炎と技の芸術品が約100点も集結!箱根ガラスの森美術館で「ヴェネチアン・グラス展」

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10世紀頃、イタリア北部のヴェネチアで誕生し、繊細優美な姿で1000年以上も人々を魅了し続けているヴェネチアン・グラス。その珠玉の名品約100点が一堂に集まる展覧会をご紹介。

2016年11月23日(水・祝)まで、「箱根ガラスの森美術館」では、「炎と技の芸術 ヴェネチアン・グラス展」を開催中。今年は、イタリアと日本が1866年に国交を樹立してから150周年にあたり、箱根ガラスの森美術館も開館20周年を迎えたことから、特別企画展となっているそう。

会場は、ガラス工芸史にも大きな功績を残したヴェネチアン・グラスの5つの制作技法をもとに、それぞれの技法を使った名品を紹介しながら、その魅力に迫るという構成に。紹介する制作技法は、「エナメル彩」「レース・グラス」「熔着装飾」「色ガラス」「モザイク・グラス」の5つ。

顔料をガラス表面に焼きつける「エナメル彩」は、ゴブレットや壷に描かれた色鮮やかな絵付けが特徴。同時代に制作されたものでも、影響を受けた文化の違いなどでデザインも変化に富んでいる。写真の作品は、1500年頃に作られた幾何学模様が印象的な、初期のヴェネチアン・グラスの名品「点彩花文蓋付ゴブレット」。

「ほかにも、イタリア・ルネサンス期絵画の影響が残る『人物行列文壷』などがあります」と、美術館スタッフの日吉さん。

美しいレース模様が特徴の「レース・グラス」は、まるで本物のレースをガラスに閉じ込めたような作品。

「現在では色ガラスを使用したものも作られていますが、レース編みを表現したガラスなので、乳白色と透明なガラスの組み合わせが基本です」(同)

中世の頃、手編みで制作されていたレースの模様はとても繊細で、たった3センチを織り上げるために2か月もの月日が費やされたとか。そのため、レース編みは“白い宝石”とも称されて、王侯貴族達にとって富と権力の象徴だったそう。

写真は17世紀初頭に作られた「レース・グラス・コンポート」。そんな時代背景を知ってから鑑賞すれば、作品への理解がいっそう深くなりそう。


ほかのガラスに比べて、ヴェネチアのガラス職人が使うガラスは柔らかい状態が長く保たれるのも特徴のひとつ。そこで、「熔着装飾」という技術によって、花やドラゴンの細工が施された繊細なステム(脚部)が生まれたのだとか。

手の込んだ細工も自由にできるので、ゴブレットやワイングラスも華やかに。写真は、この技法で19世紀に作られた「龍装飾水差」。

このほか、パーツ一つひとつを職人が吹きガラスで作ったシャンデリアなども展示される。細部を飾る、色鮮やかなガラスの花の装飾など、細部も見どころが多いのでじっくり眺めてみて。


ヴェネチアン・グラスでは長年の研究によって、約3万色の色彩を表現できるという。そんな「色ガラス」の盛んな土地らしく、色彩豊かな作品も多数。写真は、「ドルフィン脚赤色コンポート」で、優雅な曲線とともに赤の色彩が美しい。

実は、今ではあたり前の無色透明なガラスを、世界で初めて作ったのはヴェネチアのガラス職人だったそう。ガラスの原材料には微量な鉄分が含まれているため、それが発色の原因になって緑色になり、鉄分を無色透明にする方法が長い間模索されていたのだとか。

無色透明から3万色まで、ヴェネチアのガラス職人は、まさにガラスの色彩を生み出すエキスパートと言えるかも。


さらに、「モザイク・グラス」と呼ばれる技法にも注目を。こちらは「ミルフィオリ・グラス」という花模様をつくる古代ローマの技法を、19世紀に復元したもの。やがてヴェネチアでは人物や動物などさまざまなモチーフを作るようになり、絵画や写真のような精巧な表現も可能になったそう。

「器や花器、皿、ランプなどが制作されており、模様も色もさまざまですが、小さなものでは1センチに満たない作品もあります。また、逆に1センチ前後のガラス板を組み合わせて作られた、まるで絵画のような人物のモザイク画(写真)もあります」(同)

ガラス職人の卓越した技術で生み出されてきたヴェネチアン・グラスの名品の数々…炎と技が作り出した芸術品の輝きを、箱根の緑豊かな美術館のなかで堪能して。