年前に刊行した松尾文夫・元共同通信ワシントン支局長が日本記者クラブで講演した。戦争で亡くなった人たちのために、お互いに祈るという鎮魂の儀式を行うべきだとして、同大統領の広島訪問を評価。「日本が率先して韓国、中国など和解することが急務であり、日本外交のチャンスでもある」と強調した。その上で、安倍晋三首相は甚大な被害を与えた中国の南京や重慶を訪れ、献花するとともに、韓国の従軍慰安婦に直接謝罪すべきだと訴えた。松尾氏は共同通信で論説委員なども務め、2002年からフリージャーナリスト。発言要旨は次の通り。

日本と米国は目に見える形での和解を果たしていない。戦争で亡くなった人たちのために、お互いに祈るという鎮魂の儀式を行っていないからだ。第2次大戦を戦った米英とドイツが、1995年に独ドレスデンで鎮魂の儀式を共同で行っている様子を出張先のワシントンのテレビで観て強い衝撃を受けた。ドレスデンは大戦中、連合軍の夜間無差別爆撃を受け、市民ら3万5千人が亡くなった地。空襲50年を機に、敵国同士だった政府と軍の代表者が並んで戦没者を追悼し和解の成立を宣言する姿は脳裏に焼き付いた。

疎開先の福井で空襲を生き延びた人間として、何とか日米の間でも「ドレスデンの和解」ができないか。いつの日にか、米国の大統領が広島を、日本の首相が真珠湾をそれぞれ訪ね、鎮魂の花を捧げられないか考えた。

2005年の戦後60年の夏、私は「ブッシュ大統領(当時)に広島の原爆死没者慰霊碑に花束を手向けてもらおう」という提案を「中央公論」と米国の経済紙「ウォールストリート・ジャーナル」に寄稿。2009年に『オバマ大統領がヒロシマに献花する日』を出版して呼びかけた。

オバマ氏には、ぜひ広島で包括的な演説をしてほしい。「核なき世界」を訴えた2009年のプラハ演説の総括は当然にしても、もう一歩踏み込み、依然として完全なものになっていない東アジアの和解に、米国として貢献する決意を示すものであってほしい。

韓国ではオバマ広島訪問について「日本が加害者という立場を覆い隠す結果につながる可能性がある」という警戒論も出ている。私が日米で提案したときも、米国のアジア系の学者が「一瞬でも日本人が被害者の顔をするのは許せない」と真顔で私に語ったこともある。安倍晋三首相にとって、「広島の花束」に「真珠湾の花束」でこたえることは、今も東アジア情勢の根っこに残る日米間の「トゲ」を取り除くために、大きなチャンスとなる。

日本が広島にオバマ大統領招き「被害者の顔」をすることに対し、太平洋戦争で日本軍に侵略された国々は納得していない。日本が率先して韓国、中国など和解することが急務であり、安倍外交のチャンスでもある。安倍首相は甚大な被害を与えた中国の南京や重慶を訪れ、献花すべきだ。韓国にいる元従軍慰安婦の方々にも直接会って謝罪することも必要だ。それで遺恨がすぐに消えるわけではないが、未来に向けた大きな一歩となる。(八牧浩行)