血管の“こぶ”は、50代から急に増えるという。国内での正確な頻度は不明だが、海外では60歳以上の男性の5%以上との調査結果も見られ、米国では毎年20万人が新たに発見されている。
 東邦大学医療センター大森病院循環器内科・笹島雅彦医師が説明する。
 「この“こぶ”は、身体で最も太い血管(大動脈)をはじめ、首(頸動脈)や下肢(膝)まで至る所にできます。気を付けたいのは、お腹の大動脈にできる腹部大動脈瘤、へその辺りから左右の足に向かう2本の中動脈にできる総腸骨動脈瘤、それに、膝の裏にできる膝窩動脈瘤です。いずれも“こぶ”ができやすく、破れると致命的になるためです」

 これらの“こぶ”が大きくなり破裂するのが、大動脈瘤破裂だ。昨年11月に急死した俳優の阿藤快さん(享年69歳)の死因も、腹部大動脈破裂と報じられている。
 腹部大動脈は正常であれば直径およそ1.5〜2センチだが、腹部大動脈瘤の場合はその1.5倍以上に拡大する。ただし、腎臓から下の血管では個人差が大きいため、便宜上、直径が3センチ以上を動脈瘤とみなしている。

 そもそも血管は、加齢や高血圧、糖尿病といった生活習慣病や、炎症などによって硬く厚くなる。
 「一律に厚くなるのではなく、一部の血管壁の組織は逆に脆弱になることがある。そこに圧力がかかることで、血管がこぶ状に膨らむのです。これに喫煙などによる酸化ストレスや、脂質などが溜まった動脈硬化粥種、慢性炎症などが加わると、3層からなる血管壁の真ん中の膜を変性・破壊させ、破裂につながってしまうのです」(前出・笹島氏)

 大動脈は高い圧力で全身に血液を送っているため、いったん破裂すると大量出血となり、脳、脊髄、肝臓、腎臓など重要臓器への血流が滞る。破裂した場合の死亡率は80〜90%にも上るのだ。
 大動脈瘤破裂で命を落とさないためには、とにかく「“こぶ”の破裂を避ける」ことだ。
 心臓血管、循環器系の専門家が語る。
 「大動脈瘤は、一度できると縮小しません。大きくならないようにするしかない。ですから、早期発見がカギになるのです。しかし、大動脈瘤が神経を圧迫して声がかすれるなどの症状が出ることはありますが、その状態になるのはまれで、ほとんどが無症状。患者さんの多くは、別の検査時に偶発的に血管の膨らみが見つかっています。他の疾患のリスクも高くなる50歳以降に大動脈瘤破裂が増えることを考えると、健康診断や人間ドックなどの検査を定期的に受けることが“こぶ”の早期発見につながりやすい」

 血管に“こぶ”ができても、多くの場合は痛くもかゆくもない。発見のためには、超音波検査やMRI・CTなどの検査を受けなければ大抵は分からないということだ。
 「実際に、腹部動脈瘤では、肝臓病や腹痛でお腹の超音波検査をした時に偶然見つかったという専門医は多いといいます。ただし、“こぶ”が大きくなると、拍動を感じたり、身体の外から拍動する腫瘤に触れるようになる。また、周囲の組織を押しつけて腰の痛みや腹部の痛みなどが出てくる場合もあります。さらに“こぶ”が急に大きくなったり血管壁が裂け始めて、腹部の激痛や拍動を感じるようになりますが、その時はすでに外科的治療を受けなければ助からない状態です」(別の専門医)