李明賢・中国国民党中央文化伝播委員会副主任委員は、「蔡英文氏は制度改革策を打ち出しており、馬英九氏も協力を約束している」と指摘。台湾は変革の時代を迎えているとし、「国民党は若者から支持が得られるような政党に変わっていかなければならない」と訴えた。

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台湾で5月20日、馬英九・国民党政権から蔡英文民進党政権に交代した。これを前に、政官財言論界の有力者6人にインタビューした。李明賢・中国国民党中央文化伝播委員会副主任委員は、「蔡英文氏は積極的に旧制度の改革策を打ち出しており、馬英九氏も協力を約束している」と指摘。台湾は変革の時代を迎えているとし、「国民党は今後、若者から支持が得られるような政党に変わっていかなければならない」と訴えた。(聞き手・ジャーナリスト相馬勝)

<李明賢氏>1973年9月30日、台湾屏東県生まれ。台湾紙「聯合報」や「自由時報」「中國時報」で記者活動を続け、同紙政治部副部長などを経て、現職。台湾のテレビの多くの討論番組に出演する人気コメンテーターとして活躍している

――今年1月の総統選挙や立法院委員選挙では、国民党は歴史的な大敗を喫しましたが、この原因について、どのように分析していますか?

李明賢副主任委員=今回の選挙での敗因は2つあります。それは経済の悪化と青年層の国民党離れです。まず、よく言われるのが、経済の悪化です。ご存知のように、馬英九総統は2008年5月の総統就任に当たって、公約に「633」という数字を掲げました。6%の経済成長率、1人当たりの年間の平均所得が3万ドル、3%以下の失業率というものです。

ところが、昨年の経済成長率は前年比0.74%増でした。昨年の平均年収の伸び率は1%台です。また、14年の失業率はほぼ4%台です。ですから、馬総統は公約である「633」すべてを守ることできませんでした。

さらに、台湾では、15〜19歳、20〜24歳、25〜29歳の3つの年齢層の若者の12年上半期の平均失業率は、それぞれ10.13%、12.30%、6.99%と、非常に高い数字になっています。大学卒業生のうち2万人が就職できない状況です。

このため、馬英九政権は若者の支持率が極めて低くなっています。14年3月に、学生らが台湾と中国のサービス分野の市場開放を目指す「サービス貿易協定」の批准に反対して、立法院を占拠する事件がありましたが、これも若者の不満が爆発した結果といえるでしょう。

今回の選挙では、これらのひまわり運動に参加した学生らが創設した政党が議席を獲得しましたが、これも若者の国民党離れの顕著な傾向の現れといえます。国民党は今後、若者から支持が得られるような政党に変わっていかなければなりません。

――ところで、ひまわり運動など、日本から見ていると、馬英九政権の中国への急接近が台湾の人々の国民党離れにつながっているのではないかとの見方も出ているのですが、どう分析していますか?

李明賢氏=いや、そんなことはありません。馬総統は昨年11月、シンガポールのシャングリラホテルで歴史的な中台トップ会談を行いましたが、その支持率は全体の56.7%に達しています。馬総統の中国寄りの姿勢は逆にビジネス界などを中心に評価されています。台湾独立を主張する人々の間では、評判は悪いでしょうが、台湾独立派は台湾でも少数派です。

とくに、1949年に蒋介石総統が台湾に移ってきてから、もうすでに67年も経っているので、中国から台湾に渡ってきた「外省人」とか、台湾土着の「本省人」という区別はもはや意味がなくなっています。私は台湾南部の出身で、祖母が中国大陸から渡ってきた外省人ですが、祖父は本省人だけに、父母も大陸のことはまったく関係がありません。私も台湾生まれの台湾育ちですので、外省人という感覚はありません。それでも国民党を支持しています。いまや、国民党支持者は外省人という考え方は何の意味も持ちません。

これまで、軍人や教師、あるいは公務員などの職に就いた、主に外省人が年金や給与、住宅などの社会制度で優遇されるということもありましたが、蔡英文・次期総裁はいま積極的に旧制度の改革策を打ち出していますし、馬総統も協力を約束しています。今後は変わっていくと思います。

――なるほど、いま台湾は変革の時代なのですね。それでは、習近平・中国国家主席について、どう思いますか?

李明賢氏=非常に能力がある大胆な政治家だと思います。反腐敗闘争で、最高幹部の薄熙来・元重慶市党委書記らを逮捕するなど、これまでの中国の指導者にはないタイプであり、馬総統とのトップ会談を実現するなど、台湾との関係も改善していますので、決断力のある政治家ですね。
<完>