オバマ米大統領の被爆地・広島訪問について、中国は訪問により、日本が戦争の「加害国」でなく、「被害国」とされかねないと警戒感を強めている。写真は広島の原爆ドーム。

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2016年5月21日、オバマ米大統領の広島訪問が27日に迫った。現職大統領として初の被爆地訪問について、日本を「侵略戦争の加害国」とする中国は、訪問により「被害国」と位置付けられることを警戒。共産党系メディアも「日本政府はアジアの国への謝罪に前向きではない一方、米国の謝罪獲得の道を黙々と進んでいる」などと批判している。

中国国営・新華社通信は今月10日、オバマ大統領の広島訪問が決まった直後に速報。中国の高い関心をうかがわせたが、同時に「第2世界次大戦の早期終結のために原爆を投下したとの米側の立場を否定するものではない」とする米国政府の見解を付け加えるのを忘れなかった。

中国外交部の陸慷報道官は翌11日の記者会見で「原爆投下が日本の軍国主義分子の幻想を粉砕した」と主張する一方、犠牲となった一般国民への「同情」にも言及。さらに「日本が各国要人の広島訪問を計画するのは、軍国主義の道を再び歩まないことを世界に示す目的であってほしい」と述べ、日本が「被害国」の側面を強調することに懸念を示した。

中国共産党中央委員会機関誌・人民日報の国際版「環球時報」は社説で「日本はこの問題で自らを戦争の被害者であるかのようなイメージを形成しようとしている」と指摘。「日本の右翼は一貫して第2次世界大戦の凶暴で愚かな侵略を洗い流そうとし、彼らはなぜ2発の原爆が日本に落とされたのかを真剣に考えようとしない」「日本政府はアジアの国への謝罪に前向きではない一方、米国の謝罪獲得の道を黙々と進んでいる」などとも非難した。

中国新聞網も「加害者だった日本に謝罪するべきなのか」との記事で、この70年余りの間、現職の米大統領が広島と長崎を訪問してこなかったことについて、米国内で訪問が謝罪と受け取られるのを懸念していたためだったと紹介。米国の保守派の人々には「日本は原爆を落とされるだけの理由があった」ということを日本に伝えなければならない、といった考え方も根強いとした。

その一方で、中国国民の関心は低いよう。環球時報がネット上で広島訪問について「ホワイトハウスは謝罪しないとしているが、韓国メディアは日本の“免罪符”になるのではと懸念している。あなたはどう思いますか?」と前置きして実施したアンケートによると、「気になる」との回答は17%にとどまり、「気にならない」が83%に上った。

中国首脳が広島を訪れたことはないが、同じ被爆地・長崎を訪問したことはある。1983年11月、中国共産党の胡耀邦総書記(当時)は、中曽根康弘首相(同)との首脳会談などのため来日した際、中国の指導者として初めて長崎市の原爆爆心地跡の平和公園を訪れ、平和祈念像に献花している。

原爆投下から70年の節目となった昨年8月6日の「広島平和記念式典」には、キャロライン・ケネディ駐日米国大使や核保有国の英国、フランス、ロシア代表が参列。事実上の核保有国とされるインド、パキスタン、イスラエルも出席したが、中国は欠席だった。(編集/日向)