中国のチベット自治区は、同じような独立運動を抱える新疆ウイグル自治区と並ぶ中国の“火薬庫”。最近もチベット独立運動への関与を理由に、独国会議員の中国入国を拒否するなど、神経をとがらせている。写真はダライ・ラマ14世。

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2016年5月20日、ヒマラヤ山脈の麓に位置する中国チベット自治区。インドを拠点とするチベット亡命政府の独立運動が続く。同じような独立運動を抱える新疆ウイグル自治区と並ぶ中国の“火薬庫”でもある。中国政府は最近もチベット独立運動への関与を理由にドイツ国会議員の入国を拒否するなど、神経をとがらせている。

チベットには1949年の新中国成立から間もない51年、人民解放軍が進駐。チベット族側の反発が広がった。59年の動乱を軍が鎮圧。チベット仏教最高指導者のダライ・ラマ14世はインドに脱出し、亡命政府を樹立した。65年、中国でチベット自治区が成立。その後も抗議行動が続き、89年にはラサに戒厳令が敷かれた。2008年にもラサなどで大規模な騒乱が起きた。

中国によるチベット統治については国際社会の批判が強く、米メディアによると、米国の国際宗教自由委員会(USCIRF)は2016年度の年次報告書で、中国を宗教の自由への違反が「特に懸念される国」に再指定。昨年10月、中国の習近平国家主席が英国を公式訪問した際、ダライ・ラマ14世と親交があるチャールズ皇太子は、エリザベス女王主催で開かれた歓迎の公式晩さん会を欠席した。

中国入国を拒まれたのは、独キリスト教民主同盟(CDU)のメンバーで連邦議会議員のマイケル・ブランド氏。5月下旬に連邦議会の代表団の一員として訪中する予定だったが、独メディアは「過去にチベット独立関連の活動に参加していたことが原因」と報じた。ブラント氏も「数週間前、独駐在の中国外交官が訪ねて来て私に圧力をかけた。ネットに掲載しているチベット関連の発言を削除するよう求められたが、拒否した」と明かした。

中国外交部の陸慷(ルー・カン)報道官は「人権問題に関して中国に言及した人物は彼1人ではなく、その多くの人が中国に訪れている」と指摘する一方で、「彼が招かれなかったのは、かたくなにチベット独立勢力を支持したからだ。これは独政府が堅持する中国の政策に公然と反する間違った行為である」と言い切った。

チベット独立派と関係を断つことは、芸能人にも求められる。中国メディアによると、今年3月、中国の人気歌手や香港の俳優らがインドで開かれたチベット仏教の儀式で、亡命政府の指導者と同席していたと報じられると、チベット自治区の呉英傑(ウー・インジエ)共産党委員会副書記は「ダライ集団との接触は、その目的が何であれ、われわれは断固反対する。スターは自らの行動に責任を持つべきだ」と警告した。

折しも、ダライ・ラマ14世は5月8日から日本を訪問。在日チベット人らと交流した。しかし、この間、日本メディアでは、著名なノーベル平和賞受賞者の動静に関する記事は、ほとんど見当たらなかった。毎年のように来日しており、ニュース価値はあまりない、と判断したとみられる。何かに気を使ったのでなければ幸いだ。(編集/日向)