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●改正のポイント
5月21日から、「電気通信事業法等の一部を改正する法律」が施行される。その中には、海外から持ち込まれるスマートフォンなどの利用に関する電波法の一部改正が含まれており、施行以降、海外端末の取り扱いが大きく変わることになる。

この法律は、電気通信事業法、電波法、放送法のそれぞれ一部を改正する法律で、光回線の卸売りサービスなどに関する制度整備や携帯電話網の接続ルールの充実、ドメイン名の名前解決サービスに関する信頼性などの確保、といった改正が行われる。5月22日に交付され、「1年未満で施行」と定められていたことから、5月21日の施行となった。

その中に、「海外から持ち込まれる無線設備の利用に関する規定の整備」を目的とした改正がある。これによって、海外から日本に持ち込まれた技適マークのないスマートフォンで、無線LANや日本のSIMが利用できるようになる。

改めて今回の改正のポイントをおさらいしたい。

○90日間であれば、無線LANとBluetoothが利用可能に

日本では、電波を発する機械の利用に関して一定の規制がある。電波は混信などの問題があるため、無秩序に利用を認めると、既存の電波を使用する機械の誤動作が起きる危険があるからだ。そのため、一定の技術基準(技術基準適合証明など)をクリアし、認可された機器しか電波を使うことができない。認可された機器にはすべて技適マークが付与されており、端末にシールで貼られているか、画面上で確認できるようになっている。

認可が必要な電波には携帯電波、無線LAN、Bluetoothも含まれており、技適マークのない端末を国内に持ち込み、電波を発することは法律上認められていない。これが基本的な原則で、施行後も変わらない。

今回の改正法の第2条には、電波法の第4条に次の項目を追加すると記載されている。

「本邦に入国する者が、自ら持ち込む無線設備(次章に定める技術基準に相当する技術基準として総務大臣が指定する技術基準に適合しているものに限る。)を使用して無線局(前項第三号の総務省令で定める無線局のうち、用途及び周波数を勘案して総務省令で定めるものに限る。)を開設しようとするときは、当該無線設備は、適合表示無線設備でない場合であつても、同号の規定の適用については、当該者の入国の日から同日以後九十日を超えない範囲内で総務省令で定める期間を経過する日までの間に限り、適合表示無線設備とみなす。この場合において、当該無線設備については、同章の規定は、適用しない。」

上記の「総務省令で定める無線局」とは、無線LANを搭載した端末とBluetoothを搭載した端末だ。具体的には、小電力でかつ2.4GHz帯、5.2GHz帯、5.3GHz帯、5.6GHz帯の周波数の電波を使用する無線LAN機器、Bluetooth機器になる。これに当てはまるのは、スマートフォン含む携帯電話、携帯ゲーム機、PC、Bluetoothヘッドセット、Bluetoothスピーカーなどということになる。基本的には子機になるものなので、Pocket WiFiのような携帯型を含む無線LANルーターは認められていない。

国内の無線LANルーターなどに接続する“子機”としての利用が可能になる、というものだ。ただし、スマートフォンやPCでのテザリング機能は、2.4GHz帯に限っては、「テザリングで一般的に使われる周波数帯である」という総務省判断から利用可能だ。

もう1つのポイントは「技術基準に相当する技術基準として総務大臣が指定する技術基準に適合しているものに限る。」という文面。無線LAN端末に関しては「ITU-R勧告M.1450-5等に定める技術基準に準拠しているもの」とされており、これは米国のFCC認証や欧州のCEマークが相当する。無線LANの場合はさらにWi-Fi Allianceの認証である「Wi-Fi Certified」認定ロゴが必要。Bluetooth端末の場合は「Bluetooth SIG認証」のみが要求されている。

これらに加え、短期滞在の査証が免除される国・地域からの訪日観光客に対応する在留期間が、基本的には90日とされていることを踏まえて、端末が持ち込まれた日から90日以内という制限が設けられた。

「端末を持ち込んだ人が使う」ことが前提になっている点も注意が必要だ。総務省の説明では、企業が製品を持ち込んでデモをする、といった場合でも、説明員が自分で持ち込み、自分で使う場合には許可されると考えて良さそうだ。

いずれにしても、今回の改正では、FCC認証、Bluetooth SIG認証といった指定の認証はあるが技適マークのないスマートフォンなどを日本に持ち込んだ場合でも、無線LANやBluetooth機能をオフにせず、90日間は利用できる、ということになる。

●海外で購入したスマホが使える?
○海外スマホに日本のSIMを挿しても使えるように

改正のもう1つの大きなトピックスが、携帯電波の利用に関するものだ。無線LAN・Bluetooth端末に関係した改正とは別の電波法の一部改正も行われ、こちらも5月21日から施行される。

海外から持ち込んだ技適マークのないスマートフォンは、5月21日以前は無線LANとBluetoothは利用できず、海外のSIMを挿して国際ローミングを行う場合に限って、携帯電波を使った通信を行うことはできた。これは電波法第103条の5にもとづいて、総務大臣の許可を受けた通信事業者の包括免許でカバーされていたからだ。

今回、この第103条の5も改正。「第1号包括免許人は、第2章、第3章及び第4章の規定にかかわらず、総務大臣の許可を受けて、本邦内においてその包括免許に係る特定無線局と通信の相手方を同じくし、当該通信の相手方である無線局からの電波を受けることによつて自動的に選択される周波数の電波のみを発射する外国の無線局(当該許可に係る外国の無線局の無線設備を使用して開設する無線局を含む。)を運用することができる。」とあり、丸括弧内の文面が追加されている。

この改正のポイントを簡単に言うと、「外国で開設された端末を国内に持ち込み、国内のSIMを使って携帯電波で通信することが可能になる」ということのようだ。

今までは技適マークのないスマートフォンで日本国内のSIMを使い、国内の携帯ネットワークに接続することは違法だった。最近は日本の空港でもプリペイドSIMが販売されているが、訪日外国人がそれを購入して自分のスマートフォンに挿して使う、といった場合、本来技適マークのある端末以外は使えなかったのだ。

ただ、訪日外国人によるデータ通信のニーズは大きく、無線LAN、Bluetoothと同様に規制を緩和した、というのが今回の改正だ。

基準としては、「ITU-R勧告M.1450-5等に定める技術基準に準拠しているもの」であることは変わらない。FCC認証・CEマークなどが当てはまり、これらのマークが確認できる端末であれば、日本のSIMを購入して使うことが違法ではなくなるわけだ。

問題は「第1号包括免許人」が総務大臣の許可を得る必要があるという点。第1号包括免許人であるため、例えばドコモが許可を得たら、同じネットワークを使うMVNOも自動的に許可される。この許可に関して、ドコモとソフトバンクはすでに総務省に申請しており、KDDIも申請に向けて準備を進めているという。これが許可されたあとは、国内のSIMを挿して使うことができるようになる。ただ、事業者が申請して総務大臣が許可を出したかどうか一般には分からないという問題はある。

さて、ここで気になるポイントは、新たに追加された「当該許可に係る外国の無線局の無線設備を使用して開設する無線局を含む」という点だ。総務省の説明では、「海外の通信事業者のSIMを使って海外で利用可能なスマホなどの端末」ということになるようだ。通常、外国人は自国でスマートフォンを購入し、自国の携帯キャリアと契約をしてSIMを挿して利用する。その端末を持ち込んだときに、今回の改正が適用される。

つまり、法律上は「外国人である」ことや「開設された際の契約」は問題にされていない。

今回の改正は「技適マークのない訪日外国人のスマートフォンで、日本のSIMを使う」ことを認めるために行われたものだが、その規定はそのまま日本人にも適用されるため、日本人であろうとも海外で買って開設した技適マークのないスマートフォンを日本のSIMで使うことができる、ということになる。

○違法になる場合も

総務省側はこうした使い方に関して「法律上は確かにできるが……」(総合通信基盤局移動通信課)と言葉を濁す。国際ローミングには90日制限の規定もないため、今回の改正でも日本のSIMを90日間以上使い続けることも法律上の規定はない。

無線LAN、Bluetoothは90日間の縛りがあるため、その期間が過ぎれば無線LANもBluetoothも使えないスマートフォンというわけで、利便性が大きく損なわれる。こうした端末を使い続けることは現実的ではないし、誤って無線LANやBluetoothをオンにしてしまった場合、入国後90日を超えていれば明確に違法になるため、利用はお勧めできない。

また、少なくとも海外で利用開始したスマートフォンである点は必要で、海外通販で購入するなどして海外で開設されていない端末には適用されないだろうし、基本的には技適マークが確認できる端末を使うべき、というのは従来通りで変わらない。

あくまで、「海外からの訪日観光客向けの施策である」という点は念頭に置いておくべきだ。とはいえ、少なくとも訪日外国人の利便性が大きく向上するのは間違いがないだろう。

(小山安博)