モテ車を解説する「週刊ポスト」連載の「死ぬまで カーマニア宣言!」。これまでにクルマを40台買ってきたフリーライター・清水草一氏(54)が、ヤング・クラシックブームに乗って人気が上昇しているマツダ・ロードスターについて解説する。

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 ご同輩諸君。先日、マツダ・ロードスターが「世界カー・オブ・ザ・イヤー」の大賞とデザイン賞をダブル受賞したというニュースがあった。

「世界カー・オブ・ザ・イヤー」は、25か国・66人の選考委員によって選ばれる。これまでの受賞車を見ると、VW・ゴルフや日産・リーフなど、先進性と普遍性を兼ね備えたスタンダード車が中心で、スポーツカーの大賞受賞はロードスターが初めて。とにもかくにもおめでたいことである。

 確かにロードスター(現行モデルは4代目)は素晴らしいクルマだ。軽量かつ小柄でグラマラスなボディはまるで女優。走りも実に楽しい。見た目や乗り心地も上質で、美女との温泉ドライブにもうってつけだろう。

 その一方で、初代ロードスターの人気も、今静かに上昇している。初代ロードスターとはつまり、「ユーノス・ロードスター」と呼ばれたあのクルマだ。当時は「ユーノス」と略されることも多かったが、ユーノスとは当時マツダが展開していたディーラー網の名称で、トヨタで言えば「トヨペット」とか「ネッツ」みたいなもの。車名はロードスターだ。

 初代ロードスターが発売されたのは1989年。すでに27年を経ている。その間、カーマニアの間では根強い人気を保ち続けていたが、最近になって人気が上昇気味なのである。背景には、近年のヤング・クラシックブームがある。クラシックカー一歩手前くらいの、適度に古い中古車を愛でる趣味に、ロードスターはうってつけなのだ。

 ごく最近、初代ロードスターの中古車を手に入れた筆者友人の伊達氏(48歳)は、購入理由をこう説明する。

「ロードスターが登場したのは、自分が20歳の頃でしたが、天使のようなクルマだと思いました。それが今、ちょうどいい枯れ感が出ている気がします。宮沢りえみたいな感じでしょうか」

 彼が買ったのは、極めてノーマルに近い希少な個体。1996年式・走行約10万kmながら、ヘタッた部品を交換するなどしっかり整備されていたため、価格は約100万円と平均相場の2倍だった。ネット上に掲載された写真や諸条件に一目惚れし、わざわざ飛行機に乗って宮崎県まで買いに行ったという。

 私もチョイ乗りさせてもらったが、コンディションの良さもあって、軽くてダイレクトで優しい乗り味は、現行モデルに色なかった。加えて20年の歳月の重みがジワリと効く。木造の校舎に感じるような郷愁で胸がいっぱいになる。

 ヘッドライトのスイッチをひねると、丸目がパカッと持ち上がった。そう、ロードスターはこの初代だけ、格納式のリトラクタブルヘッドライトなのだ。持ちあがった両まぶたを見ながら運転していると、昔大好きだった曲を聞いたときみたいに、目の奥に熱いものを感じた。

 オッサンにとって、最新である必要は特にない。むしろ古い方にこそ価値があるのかもしれない……。

※週刊ポスト2016年5月27日号