HONZ代表・成毛眞氏

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 台湾の鴻海精密工業に買収されたシャープ、不適切会計問題に揺れる東芝など、日本の家電メーカーには厳しいニュースばかりが続いている。しかしながら、長年培ってきた技術力、商品開発力は伊達ではない。訪日中国人が欲しがるのも、やっぱり日本の家電だ。いま一度、「日の丸家電」の強みを見直そうではないか。

 マイクロソフト日本法人の元社長、現在は本の紹介サイトHONZ代表でコンサルタントとしても知られる成毛眞氏は、最近の日の丸家電に「日本らしさ」が戻ってきたと言う。

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 日の丸家電の強みは、「これが欲しい!」という要素が入っていることだ。

 僕の自宅はリビングが広く、そこに65インチの大型テレビがある。テレビから仕事机まで5m離れていて、部屋でテレビの音声を聞くには音量をかなり大きくする必要があった。

 そこで発見したのがソニーのテレビ用ワイヤレススピーカー(SRS-LSR100)だった。単にテレビの音を手元のラジオに似たスピーカーから出すというだけのものだが、これを買ったら音声が聞き取りやすく、家の中がかなり静かになった。最初あまり期待してなかったが、ここ数年で最も満足した家電のひとつだ。

 ソニーはカメラ関連機器も好調で、コアユーザーはソニー製に移行している。“思いもよらない製品”を作るという、往年のソニーらしさが戻ってきた。

 一方で最近、最も画期的と感じた家電製品は日本のバルミューダの高級トースター。2万円以上する商品なのに客は「クロワッサンがカリカリに焼ける」と喜んで買う。「お前、ふだんクロワッサンなんて食べなかっただろ」とツッコミたくなる人まで買っている。

 バルミューダの若手社長は「世界一のトーストを食べたい!」という思いを製品にして大ヒットした。つまり、誰も見たことのない製品さえ作れば、新しい需要が生まれるわけだ。

 マーケティングの巧拙とヒットには思われているほど関係もない。私が買ったソニーのスピーカーも最初はけなされたけど、フタを開けると結構売れた。

 今後はスマホとの連動が家電のカギを握る。今、ビジネスがスマホと連動していないのは家電だけだ。

 例えば、家にある電化製品の全電源をスマホでオフにできる機能をつければ絶対に売れる。漏電防止のため、家を出る時に家中の電気を消したことを何度も確かめ、外出中もソワソワする人は一定数いるからだ。

 日本人は未来の大目標に到達するより、目先のことにコツコツ取り組むことが得意だ。モノ作りに必要なのは、細かな工夫を延々と続けること。テレビも8Kや3Dではなく、ちょっとした機能の追加やモデルチェンジをすれば、必ず買い替え需要が生まれる。

 友人のホリエモン(堀江貴文氏)とよく話すのだが、家電業界にはビジネスチャンスはいくつもある。日の丸家電にはまだ伸びしろとチャンスがあるとも言える。

●PROFILE
なるけ・まこと 1955年、北海道生まれ。マイクロソフト日本法人社長を経て、投資コンサルティング会社インスパイア設立。現在、早稲田大学客員教授ほか、書評サイトHONZ代表を務める。近著に『これが「買い」だ 私のキュレーション術』(新潮社)がある。

※SAPIO2016年6月号